明豊エンター Research Memo(4):特に立地の良い城南・城西地区を中心に海外投資家向け安定供給が可能
5. 強み
明豊エンタープライズ<8927>は東京23区内でも特に立地の良い城南・城西地区を中心に不動産投資戦略をプランニングしている。同社にて土地取得から開発と販売を担当し、グループ会社の明豊エンジニアリングと協栄組が設計、建設を、 明豊プロパティーズが入居者管理、建物管理、アフターサービス、マーケティングに基づく入居者入替時の募集条件提案を責任もって担うことで、資産価値が高く安心できるアパートメント・マンション経営をワンストップでフルサポートできる点が強みとなる。
相続税額算出において、賃貸用不動産は、現金や株式(有価証券)などより相続税評価を圧縮できるため、大幅削減が期待できる。含み益のある事業用不動産を売却し、賃貸事業用不動産を購入する顧客に対しては、一部課税の繰り延べ対象となる物件(敷地規模300m2以上)を用意している。マンション・アパートメント経営だけでなく相続税対策をはじめとした節税対策についても有益な提案を行っている。
不動産分譲事業においては、「土地取得」「商品企画」「建設」「リーシング」ないし「販売」といったステップを踏むが、同社はそれぞれのステップにおいて付加価値を生み出すポイントを有している。例えば「土地取得」では、過去100棟以上の土地購入実績から、マンション・アパート用地の情報を同業他社よりも早く入手できるため、業界内では「一棟収益レジデンスといえば明豊」と認知・評価されている。
「商品企画」についても、一般的に敬遠されることが多い用地、具体的には袋小路用地、不整形地、路地状敷地など、建設コストが上昇しやすく、建築基準法上の制限が生じる可能性が高い取り扱いの難しい用地でも適正価格で仕入れ、地形の個性を生かして巧みに商品企画をすることで、資産価値・収益性を高めて販売できている。
「建設」面では、協栄組と明豊エンジニアリングという2つの施工会社をグループに持ち、商品企画チームとの連携が非常にスムーズであるため、綿密かつスピード感を持った施工計画の立案が可能である。これにより、例えば前面道路が細く、工事車両が進入できないような土地でも商品化できる体制を構築している。
竣工後の建物を「リーシング」する場合でも、東京23区内かつ駅徒歩10分以内と賃貸需要の旺盛な好立地を仕入れる方針のため、竣工後、平均3.43ヶ月という短期間で満室稼働になる。一方、「販売」する場合についても、開発用地購入から売却まで、約13~16ヶ月という短いサイクルでの資金回収を可能としている※。
※一般的な分譲マンション開発の場合、資金回収まで3年程度を要する。
都内の城南地区(港区、品川区、目黒区、大田区)、城西地区(新宿区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、練馬区)が用地取り扱いの中心となるため、一般的には同業者間の用地獲得競争が厳しいものと考えられる。しかし、同社は競争力強化のため、人財投資(特に若手)を積極的に実施している。具体的には、新卒の社員については、おおむね3~4ヶ月間、集中的に研修したうえで7月、8月頃からは実際に先輩社員について仕入れ活動を始めるが、早ければ1年目でプロジェクト進行の中心的存在として活躍する。積極的に新卒を採用し始めたのは2021年4月以降入社の社員からであるが、退職者はゼロである(2023年7月時点)。仕入れに対してのインセンティブ制度等も充実させているが、早い段階でプロジェクトを任され、成長を非常に強く感じられるという点が、若手社員のモチベーションアップにつながっていると同社では考えている。こうした若手人財の早期活躍による会社全体としての活動量増加も効果を発揮し、最近では同業他社よりも仕入れ力がより高まってきている。
本社を構える目黒区は城南であるため、城南・城西地区を中心として実績を積み上げ、ノウハウを蓄積してきたことで、情報分析力、事業企画力なども培われた。不動産ビジネスを一気通貫で行う「明豊」であれば早期に判断・対応してくれるといった、同業他社からの信頼感にもつながっているだろう。
加えて、昨今の円安傾向を背景にアジア圏の投資家の安全・安心な東京の不動産に対する投資への関心が高まるなか、同社は2023年3月より、海外投資家への積極販売を始めた。2016年に同社と業務提携契約を締結した、台湾投資家に日本の投資用不動産情報を提供する亜州大志国際顧問有限公司(台湾台北市:小川猛志総経理)が開催する、台湾における「不動産投資共同セミナー」及び、台北市サロンでの商品資料展示や日本投資用不動産Webサイトへの商品掲載が可能な「MIJサービス」を積極活用し、「台湾富裕層向、日本不動産投資セミナー」を2023年3月に実施した。台湾をはじめとする中華圏の投資家ニーズに応えるため、ホームページの中国語対応を行うとともに、協業会社を通じ、海外在住の顧客に対して、一部商品を国内販売に先駆けて早期提供している。
2024年3月には海外投資家への販売強化を目的にシンガポールにて個別商談会を実施した。台湾をはじめとするアジア圏での販売ルートを順次拡大するなか、インバウンド需要の回復や円安加速の影響により日本の不動産投資に対する需要が増加傾向にあるシンガポールに初進出した。同社の海外販売戦略において同国は重要な国の1つになるだろう。
なお、日本銀行は3月に開催した金融政策決定会合でおよそ17年ぶりにマイナス金利の解除に踏み切った。ただし、国債の買い入れは継続し、長期金利が急激に上昇する場合には指値オペを実施するなど、緩和政策を維持することで円安基調が継続しており、海外投資家の日本の不動産に対する投資熱の高まりは続きそうである。また、リーマンショック後に日本の不動産を購入した海外投資家の保有期間が10年を経過したことで、買換え需要も顕在化してきているようだ。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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