平和RE Research Memo(1):「NEXT VISION II+」では、投資主価値の最大化を図る
平和不動産リート投資法人は、東京都を中心にオフィスとレジデンスへの投資を行うREITである。2024年11月期の業績は順調で、営業収益や利益は予想を上回った。今後、2025年の業績予想でも、1口当たり分配金の増加を目指し、資産入替による譲渡益を活用する計画が示されている。「NEXT VISION II+」を打ち出し、分配金の増加、資産規模の拡大、ESGへの取り組みを強化し、投資主価値の最大化を図る。また、物件取得や財務基盤の安定化を通じて成長を続ける方針である。
平和不動産リート投資法人<8966>は、平和不動産<8803>グループの投資法人であり、中小規模の事業所が集中し、人口増加傾向が続く東京都区部を中心に、オフィス及びレジデンスに集中的に投資する複合型REITだ。全国各地の証券取引所やオフィスビルを所有・賃貸し、日本橋兜町・茅場町の再活性化及び札幌再開発事業化を推進する再開発事業などのデベロッパー事業を幅広く展開している平和不動産の経験とノウハウを最大限に活用できることが、同REITの大きな強みである。
1. 2024年11月期の業績概要
2024年11月期は、営業収益9,045百万円(前期比3.5%増)、営業利益4,694百万円(同4.7%増)、経常利益4,099百万円(同4.1%増)、当期純利益4,098百万円(同4.1%増)であった。営業収益及び各段階利益は、2024年7月17日公表の修正予想を上回って着地した。内部成長では、バリューアップを通じた既存物件の内部成長が進展し、オフィスとレジデンスともに賃料改定額は2020年以降の最高値を更新し、ポートフォリオ稼働率も高稼働が継続した。外部成長では、公募増資による外部成長と、資産入替による含み益の顕在化のサイクルを継続した。財務運営では、調達期間、固定金利比率の水準などにおいて、健全な財務基盤を維持した。以上から、賃貸EPU(譲渡益及び内部留保充当額を除いた1口当たり分配金に、バリューアップ関連費用を足し戻して計算)は、オフィス、レジデンスの内部成長及び外部成長の寄与が金融費用を上回り、2,685円(前期比9円増)であった。さらに投資主還元の強化方針として、資産入替に伴う含み益の顕在化による譲渡益計上に加えて、一時差異等調整積立金の定期取崩し額を200円/口(同160円増)へ拡大したことで、1口当たり分配金は3,640円(同260円増)と18期連続で過去最高水準を更新した。分配金の大幅増加は、従来以上に「投資主還元の強化」に経営の軸足を置いた結果であった。着実な成長に加え、潤沢な内部留保と含み益を有することで、継続的な物件取得、財務基盤の安定化、安定的な分配金支払いなどを可能にしている。
2. 2025年5月期と2025年11月期の業績見通し
2025年5月期は、営業収益8,108百万円(前期比10.4%減)、営業利益3,746百万円(同20.2%減)、経常利益3,104百万円(同24.3%減)、当期純利益3,104百万円(同24.3%減)を、また2025年11月期は、営業収益8,177百万円(同0.8%増)、営業利益3,700百万円(同1.2%減)、経常利益3,043百万円(同2.0%減)、当期純利益3,043百万円(同2.0%減)を見込む。その結果、賃貸EPUは2025年5月期2,682円(同3円減)、2025年11月期2,682円(同増減ゼロ)を見込む。しかし、1口当たり分配金は「投資主還元強化」の方針に基づき、内部留保取崩によって2025年5月期3,750円(同110円増)、2025年11月期3,850円(同100円増)と、従来のペースを上回る大幅増加によって過去最高水準の更新を予想する。引き続き物件譲渡益の計上により内部留保の充当をカバーしていく方針であるが、これらの予想は今後発生する物件譲渡益や物件取得は織り込んでおらず、保守的な稼働率やNOI利回り(帳簿価額に対する実績賃貸業利益の比率)を前提にしていることから、十分に達成可能であると弊社では見る。
3. 中期目標と成長戦略
同REITは、「NEXT VISION II」を一部改訂し、2025年5月期からは「NEXT VISION II+」として、3つの強化により資本効率を高め、投資主価値を最大化する施策の拡充を図る。すなわち、「投資主還元の強化」では、一時差異等調整積立金の取崩し拡大や資産回転型ビジネスによる譲渡益の創出と還元の加速を図る。「内部成長の強化」では、バリューアップ投資を着実に推進し、賃料収入の成長を加速する。「資産回転型ビジネスの強化」では、投資主還元を目的とした譲渡益獲得の加速、バリューアッド運用により含み益を上回る実現益の創出、将来の内部成長の基礎となる資産の取得、を推進する。これらの取り組みにより目標を、(1)分配金4,200円(従来は3,800円)、(2)資産規模3,000億円、(3)内部成長として賃料収入年率2%(従来は1%)とROI10%、(4)格付AA、(5)2030年までにGHG(温室効果ガス)90%削減(2018年比)と再生可能エネルギー電力100%、に上方修正している。目標達成に向けては、外部成長として、「着実かつ健全な外部成長」「継続的な入替戦略の実施」「投資機会の拡大・中長期で競争力を有するポートフォリオの構築」「資産回転型ビジネスの強化とバリューアッド戦略を通じた含み益の創出と顕在化」を目指す。内部成長では、「高稼働率の維持・向上」「賃料増額に向けた取り組み」「付帯収入増加と費用削減」に加えて、「戦略的な「攻め」の資金活用」を掲げる。財務運営では、「財務基盤の強化」「LTV(総資産有利子負債比率)のコントロール」「資金調達手段の多様化」「金融コストの抑制」を図る。また、投資主還元として、「潤沢な内部留保の還元」「フリーキャッシュの活用」「流動性向上」「含み益の顕在化」を計画する。さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)の向上にも引き続き前向きに取り組む。潤沢な内部留保残高と含み益の活用などの「攻め」の資金活用によって、バリューアップ工事や物件入替によるバリューアッド戦略を推進することで、サステナブルな投資主還元を目指す。今後予想される金利上昇に対しては、内部留保や含み益を活用したバリューアップ工事による賃料増額によってカバーする計画である。投資主還元の強化を中心とする改訂版目標設定は投資主に高く評価されると弊社では見ており、進捗状況に注目したい。
■Key Points
・2024年11月期は物件譲渡益が寄与し、予想を上回る決算。譲渡益の計上と一時差異等調整積立金の取崩し増加により、1口当たり分配金は18期連続でスポンサー変更後の最高水準を更新
・2025年5月期及び2025年11月期は、現時点では譲渡益は見込まないが、引き続き譲渡益の計上により内部留保の充当をカバーしていく方針で、内部留保の還元強化によって1口当たり分配金更新を見込む
・改訂版「NEXT VISION II+」では、分配金、資産規模、格付け、ESGなどの目標について、特に投資主価値を最大化する施策を拡充。分配金の大幅増加を目指す目標設定は、投資家に高く評価されると見る
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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平和不動産リート投資法人---2025年5月期および11月期の運用状況予想を上方修正