Mimaki Research Memo(3):SG市場についでIP市場とTA市場も大きく成長
ミマキエンジニアリングは、広告・看板用のSG市場、工業製品装飾向けのIP市場、そしてテキスタイル・アパレル向けのTA市場で事業を展開しています。各市場でデジタル技術を活用し、新製品を迅速に市場に投入することで成長を続けています。特にIP市場では、低価格戦略でシェアを拡大し、UV硬化インク技術でデスクトップUVフラットベッドの世界市場をリードしています。一方、TA市場では高速の昇華転写インクジェットプリンタでシェアを拡大。これらの動きは、多品種・少量生産のニーズ高まりによるデジタル・オンデマンド生産の強化に応じています。
1. 事業内容
同社の事業内容は、製品別だけでなく市場別にもセグメント区分されている。市場別のセグメントは、広告・看板などの製作を支えるSG市場、工業製品や一般消費者向け小物類の加飾をしているIP市場、生地や既製服を捺染するTA市場の3つである。印刷物や看板、スマホケースや電化製品、衣料品など消費者の生活に直結する最終商品も多いため、同社の技術を生かした製品は意外と身近にあふれている。同社は各市場のニーズを迅速に捉え、狙いを絞った開発によって新製品を素早く提供している。一方、各市場における製品買い替えサイクルはおおむね4〜5年のため、市場ごとに毎年順番に新製品を投入することで、毎期の売上高を積み上げることができる収益構造になっている。
産業プリントの市場は、ディスプレイグラフィックスなどデジタル化率の高いジャンルもあるが、市場の大きいテキスタイルや家具・インテリア、パッケージラベルなど、依然として昔ながらのアナログ印刷が主流となっているジャンルも多い。このため、産業プリント全体のデジタル化率は平均で5〜10%と言われるほど低く、産業用インクジェットプリンタの成長ポテンシャルは非常に大きい。また、FAを導入することで利用方法の広がる余地も大きい市場である。ライバルは、米国メーカーやプリンタ周辺の国内メーカーなどである。中国メーカーにも産業用インクジェットプリンタを生産している企業はあるようだが、産業データが少ないこと、比較的小規模なメーカーが多いこと、インクのクオリティが低いことから、シェアを算出する際に省略しているようだ。こうした市場だが、産業界の多品種・少量生産ニーズの高まりを受け、付加価値の低いアナログ印刷が主流だった生産現場で、付加価値の高いデジタル・オンデマンド印刷が広がってきた。このため同社も、先行するSG市場についで、IP市場とTA市場が第2、第3の柱として大きく成長しているところである。
(1) SG(サイングラフィックス)市場
SG市場では、塩ビシート、バナーシート、ウィンドウフィルムなどのプリント素材を使用して、広告看板、ウィンドウグラフィックス、カーラッピング、ソフトサインなどにプリントを行っている。160cmまでの大判インクジェットプリンタでは、同社は世界市場2位(2022年はシェア27.2%)を誇っている。また、比較的デジタル化が進んでいる分野で、同社を含んだ大手3社で8割程度のシェアを占めている。
(2) IP(インダストリアルプロダクツ)市場
IP市場では、プラスチックやアクリル、ガラス、金属、木材など多種多様な素材にプリントできるUV硬化インクの特性を生かし、自動車の計器パネルや家電の操作パネルなど工業製品のほか、スマートフォンケース、おもちゃ、ノベルティといった小物類に利用されている。製品の相場が1,000万円を超えていた2010年に、330万円という圧倒的に低価格な製品を発売したことで、同社のシェアが拡大するきっかけとなった。この結果、デスクトップUVフラットベッドで世界市場1位(2022年はシェア63.9%)を誇っている。UV硬化インクは素材を選ばずデジタル化の強みを発揮しやすいため他社も手掛けているが、製品化から20年にわたって市場ニーズに対応し蓄積してきたケミカル分野の知見は大きな差別化要素となっている。
(3) TA(テキスタイル・アパレル)市場
TA市場では、ファッションアパレルやスポーツアパレル、スニーカー(アッパー材)、インテリア、ファブリックなどを対象に、ポリエステルやレーヨン、綿、絹など縫製前の生地(テキスタイル)や既製服布地のプリントに使われている。同社は2012年に世界最速(当時の同社調べ)の昇華転写インクジェットプリンタを開発し、世界的なファッションブランドで採用されたことをきっかけに成長を加速させた。現在、省スペースでクリーンな作業環境を低コストで実現できる昇華転写インクジェットプリンタで、世界市場2位(2022年はシェア19.4%)の地位にある。
(4) その他の事業
同社は産業用インクジェットプリンタ、カッティングプロッタ以外に、3Dプリンタ事業とFA事業を展開している。3Dプリンタ事業では、1,000万色以上のフルカラーの造形から高さ1.8mまでの超大型造形まで、3Dプリンタによるプロダクトデザインやフィギュア、立体看板などを製造している。FA事業では、ベクター技術やメカトロニクス技術をもとに、オンデマンド型のデジタルコーティングマシンによって、ロードイン〜印刷〜コーティング〜ロードアウトといったプリントの生産工程を自動化している。
(5) チャンスが広がるIP、TA市場
IP、TA市場の生産現場では、これまで大量生産が主流だったが、ニーズの多様化や商品サイクルの短期化などにより多品種・少量生産のニーズが高まっている。同社製品によるデジタル・オンデマンド生産は、印刷版を使わず、必要なときに必要な分だけをプリントできるため、短納期かつ低コストで多品種・少量生産を実現できる。さらにデジタル・オンデマンド生産は、個性や独創性、季節性といった価値を容易に商品に付加して差別化や高収益化を図ることができる。そのうえ省スペースな設備でクリーンな作業環境を確保できることから、消費地に近い都市周辺で生産が可能で、物流にかかる時間やコストも削減できる。生産性や環境対応に優位性を持つ同社製品にとって、こうした環境変化は追い風となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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