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ジーニー Research Memo(5):2025年3月期はエンタープライズ顧客の取り込みを主因に大幅増収増益(2)


ジーニーは2025年3月期において、エンタープライズ顧客の増加が業績の大幅な増収増益に寄与しました。広告プラットフォーム事業では売上収益が前期比10.9%増となったが、CPMの一時的な下落によりわずかに減益となりました。一方、マーケティングSaaS事業は大幅な増収増益を記録し、特に「GENIEE SFA/CRM」のエンタープライズ顧客獲得が業績を牽引しました。海外事業も利益面で大きな成長を見せ、SPP事業の統合が功を奏しました。デジタルPR事業では、ソーシャルワイヤーの連結が寄与し、売上収益が2,150百万円に達しました。この成長は、高いコストパフォーマンスと顧客要望に応える技術力が支えています。

*16:05JST ジーニー Research Memo(5):2025年3月期はエンタープライズ顧客の取り込みを主因に大幅増収増益(2) ■ジーニー<6562>の業績動向

2. セグメント別業績
(1) 広告プラットフォーム事業
2025年3月期業績は、売上収益4,776百万円(前期比10.9%増)、セグメント利益2,223百万円(同0.9%減)となり、増収ながらわずかに減益となった。良好な企業収益、消費意欲の高まり、インバウンド需要増加などを背景に、成長領域である動画領域の伸長やエンタープライズ顧客の増加、及び新規事業であるBidder事業が躍進した。一方で、下期終盤における個社要因によりCPM※がやや下落し、減益の一因となった。ただし、2026年3月期の第2四半期以降には回復予定としている。

※ Web広告において使用される指標で、広告が1,000回表示される毎にかかる費用を示す。

KPIの動向としては、取引社数は堅調に推移し、期初より重視していたエンタープライズ顧客は順調に増加した。取引社数について、2025年3月期より一定規模以上の売上収益閾値を超えた顧客(広告主・メディア)を対象に数える方針に変更しているが、2025年3月末は前年同期比8.0%増と、250社となった。一方、売上収益を社数で除して算出する「社単」は、同7.1%減となった。四半期毎の推移で見ると、第2四半期こそやや落ち込んだものの、第1四半期及び第3四半期は2,000千円のレベルを確保した。同社によれば、第4四半期の減少は個社との個別事象による一時的なもので2026年3月期第1四半期には解消予定とのことであり、懸念は少ないと考えられる。

同社がエンタープライズ領域で好調に顧客を獲得している背景には、提供するプロダクトやコストパフォーマンスでの競争力がある。同社は顧客企業の事業セグメント毎に競合する企業のプロダクトやサービスを分析し、自社の劣位部分を機能アップした形で顧客企業に提案している。また、顧客企業のニーズを的確に捉え、競合企業に対して同等以上の機能を持つサービスをより安価で提供することで、サービスのリプレースに成功している。

(2) マーケティングSaaS事業
2025年3月期業績は、売上収益3,770百万円(前期比39.4%増)、セグメント利益668百万円(同210.0%増)と大幅な増収増益となった。マーケティングや営業活動のDXに対する需要の高さを背景に、「GENIEE SFA/CRM」や「GENIEE CHAT」「GENIEE ANALYTICS」といったプロダクトのセールスが業績をけん引した。特に「GENIEE SFA/CRM」はエンタープライズ顧客からの受注を多く獲得し、有料アカウント数が増加した。「GENIEE CHAT」は大手代理店との連携による販促等を進め、競合プロダクトとの比較においてそのパフォーマンスの高さを認められ、エンタープライズ顧客への導入が進んだ。同社はプロダクトのエンタープライズ層への拡大を重点に取り組み、業績面で想定どおりの成果が得られたと評価している。これにより同事業では目標の下期黒字化を達成した。

KPIとしては、有料アカウント数は2025年3月末において前期末比35.8%増と20,000アカウントを超えた。解約率は、第2四半期において顧客都合による解約があり一時的に上昇したが、その後は収束し、0.5%以下という業界平均(2~7%)を大きく下回る実績を挙げた。そのほかの指標として、各製品に関するMRRが増加しており、ARR※1は前期比43.8%増の3,471百万円に拡大した。またARPA※2は同27.5%増の18,777円に上昇した。リカーリング比率(継続収益比率)は80.3%と同1.4ポイント低下したものの、高い水準をキープしている。要因はエンタープライズ顧客との取引強化が大きい。

※1 ARR(Annual Recurring Revenue)とは、年間経常収益のこと。
※2 ARPA(Average Revenue Per Account)とは、1アカウント当たりの平均売上収益のこと。

2025年3月期末では、全体のMRRの約50%をARR10百万円以上のエンタープライズ顧客が占めた。これは、エンタープライズ顧客との取引強化の取り組みによるものである。エンタープライズ顧客は特性として、多数の従業員を擁するため多くの有料アカウント数を獲得できる。加えて、利用ユーザー数が多くなることから、製品の解約や他社製品への切り替えが難しくなる。したがってSaaSのようなサブスクリプション型のビジネスにおいては、優良顧客になりやすい傾向にある。

同社の製品群の優位性は、高いコストパフォーマンス(サービス価格が外資系ベンダー製品と比較して1/3~1/2程度)と顧客に寄り添った対応にある。エンタープライズの場合、既に社内の情報システムが構築されているため、プロダクト導入時には周辺システムとの連携など、システム開発が必要になる。同社は顧客の要望をプロダクト側で実現する技術力を持ち、導入の要件定義からサービス提供後の保守まで一貫した対応が可能である。顧客にとってこのようなプロダクト導入のハードルの低さは評価ポイントとして大きく、同社プロダクトが採用される要因になっていると考えられる。

(3) 海外事業
2025年3月期業績は、売上収益1,389百万円(前期比11.2%増)、セグメント利益403百万円(同100.4%増)と増収増益となり、特に利益面が大きく成長した。2025年3月期はグループのSSP事業(サプライサイド・プラットフォーム事業)の統合を推進した。従来は国内SSP事業と海外SSP事業(Zelto分を含む)が別々に展開していた組織運営や営業活動を見直し、全体最適の観点から、マーケティングや営業、カスタマーサクセス、PdM(プロダクトマネージャー)といった機能をグローバルに横断して管理するようにした。この結果、各部門のベストプラクティスをグローバルに展開することが可能となり、顧客へのサービスのクロスセルが進むとともに、サービス品質やオペレーションコストの改善につながった。また、この活動によってZeltoのPMI(M&A後の統合プロセス)も加速している。このほか、サーバー入替等の売上原価削減施策を実施したことがセグメント利益の増加に寄与した。

(4) デジタルPR事業
デジタルPR事業は2024年7月に連結子会社となったソーシャルワイヤーが運営する事業で、第2四半期からの業績反映となる。2025年3月期は売上収益2,150百万円、セグメント利益428百万円を計上した。2025年3月期は、第3四半期にインフルエンサーPR事業で大型案件を受注したことが業績寄与の一因となった。本件は有力ファッション通販サイトを運営する企業からのPR依頼で、成功を収め、顧客の評価も高かったようだ。本件成功の実績は今後の受注にも好影響を及ぼすと考えられ、引き続き業績動向が注目される。新規獲得社数も2025年3月期において増加傾向にあり、2025年3月末は1,067社に達した。

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)

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