BeeX:外部環境は追い風、ERPシステムに切り替え需要
BeeXはテラスカイの子会社で、企業のシステムをオンプレミスからクラウドへ移行するサービスを提供しています。特にSAP製品のクラウド移行に強みを持ち、ERPシステムの移行需要が拡大中です。現在、ERPシステムのSAP ERP6.0は2027年までにサポートが終了予定で、企業は「SAP S/4HANA」への移行を検討しています。2025年2月期第3四半期には、売上高が前年同期比21.0%増で、営業利益も14.9%増加しました。今後、マーケティング戦略と人材採用を強化し、中長期的な成長戦略としてクラウド化・モダナイズ化、デジタルトランスフォーメーション、マルチクラウド戦略を進めていきます。将来的には大企業向け関係構築や中小企業向けインサイドセールスを通じて、さらなる成長を目指しています。
同社が展開しているサービスは、SAPシステムを中心とした基幹システムをオンプレミスからクラウド環境への移行に関するサービスを提供する「クラウドインテグレーション(以下CI)」、顧客にクラウドライセンス(AWS、Azure、Google Cloudに対応)を提供し、請求代行サービスやクラウド技術に関する問い合わせ対応を行う「クラウドライセンスリセール(以下ライセンス)」、クラウド環境の24時間365日運用・監視サービスを行う「マネージドサービスプロバイダー(以下MSP)」の3つのサービスにより構成される。2025年2月期3Q累計売上高のサービス別構成比は、CIが32.1%、ライセンスが58.0%、MSPが9.9%である。
同社を取り巻く外部環境は追い風が吹いている。現在多くの大企業が導入しているERPシステム「SAP ERP6.0」は標準サポートが2027年、有償の延長サポートが2030年に終了する予定である。サポート期限内にSAPの新システム「SAP S/4HANA」に移行するか、あるいは他社製品に乗り換えるか、選択を迫られており、更新需要が拡大している。
SAPを扱う競合ベンダーは多数存在するが、同社は単にパッケージを更新するだけでなく、システムを支える製品全体のライフサイクルを考慮したシナリオ策定、クラウドを活用した判走型プロジェクトの実施など幅広いサービスを提供していることに加え、大手ベンダーと比べて短納期で更新できることなどから、顧客から選ばれている。
同社の2025年2月期3Q累計実績は、売上高が前年同期比21.0%増の6,804百万円、営業利益が同14.9%増の553百万円と拡大した。売上面は、CIが同25.7%増の2,183百万円、ライセンスが同18.7増の3,949百万円、MSPが同20.0%増の671百万円といずれのサービスも順調に拡大した。ストックビジネスであるライセンスの同3Q末のアカウント数は同193アカウント増の601アカウント、MSPのユーザー数は同6社増の89社と増加した。利益面は、収益性が低いライセンスの売上構成比が高まったことにより営業利益率が同0.5ポイント低下したが、通期営業利益計画に対する3Q累計実績の進捗率は85.1%と高い。同社の2025年2月期通期業績は、売上高が同23.0%増の9,470百万円、営業利益が同8.5%増の650百万円の計画である。
2025年2月期4Qの重点施策は、マーケティング戦略及び人材採用・育成戦略である。前者については、同社サービスの認知度アップと新規契約の獲得を目的としたWeb媒体、SNS、動画配信などによる広告展開、及びリアルイベントなど外部業者主催のIT イベント・セミナー(リアル、オンライン含む)への出展・参加を計画している。後者については、エンジニア・営業人員の増強、2026年2月期以降の人員獲得に向けての先行投資、新卒採用活動の開始、人材育成の強化に向けた施策の継続実施などである。
同社は中長期的な成長戦略として、(1)基幹システムのクラウド化・モダナイズ化、(2)デジタルトランスフォーメーション、(3)マルチクラウド戦略の3点を掲げている。(1)については、現在「SAP ERP6.0」のサポート期限が近づいていることから、「SAP S/4HANA」への更新によるモダナイズ化を着々と進めるとともに、オンプレミスで運用している顧客に対してはクラウドへの移行も併せて支援していく。(2)については、顧客のクラウド内に蓄積したデータを分析及び可視化し、インサイトの導出、新ビジネスの創出などを実現するサービスの提供を強化する。(3)については、ライセンス及びMSPの拡販に注力する。大企業に対しては長期的な関係構築により、1ライセンス当たりの売上規模を拡大するとともに、中小企業に対してはインサイドセールス(メール、電話、Web会議など非対面で行う営業活動)を強化し、顧客数の拡大を図っていく。
株主配当は現時点では実施しておらず、当面は事業投資及び内部留保の強化を優先し、キャピタルゲインの最大化を目指す計画である。
<NH>
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