1. 2025年3月期の業績概要
2025年3月期決算は、営業収入で前期比3.3%減の126,076百万円、営業利益で同22.1%増の10,972百万円、税引前当期利益で同11.6%増の6,067百万円、当期利益で同18.7%増の4,019百万円となった。営業収入は減収、各利益は2期連続で増益となった。
営業収入は、パチンコ事業で客数増加を目的とした時間当たり消費金額の低減策を推進したこともあり同4.4%の減収となったものの、航空機リース事業が保有機数増加による収入基盤の安定化により同20.8%の増収と順調に拡大したことで、前期とほぼ近い水準を維持した。営業利益は、パチンコ事業において遊技機関連の減価償却費や人件費が減少したこと、航空機リース事業の増収効果、その他収入として貯玉有効期限切れに伴う収益937百万円やエリンスクール売却益1,143百万円を計上したことも増益に寄与した。
なお、2025年3月期末のグループ店舗数は前期末比6店舗減の427店舗となった(うち、低貸玉店舗は4店舗減少の253店舗、高貸玉店舗は2店舗減少の174店舗)。1店舗を新規出店し、7店舗を閉店した。期末の連結従業員数は、店舗オペレーションの標準化及び効率化に取り組んだ結果、前期末比46名減少の12,446人となった。
(1) パチンコ事業
パチンコ事業の事業収入は前期比4.4%減の118,969百万円と4期ぶりに減収に転じたが、セグメント利益(税引前利益)は同4.0%増の5,471百万円と2期連続で増益となった。遊技機関連の減価償却費が同2,047百万円、人件費が同1,120百万円とそれぞれ減少したこと、貯玉有効期限切れに伴う収益937百万円を計上したことが主因だ。
事業収入の内訳を見ると、パチンコが前期比9.2%減の71,503百万円と低迷した一方で、スロットは同3.8%増の47,466百万円と2期連続で増収となった。これは、営業施策として高稼働率が見込めるスロットの設置台数を増やしたことが主な増収要因である。期末の設置台数では、パチンコが前期末比4.2%減の13.6万台となったのに対して、パチスロは同5.4%増の7.5万台となった。このうちスマート機の設置率は、パチンコが前期末の3%から8%に、パチスロが29%から47%にそれぞれ上昇しており、前期に引き続き集客力の高いスマートスロット(以下、スマスロ)を中心に導入を進めたことがうかがえる。
店舗形態別事業収入の増減率を見ると、高貸玉店舗が前期比4.7%減の55,716百万円、低貸玉店舗が同4.2%減の63,253百万円となった。貸玉収入ベースでは高貸玉店舗が同0.2%減とほぼ横ばいだったが、低貸玉店舗は同3.3%減となった。いずれの店舗もパチンコの客数が減少したのに対してスロットの客数は増加した。高貸玉店舗のほうが増加率が高く、貸玉収入の伸びの差になって表れた。
収益力の回復については、店舗における業務オペレーションの見直しにより店舗スタッフ人員の最適化と総労働時間の削減を進めてきたこと、並びに外部に発注していた業務の内製化に取り組んできたことが大きい。2022年3月期との比較で変化を見ると、店舗人件費が38.3%から30.9%と7.4ポイント低下したほか、清掃費も内製化を進めることで2.4%から2.0%に抑えられた。逆に水道光熱費は4.9%から5.8%に上昇したが、これは、2023年以降の電力料金の高騰が要因だ。ただ、前期比0.1ポイントの微増に留まっていることから、全店舗に導入しているBEMS※システムにより一定程度の節電効果が認められる。
※ BEMS(Building Energy Management System)とは、省エネ化も目的に室内環境や、空調・照明・換気等の設備機器の使用状況など、建物内のエネルギーに関するデータを一元的に管理するシステム。
同社は、客数回復の施策として、2025年3月期下期から時間当たり消費金額の低減を推進している。遊技時間に対して投入する金額が安くなれば営業収入は一時的に減少するものの、稼働率が上昇するため、トータルで見れば営業収入の増加につながる。実際に、客数はパチンコ、パチスロ、高貸玉、低貸玉のいずれの業態でも増加が確認されている。営業収入へのプラスの影響はタイムラグを置いて表れる見通しである。
(2) 航空機リース事業
子会社のDynam Aviation Ireland Limited(ダイナムアビエーション)で運営している航空機リース事業は、流動性が高く需要も安定して見込まれるナローボディ機(AIRBUS(以下、エアバス)のA320シリーズやThe Boeing Company
航空機リース事業の事業収入は前期比20.8%増の7,107百万円、セグメント利益は同37.1%減の674百万円となった。2024年3月期中に新たにリースを開始した4機分の航空機リース料が通年で寄与したことが、主な増収要因となった。4機のうち2機はインドのLCCであるIndiGo(インディゴ)に、残り2機はハンガリーのLCCであるWizz Air Hungary Ltd.(ウィズエアー)にリースした。また、航空機リース管理サービスでは他法人が保有する航空機8機(前期末比1機増)の管理サービスを受託し、収益増に貢献した。
利益面では、航空機資産の減価償却費増(751百万円増)や金融費用の増加(554百万円増)に加えて、前期に計上した解約手数料収入がなくなったことが減益要因となった。なお、航空機資産残高(フリートバリュー)は前期末比5.1%減の77,232百万円、総資産に占める比率は22.1%となり、平均残存リース期間は5.2年、年換算表面利回りは8.8%となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<HN>