Jストリーム Research Memo(8):EVCとOTTに続いて、医薬もコロナ禍の影響を脱する気配
Jストリームは2025年3月期第2四半期における市場別売上動向を発表しました。医薬領域では、大口顧客の販促活動縮小のため減収でしたが、EVCやOTT領域では増収が見られました。特にOTT領域は好調で、放送業界での需要に応じた大口機器納品やネット配信サービスの拡大が寄与しています。医薬領域もeディテールの需要拡大が期待され、製薬業界へのAI活用が進んでいます。また、医薬領域売上高の早期の回復が期待される取引先もあり、Jストリームは今後の業績拡大を狙います。
2. 市場別の売上動向
2025年3月期第2四半期の市場別(Jストリーム<4308>個別、旧基準)売上動向は、医薬領域が1,715百万円(前年同期比17.1%減)、EVC領域が1,467百万円(同6.2%増)、OTT領域が1,542百万円(同21.4%増)となった。医薬領域は、大口顧客の販促活動縮小の影響を受けて減収となったが、EVC領域は、新型コロナウイルス感染症の5類移行によるリアル回帰の影響から脱し、ネット利用の定着の傾向が再び鮮明となってきたため増収となった。OTT領域は好調を維持しており、大口の機器納品もあって増収となった。なお、利用用途別では、放送局や専門チャンネル向けの納品・運用・保守売上が好調だった事業用インフラが前年同期比で大きく増加、販促・ブランディングは医薬Web講演会や関連広告の動向により減少したが、メディア系企業の利用は増加した。売上種別(長短期)区分では、長期プラットフォームはセキュリティ・企業内大規模利用などの付帯サービスがやや減少したものの、ストック性の強い長期運用の積み上げが進み、主力のオンデマンド配信は増加となった。短期は、Web講演会ライブが減少したが、制作系で大口の機器納品があったため大幅増収となった。
医薬領域は減収となったが、コロナ禍の影響から脱する兆しが見えた。薬価改定などで利益が伸び悩む医薬業界では、医師の処方に影響を与える販促手法が、長期的にMRからeディテール※へとシフトしている。このためWeb講演会のニーズは本来強まる方向にあるといえ、同社もこれまでこうした領域を狙ってきた。また、AIが普及するなかで、AIを使って講演会の要約を作成するMR向けオプションも伸びており、短中期的に狙える分野である。そうした点で、医薬領域における同社のポテンシャルは高いと言える。
※ eディテール:インターネットを使って製薬企業の医薬情報を医師に配信し、医師の反応を収集すること。
現状は、コロナ禍においてWeb講演会の規模や開催回数を拡大するなど、オンライン販促の利用が急増した反動により厳しい事業環境となっている。一方、業績動向や主要製剤の特許切れ等への対応を目的として、今まさに販促費を縮小している製薬企業もあれば、新製剤の投入等の要因からそうした影響から脱しつつある企業もある。同社も、医薬領域の売上高の90%以上を占める大手得意先10社において、特に取引額の大きい2社には、オンライン販促予算の縮小から再拡大の動きが見られる製剤もあり、四半期単位で見ても売上の変動が大きいようだ。そのほかの大手についても、復調傾向の製薬企業がある一方、主力製剤の販売・特許切れ、コロナ禍を通じて各種薬剤に不足感が出ていること等の事情もあり、予算の投入ペースは各社各様であるようだ。こうした状況を受けて、2024年4月に同社は未開拓の大手・中堅製薬企業向け開拓部隊を設置して開拓を進めており、数件受注した模様である。ただし、大手10社の売上高規模感からすれば、売上高に与える影響は小さい。
しかしながら、早くに販促予算を縮小した取引先のなかには、今下期の秋の学会シーズンへ向けて売上高が回復する兆しがあるようだ。加えて、子会社ビッグエムズワイの回復は心強い。コロナ禍の最中に開始した医師の視聴データとVeeva CRMを連携したサービスが好調となってきたからである。しかも制作を内製化しているため利益率が高く、増益へのインパクトも大きかった。同社の回復がどの程度のスパンでどの程度のペースで進むのかは不透明だが、こうした同社の現状や各社の売上高トレンドを見ると、医薬領域の売上高が今下期から来期にかけて回復することも期待できる状況になってきた。
EVC領域は、営業で需要を喚起できる領域であるため様々なアプローチを継続した結果、コロナ禍における利用増加の反動により減収となった2024年3月期から明らかに回復してきたと言える。内容としては、教育・情報共有に加え販売促進のためのウェブセミナーといった企業や団体内の動画利用が底堅く推移、「J-Stream Equipmedia」や「J-Stream CDNext」などの定常的な利用も堅調に推移した。また、6月に需要が集中するバーチャル株主総会は、コロナ禍後に一部リアル回帰もあったが、前年同期の実績を上回っており、企業の販促・情報提供向けのWebサイト制作や社内イベント実施に伴うライブ配信や各種制作についても、大口の受注を確保できた。
OTT領域では、放送業界におけるシステム開発、サイト運用や関連するWeb制作業務、配信ネットワークを中心に、着実に売上高を拡大できた。なかでも放送局向けは、キー局やTVerなど定常先のネット配信サービスメニューの拡充や世界的な大規模スポーツイベントのネット中継の実施に伴い、ネットワークやシステム開発の売上高が順調に増加した。また、CS/BSにコンテンツを提供している事業者やネット投票が急拡大している公営競技向けも順調に拡大した。特に公営競技向けに大型機器(エンコーダ)の納品があったことで、1.8億円程度売上高が積み上がり、連結では増益にも寄与した。なお、世界的な大規模スポーツイベントや大型機器の納品は一時的な売上高だが、これらを差し引いても成長トレンドには変わりないようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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