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ワコム Research Memo(5):事業構造改革プランを完遂し、大幅な費用削減と再成長への道筋をつける


ワコムは「Wacom Chapter 3」として、XR、AI、セキュリティを基軸に新技術とビジネスモデルを展開してきましたが、特にブランド製品事業に課題を抱えていました。それを踏まえ、「Wacom Chapter 4」での事業構造変革期間として、ポートフォリオの見直し、地域組織の再編、共通プラットフォーム開発、オペレーションの軽量化、人員削減によるコスト削減を実施しました。2026年3月期には、為替影響や米国関税問題などの外部要因を考慮しつつも、事業改革効果により営業利益と経常利益で2ケタ増益を予想しています。新カテゴリー商品の市場反応や、パートナーとの協働が今後の焦点となります。

*13:35JST ワコム Research Memo(5):事業構造改革プランを完遂し、大幅な費用削減と再成長への道筋をつける ■ワコム<6727>の前中期経営方針「Wacom Chapter 3」の振り返り

1.これまでの経緯
2025年3月期が最終年度であった中期経営方針「Wacom Chapter 3」では、「Life-long Ink(ライフロング・インク)」※1のビジョンを継承しつつ、「5つの戦略軸」及び「6つの主要技術開発軸」を定め、具体的な価値提供と持続的な成長を目指してきた※2。特に、既存技術と親和性の高いXR、AI、セキュリティの3分野を選択し、新コア技術と新しいビジネスモデルによる新たな価値提供に取り組んできた。ただ、この数年、経済環境の悪化に伴う急激な消費者センチメントの低下や他カテゴリー(iPad等)へのシフトなどにより、「ブランド製品事業」(特に中低価格帯モデル)の業績が想定以上に落ち込んだことに加え、商品ポートフォリオや販路マネジメントなど同社自身の体制にも改善すべき課題が見えてきたことから、後半2年間を新中期経営計画「Wacom Chapter 4」での事業成長につなげるための「事業構造変革期間」と位置付け、粗利改善や成長基盤の構築に注力する方針(アップデートプラン)を打ち立てた。さらに「ブランド製品事業」についてはもう一段の追加構造改革が必要であると判断し、「Wacom Chapter 4」に向かっての事業構造改革プランを進めてきた。

※1 「お客様と社会に対して、同社の技術に基づく『人間にとって意味のある体験』を長期の時間軸で、ご提供し続けていきます」というもの。
※2 「5つの戦略軸」(テクノロジー・リーダーシップ、コミュニティ・エンゲージメント、新しいコア技術/新しい価値創造、持続可能な社会へ貢献する技術革新、人間と社会にとって意味深い成長)や、「6つの主要技術開発軸」(ペンの技術、ペンと紙の技術、デジタルインク技術、AIとデジタルインク技術、XR描画技術、セキュリティ認証技術)を含む、「Wacom Chapter 3」の全体像に関する解説については、本レポートでは説明を省く。

2. 事業構造改革プランの取り組みと成果
(1) 新ポートフォリオの立ち上げ
「ブランド製品事業」における低迷の構造的要因となっていた、ラインナップの課題(iPadの浸食やエントリー領域での価格ギャップ等)に対応するため、1) 「ポータブルクリエイティブ」カテゴリーの拡大、2) ボリュームゾーン(エントリー領域)のてこ入れ強化に取り組んだ。

(2) 地域組織のビジネスモデルを変更
商品のBuy-Sell機能を日本に集約(一部機能を除く)し、日本から直接販売する体制とすることで、複雑な販路構成による非効率性を解消する。今後は、マーケティング企画機能と技術開発との連携を図り、価値訴求のアップデートにつなげていく。地域組織はサービス会社としてコミュニティ連携や市場開発に集中する。

(3) 全社共通のWacom Platform開発
「ブランド製品事業」「テクノロジーソリューション事業」に関わらず、ハードウェア、ソフトウェア、サービス、UI(ユーザー・インターフェース)が統合された全社共通のプラットフォーム開発が進んでおり、開発リソースの大部分をハードウェア拠点(日本)に集約した。

(4) 全社オペレーション軽量化
「ブランド製品事業」の事業構造改革に伴う関連システムの見直し及び資産の軽量化に取り組んだ。

(5) 人員ポジションの閉鎖
上記の取り組みを通じて、同社全体の15%〜20%に当たる人員ポジションを閉鎖するとともに、社内システムの運営費用の見直しにより、20億円以上の費用削減プランを完遂した。



■業績見通し

2026年3月期は外部要因によるマイナスの影響を織り込みつつ、事業構造改革効果の発現により2ケタ増益を見込む

1. 2026年3月期の業績予想
2026年3月期の連結業績予想について同社は、売上高を前期比4.9%減の110,000百万円、営業利益を同12.6%増の11,500百万円、経常利益を同10.6%増の11,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同62.7%増の8,500百万円と引き続き減収増益を見込んでいる。

為替の円高進行※による影響等を除く本来の事業収益は拡大するものの、そのほかの外部要因によるマイナス影響が大きく、トータルでは減収となる見通しである。

※ 為替レートは通期平均で1米ドル140円と想定(前期平均は152.48円)。

損益面でも、為替の円高影響や米国関税問題の外部要因によるマイナスの影響(約30億円)を見込むも、事業構造改革に伴う「ブランド製品事業」の黒字転換や事業収益の伸びにより、2ケタの増益を確保する想定である。

2. 弊社の見方
米国関税問題や円高進行など先行き不透明な経済情勢については注視する必要がある。しかし、同社の業績予想には一定のマイナス影響が織り込まれており、事業構造改革に伴う固定費削減効果が期待できることから、達成に向けて十分に合理性があると判断される。したがって、外部要因による影響が想定内に収まり、事業構造改革の効果(新カテゴリーの拡張等)が順調に軌道に乗れば、年度後半の商戦期を中心に、堅調な業績推移を見せる可能性がある。注目すべきは、新中期経営計画「Wacom Chapter 4」の初年度として、2026年3月期以降の事業拡大に向けた動きである。特に、パートナー(技術・資本提携先)との共創、各ユースケース領域における新たな商用化に向けた進捗、新カテゴリー(ポータブルクリエイティブ)商品に対する市場反応が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

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