アイル Research Memo(4):リアルとWebの融合でBXを支援(2)
アイルは、中堅・中小企業の業務効率化と販売力強化を図る「CROSS-OVERシナジー」戦略を展開しています。この戦略は、リアルとWebのサービスを組み合わせ、オール・ワンストップサービスを実現することで企業力を向上させます。アイルの顧客数は増加傾向にあり、2024年7月期には7,449社に達しました。特徴としては、特化業種の深耕戦略や高い販売・在庫管理ノウハウ、自社製品・サービス比率の高さ、パートナー戦略の強化などが挙げられます。特に、小売業におけるオムニチャネル戦略や個別カスタマイズ対応力が同社の強みです。これらの取り組みにより、競合優位性を高めています。
3. 「CROSS-OVERシナジー」戦略
同社は、ITの有効活用が必要な中堅・中小企業の経営力アップを支援するための商材をリアルとWebの両面から開発・提案し、顧客の企業力強化を図る「CROSS-OVERシナジー」戦略を推進している。この戦略は同社独自の提案スタイルで、業務効率化を支援するシステムソリューション事業(リアル)の基幹業務システムと、販売力強化を支援するWebソリューション事業(Web)のサービスを複合的に提案することで、「オール・ワンストップ」サービスを実現して強力なシナジー効果を生み出している。「CROSS-OVERシナジー」戦略によって顧客企業数は増加基調である。2024年7月期の顧客数は7,449社(システムソリューション事業が5,152社、Webソリューション事業が2,297社)で、2020年7月期の6,342社(システムソリューション事業が4,591社、Webソリューション事業が1,751社)に対して4期で約17%増加し、保守料やクラウドサービス利用料などのストック売上の拡大につながっている。
4. 特徴・強み
同社の特徴・強みとしては、(1)中堅・中小企業市場への特化、(2)特化業種の深耕戦略、(3)高い販売・在庫管理ノウハウ、(4)トータルソリューションを実現する商品生態系戦略、(5)社員の約7割が技術職の体制、(6)個別カスタマイズ対応力、(7)小売業へのオムニチャネル戦略、(8)自社製品・サービス比率の高さ、(9)パートナー戦略、などが挙げられる。
(1) 中堅・中小企業市場への特化
会社創業以来、中堅・中小企業市場に特化して独自サービスを提供しており、顧客企業数に占める割合は年商50億円未満の中小企業が約9割となっている。それらの取り組みが評価され、2011年には経済産業省「中小企業IT経営力大賞2011」の特別賞(商務情報政策局長賞)を受賞している。なお(9)パートナー戦略の強化の成果として、銀行などのパートナー紹介による大企業からの受注も増加傾向である(詳細は後述)。
(2) 特化業種の深耕戦略
卸売業・小売業や製造業のなかでも、特に中堅・中小企業の多い業種に絞り込んだ特化業種の深耕戦略も強みである。業種特化型システム開発や業種別専門チーム体制などサービス力・営業力で負けない体制を形成し、新規顧客獲得力アップにつなげている。具体的にはアパレル・ファッション業界、食品業界、医療・化粧品・理美容品業界、ねじ・金属部品業界、鋼材業界を主力5業種と位置付けて、業種特化型パッケージソフト「アラジンオフィス」シリーズなどによる市場深耕を推進している。なお近年は主力5業種に留まらず、建材などの物販に加えて施工まで請け負う企業が増加し、こうした企業向けに「アラジンオフィス」のオプションとして2022年9月にバージョンアップした「プロジェクト管理機能」の受注が増加傾向のため、今後はこうした業態の企業向け拡販も推進する。
(3) 高い販売・在庫管理ノウハウ
会社創業以来、顧客の業務への理解が求められる販売・在庫管理ソフトウェアの提供を続けている。製造・卸・小売などの業態や各業種、さらには個社ごとに管理方法が異なる販売・在庫管理において、リアルとWebを問わず豊富な導入事例とノウハウを有している。
(4) トータルソリューションを実現する商品生態系戦略
複数の商品群からなる商品生態系戦略も強みである。ネットショップ構築・運営支援サービスのインターネット領域、店頭での売上管理やバックヤードの在庫管理のリアル店舗・本部領域、さらにリアルとWebの在庫やポイントを一元管理するリアル・ネット融合領域をすべてカバーし、自社製品・サービスを開発・提供している。そして様々な商品を組み合わせることで複合的な提案を行い、顧客へのトータルソリューションを実現している。
(5) 社員の約7割が技術職の体制
2024年7月期末時点の単体ベース社員数921人(前期末比69人増加)の構成は技術職73%、営業17%、スタッフ9%となっている。社員の約7割が技術職の体制で、システム提供後のサポートも重視している。今後も1人3役(業界・業務ノウハウ、基幹システム、Web)をこなす人材育成と技術力強化を促進する組織構成を目指し、技術部門の人員強化を継続する。一方で、労働集約型の生産体制から脱却するための環境整備や商品開発も推進している。
(6) 個別カスタマイズ対応力
中堅・中小企業は業種ごともしくは個別企業ごとに業務運営方法が異なる。そのため多様なニーズに対応するソフトウェアの個別カスタマイズを基本戦略としている。ソフトウェア開発市場における近年の動向として、ソフトウェアの個別カスタマイズに対応できる企業が減少傾向にあり、受注競合が減少していることも同社の利益率向上につながっている。なお、さらなる生産性向上や利益率向上に向けて、個別カスタマイズ対応を最小限に抑え、オプション機能としての提供も推進している。
(7) 小売業へのオムニチャネル戦略
近年の小売業においては、リアル店舗とWeb店舗を融合して、あらゆるチャネル(販路、顧客接点)から顧客が同じように商品を購買できる環境・流通経路を実現するオムニチャネル戦略が普及している。同社は創業時からリアルとWebの融合を事業化し、一朝一夕では実現できない事業ノウハウ・事例を蓄積しているため、小売業におけるオムニチャネル戦略の進展に対しても、他社には真似できない優位性を確立していると言える。
(8) 自社製品・サービス比率の高さ
同社は、価格変動に左右されやすく利益率も低いハードウェアなどといった、他社製品の売上に依存しない収益構造の構築を経営方針の重要事項としており、自社製品・サービスを中心とする拡販を推進している。その結果、売上高に占める自社製品・サービス(ソフトウェア・運用・保守・会費など)の比率は約7割と高水準である。
(9) パートナー戦略
新規案件紹介元・営業協力会社であるパートナー(銀行、SIer、IT機器メーカー、コンサルタント、会計事務所等)からの高い信頼も特徴である。2024年7月期のシステムソリューション事業の新規受注高販売チャネル別構成比(金額ベース)は、パートナー紹介が前期比2.6ポイント上昇して45.3%、ホームページを通じての引き合いが同2.3ポイント低下して35.8%、自社営業による開拓が同0.3ポイント低下して18.9%となった。パートナー紹介を通じての引き合いというPull型営業の比率上昇が営業効率化につながっている。また銀行などのパートナー紹介による大企業からの受注が増加傾向にあり、全体としての受注単価上昇にもつながっている。
このように、業界・業務に精通した業務コンサルティング力やパートナー戦略の結果、2024年7月期のシステムソリューション事業の競合勝率は85.7%、ユーザーリピート率は98.4%となっており、同社の競合優位性は高いと言える。また、従来のSIerのような機能提案からコンサル提案にシフトすることで要件定義のボリュームが増加し、他社との差別化も進展している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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