一正蒲 Research Memo(8):第二次中期経営計画で1stステージ「成長軌道への5年」の実現を目指す
一正蒲鉾は、第二次中期経営計画を通じて国内外のマーケットへの挑戦を強化し、事業の成長力と収益力を高める方針を掲げています。国内市場では商品力や生産力、販売力を向上させ、競争優位性を確保しシェア拡大を目指す一方、海外市場では成長可能性のあるマーケットを分析し販路拡大を推進します。キーワードは「変革と創造」「選択と集中」「DX」「新規事業」「アライアンス」であり、これらを軸に2026年6月期に売上高400億円、営業利益26億円、ROE10.0%、ROIC9.0%を目標としています。計画には人材投資や新規事業開発、国内外での事業拡大、資本コストを考慮した資金運用などが含まれており、特に新たな事業領域の構築を目標に掲げ、代替食品や細胞農業、3Dプリンター食品の研究開発に取り組んでいます。
2. 第二次中期経営計画及び重点施策
第二次中期経営計画は、「国内外のマーケットへの果敢なチャレンジを通じて事業の成長力・収益力基盤を確立し、1stステージで掲げた「成長軌道への5年」を実現する」を基本方針とする。国内マーケットでは、商品力・生産力・販売力を磨き、競争優位性を実現しシェア拡大を目指す。国外マーケットでは、成長マーケットを分析し拡販を推進する。そのための重要戦略の5つのキーワード「変革と創造」「選択と集中」「DX」「新規事業」「アライアンス」をベースにした戦術・施策を実行し、2026年6月期の売上高400億円、営業利益26億円、ROE10.0%、ROIC9.0%の達成を掲げる。
同社は、株価と資本コストを意識した経営の実現を目指し2023年6月期よりROICを本格導入したが、2024年6月期の実績はROE6.8%、ROIC3.6%と目標数字との乖離はいまだ大きい状況にある。また、2024年6月期末の株価は766円、PBRは0.97倍と1倍を下回る。今後、金利の引上げが実施される可能性が高いことから、従来資本コストに適用していた株式益利回りに負債コストを加算したコストの加重平均を新たな資本コストとし、2026年6月期の目標株価を900〜1,100円、PBR目標を1.1〜1.3倍とおいて、資本コストを意識した投資判断や事業別ROICのPDCAなどROIC経営をブラッシュアップする計画だ。2024年6月期から2026年6月期までの3期で営業キャッシュ・フロー90億円と政策保有株式売却で5億円の資金を創出し、維持更新・環境対策などの設備投資に28億円、合理化・省人化投資・人的資本投資・研究開発投資・DX投資・M&Aなど成長投資に58億円、株主還元に9億円を配分する計画だが、資本コスト・ROIC・ROEなど資本収益性を意識しながら投資を行うことが必要だろう。
重点施策については以下のとおり。
a) 「変革と創造」
ライフ・ワーク・バランスを重視するIWSの運用により、就業時間の10%を能力開発や知的創造活動に充てる新しい働き方に取り組むなどの人財投資を積極的に行い、「個」である従業員と「組織」としての企業が相互に成長し合う働きがいのある企業を目指す。自律型思考、柔軟な発想力を持った人財を創り出し、新たな価値の創造に取り組む。
b) 「選択と集中」
水産練製品・惣菜事業において、商品・市場・生産などの「選択」と「集中」により事業構造改革を進める。利益視点・将来視点での事業・商品の整理を行い、生産の効率化・生産性向上と販売の強化・効率化の両立を目指す。その司令塔として2024年7月にマーケティング開発本部を新設した。また、研究・開発部門において高収益型商品・技術開発への集中投資を徹底する。「サラダスティック」専用工場の本社第二工場は、販売好調により既に生産能力が追いつかない状況になっている。各生産拠点の機能評価と再編を行い、資産効率の極大化を図る必要に迫られている。加えて、全事業・全組織にわたりコスト・経費の見直しを行い、コスト削減を進めていく。
c) 「DX」
全社でDXの推進に取り組み、生産性向上と働き方改革を進めることで顧客価値を創出する。全社業務プロセスの見直しによるデータのデジタル化、業務の自動化・省人化、スマートファクトリーを目指した生産データのデジタル化とデータの有効活用による生産性向上、生産管理システムによる品質向上と効率化推進、SFA・CRM、オンライン商談などによる営業活動の効率化を進める。
d) 「新規事業」
水産練製品・惣菜事業、きのこ事業に次ぐ第3の事業を構築するため、事業領域を拡大する。事業領域としては、既存事業から派生する隣接領域、既存事業の周辺に位置する周辺領域、M&Aやオープンイノベーションによる革新領域の3領域に区分して検討する。
隣接領域としては代替水産製品の商品群の開発がある。希少になりつつある魚介類の味と食感を魚肉すり身で再現することに挑戦し、既に「ネクストシーフードうに風味」やうなぎ蒲焼風かまぼこ「うな次郎」などを販売している。周辺領域としては、2022年度よりマルハニチロ、インテグリカルチャーと魚類の筋肉細胞培養技術の確立に向けて共同研究開発を進めており、動物由来細胞から食品や原料などを作る“細胞農業”でサステナブルな商品開発を目指している。そのほか、“未来の食卓”において有効利用が期待される3Dフードプリンター研究において山形大学と研究を進めている。
革新領域として、2023年7月に経営会議直轄組織として新規事業開発室を設置し、行政、専門機関、県内外のベンチャー投資企業などとのネットワークを構築しながら能動的にM&Aを含めた新規事業を探索・開発中であり、具体的な案件も挙がってきているようだ。
加えて、東南アジア、北米、中東をターゲット市場として、海外事業拡大に向けた資源投入も引き続き進める。2023年6月期及び2024年6月期の2期に、アジア、北米市場での海外展示会(シンガポールの「Food Japan2023」、ボストンの「Seafood Expo North America 2023・2024」、ラスベガスの「Bar & Restaurant Expo 2024」)や「“日本の食品”輸出EXPO」などへの出展を通じて、海外バイヤーや輸出商社などとの商談を進めた。「ネクストシーフード うに風味」や「ネクストシーフード 明太子風味」のほか、ズワイガニの脚肉をイメージしたほぐれやすい極細の繊維と特大サイズが特長の「JUMBO Crab Sticks 大ぶりカニかま」、常温タイプのカニかま「Sea Salad」「Kanikama」、カニ風味かまぼこ「MARINE STICK Plus+(マリンスティック プラス)」、お魚のすり身で作った「FISH NUGGET」(フィッシュ ナゲット)、「うな次郎」など海外向け戦略商品を拡充しており、海外のバイヤーからも引合いを受けているようだ。2025年6月期は海外への本格的な輸出伸長を目指しており、海外部門の組織・人財の整備や、ハラル対応と量産型商品の製造を担い北米、中東などに輸出しているインドネシア合弁会社と国内工場との機能分担の再定義を含めた連携など、「海外事業2ndステージ」となる戦略を再構築する。
e) 「アライアンス」
取引先と強固かつ高品質なアライアンス体制を構築することを目指し、取引先との交流会である「一正やまびこ会」などを通じて食品安全衛生管理に関する研修会の実施、「一正蒲鉾人権方針」の制定と併せた「一正蒲鉾サプライヤー行動規範」の制定、情報メール「いちまさ通信」による発信など活動を強化している。また、産学官との連携、異業種・異分野の企業との協業やオープンイノベーションなど外部とのネットワーク強化・構築を進め、技術開発部門やバイオ研究部門を中心に新たな分野の商品開発、新規事業を探求している。新潟県とKDDI<9433>が創設した事業共創プログラム「Innovation Labo NIIGATA」に参画し、新潟県内での起業・創業を軸とした地域活性化、地域産業におけるDX推進による地域課題の解決、地域共創の実現を目指している。実際に従業員が交代で同プログラムに参画し、異業種との交流を図ることで、アイデア創出の手法や考え方を学び、新技術やスタートアップとのマッチングや事業共創のチャンスを探求している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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