ビーアンドピー Research Memo(7):M&Aの実行と3つの拡大戦略により成長を加速
ビーアンドピーは2025年10月期において、売上高4,300百万円、営業利益631百万円を目指し、M&Aを活用して成長を加速させる計画です。特にイデイの子会社化により、広告代理事業を強化し顧客基盤を拡大。さらに、デジタルサイネージの拡販やプリントソリューション、オーダーグッズ制作の強化に注力しています。また、業務提携を通じてデジタル技術を導入し、国内外での市場拡大を狙います。加えて、社員の働き方改革も進め、持続可能な成長を実現する方針です。
1. 2025年10月期の連結業績見通し
ビーアンドピー<7804>の2025年10月期の連結業績は、売上高4,300百万円(前期比21.6%増)、営業利益631百万円(同14.6%)、経常利益631百万円(同14.5%)、親会社株主に帰属する当期純利益426百万円(同8.7%増)と増収増益を見込む。売上高は過去最高を更新し、営業利益は上場以来最高益を更新する見通しだ。なお、2024年11月にM&Aで連結子会社化したイデイの第2四半期以降9ヶ月分(2025年1月~9月分)の業績を反映するため2025年10月期より連結決算となり、前期比増減率については、前期の同社単体の業績との比較であるため参考値となる。
イデイは、広告・販促のエキスパートとして企画立案からデザイン、運営までワンストップでプロデュースしている広告代理店かつ広告企画・制作会社で、年間の売上高は6億円を超える(2024年9月期の売上高608百万円、営業損失6百万円)。そのため、同社の連結売上高は前期単体での伸び率11.4%を上回る21.6%の伸び率を見込む。同社単体でのオーガニックな成長は1ケタ台を見込んでおり、やや保守的な伸び率であると弊社では判断している。一方、イデイは設備を持たず生産を外注しているため同社に比べて利益率が低く、粗利率は42.4%と同1.8ポイント低下する。その結果、営業利益率も14.7%と同0.9ポイント低下を見込む。イデイはWebデザイン、写真・映像制作、CGアニメーションなど幅広いプロモーションを展開しているため、すべての生産を内製化することは難しいが、可能な範囲で生産の一部を同社において内製化し利益率を向上させる方針だ。また、制作の外注委託などもグループ内で対応し中間コストを削減していく。目先はイデイの4期ぶりの営業黒字化に注力する計画だが、イデイはメーカーなどのエンドユーザーを顧客として多数有しており、グループの顧客層拡大、販路基盤の強化という点において、表面上の業績を大きく上回るシナジーが見込めると同社では自信をのぞかせている。顧客数では、中期経営計画の目標30%増はほぼ達成できたと言って良いだろう。
2. 2025年10月期の主な取り組み
同社では、引き続き「シェア拡大」「機能拡大」「領域拡大」の基本戦略を進めていく。シェア拡大については、主力の大阪・東京において引き続き営業人員を増強して営業体制を強化する。名古屋・福岡・京都については新規顧客獲得活動を進めるとともに、既存顧客からのリピート受注を獲得していく。大阪・京都では大阪・関西万博に向けて活発化する各企業の販促広告活動を取り込むことに注力する。その点でも、大阪と東京に拠点を構えるイデイを連結子会社化し、イデイが顧客として有する多数の広告主を同社グループの顧客としたことのインパクトは大きい。同社の生産力やサービスラインナップとイデイの販路や企画提案力を組み合わせることで、生産体制を持つ総合販促支援企業として、さらなる顧客層の拡大と業績の向上を目指す。
機能拡大については、2024年12月2日にシンガポールのZKDigimaxとデジタルサイネージの拡販に関する業務提携契約を締結した。ZKDigimax製造のモニターはシステムとの相性が非常に良く、日本よりも過酷な赤道付近の環境下でも稼働する高性能な製品であり、AIカメラと独自のシステムを連動させて来客の男女比率、通行量、滞在時間の分析などをシステム上で一元管理し、これらのデータを利用してモニターに即時配信や配信予約ができるシステムを構築している。この技術はインドネシア国内の2大コンビニエンスストアやファストフードチェーンの店舗で採用され、現在14,000店舗以上、28,000面以上のモニターが稼働している。インドネシアのデジタルサイネージのシェア90%を獲得し、世界22ヶ国で導入されている。日本ではこれだけの台数を稼働させているシステムは数少なく、このシステムを販促DXのスマートリテールソリューションとして国内スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアなど多店舗展開する企業に提案し、「シェア拡大」も目指す。既存のモニターや同社BPクラウド及びCMSを導入している企業に対しては引き続きサポートは継続していく予定であるが、今後新規案件からは、ZKDigimaxのデジタルサイネージ製品と関連システムをセットで販売する方針だ。
2023年10月期より「領域拡大」を進めてきた新規ビジネスの少品種多量生産型のプリントソリューション及びオーダーグッズ制作については、東京に加えて大阪にも専任担当を配置してサポート体制を強化し、認知度向上と受注拡大を目指す。さらにプリントソリューションでは、オーダーグッズ制作と同様に専任担当者の経験やノウハウを全国営業担当者に共有し、全国各拠点で拡販を推進する体制整備を進める計画だ。また、オーダーグッズ制作は、IPコンテンツを扱うアパレルEC販売会社と連携したIP関連グッズ制作実績を積み上げ、ノウハウの確立と内製化による生産体制の強化を進める。IPコンテンツを保有する企業・自治体のパートナーとして、また自らIPライセンスを取得して受注につなげていくなど、IPコンテンツ関連の受注拡大を目指す。
ウェブプロモーション事業においては、ECサイト「インクイット」の運営を行うEC販売部門と、同社が得意とする対面営業につなげるためのWebランディングページ作成など同社自身のWeb集客活動を行うマーケティング部門に分割し、EC販売部門はセールスプロモーション事業へ移し、マーケティング部門は独立部門として営業部門と連携しながら顧客開拓を推進する経営体制に移行した。
生産体制については、引き続き高収益体質の生産体制を構築し、生産性や品質管理の向上につなげるべく約100百万円の設備投資を予定する。業務標準化により属人化しない技術・システムによる「人に依存しない」生産工程の実現、スマートファクトリー化を推進する。また材料費高騰への対応として、代替品への切り替えや新素材の発掘を進める。
また、今後の同社グループのさらなる成長及び企業価値の向上を実現させるため、引き続き社内で編成したM&Aのプロジェクトチームによる各種情報収集や調査を積極的に行い、グループの事業との相乗効果、成長性、利益率などの観点から投資案件の調査を進める方針だ。さらに、事業拡大に向けた人材獲得のため、通常の法定労働時間を上回る勤務時間設定をしていた変形労働時間制を廃止するなど、ワークライフマネジメントの支援や健康経営優良法人認定に向けて従業員の働く環境の見直しを進めており、パーパス経営の実現に向けて各種取り組みを推進する方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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