Jトラスト Research Memo(3):2023年12月期営業収益は過去最高を更新(1)
1. 2023年12月期の業績概要
Jトラスト<8508>の2023年12月期の営業収益は114,279百万円(前期比39.3%増)、営業利益は8,059百万円(同44.8%減)、税引前利益は9,772百万円(同43.2%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は16,310百万円(同29.1%増)となった。営業収益は事業の拡大に伴って過去最高を更新したが、営業利益は韓国の銀行業及びインドネシアの債権回収業で、事業環境の悪化に対応して貸倒引当金を保守的に一括して計上したことなどから減益となった。ただ、親会社の所有者に帰属する当期利益は、Nexus Bankの吸収合併による繰延税金負債の戻し入れなどにより増益となった。保守的に貸倒引当金を積み増すなど、将来の成長を見据えた対応により、営業収益及び利益項目はすべて予想を下回る結果となったが、弊社では、2024年12月期から成長軌道に向けて再スタートする準備が整ったと考える。
2. 事業セグメント別動向
同社は、日本で構築したビジネスモデルを海外展開することで、アジアの総合ファイナンシャルグループへと成長を遂げてきた。現在は日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業、不動産事業、投資事業の5事業セグメントを展開している。
(1) 日本金融事業
2023年12月期の営業収益は14,120百万円(前期比19.9%増)、営業利益は4,656百万円(同18.4%増)となった。営業収益は2022年12月期第2四半期に連結対象としたJトラストグローバル証券やNexus Cardの業績が期初から寄与し、証券業務やクレジット・信販業務にかかる役務収益が増加したこと等により増収となった。営業利益は債権回収や保証事業が好調に推移したこと、Nexus Cardが黒字転換したことなどにより増益となった。営業利益率は33.0%と引き続き高水準を維持し、同社グループの業績を下支えする主力事業として業績に貢献している。
保証残高合計は、2023年12月末には2,339億円と、8四半期連続で増加している。保証残高の8割を占めるアパートローン保証のうち、2020年11月から開始した中古アパートローンの保証残高は399億円と、前期末の約2倍に急増し、保証残高全体を押し上げた。富裕層のニーズ増によりマーケットは活況で、競合する中古アパートローンの保証会社が少ないことも好調の理由のようだ。保証残高について、2024年12月末には合計2,527億円、うち中古アパートローンは627億円への増加を計画している。
不動産関連保証業務における同社グループの強みは、市場ニーズに合わせたオーダーメイド型商品の開発力と、独自の不動産ローン審査力である。同社グループが不動産の評価・審査と信用保証を担い、銀行が融資を行っているが、地域金融機関と提携することで賃貸住宅ローン(アパートローン)保証を中心に保証残高は右肩上がりで増加を続けてきた。しかし、一部銀行の不正融資問題をきっかけに、アパートローン保証は以前のような勢いを失った状況が続いている。ただし、アパートローンの期間は20年~30年超と長期のため、その間は保証料収入が安定的に入ってくるほか、同社が保証する物件は東名阪の都市部、徒歩10分以内の駅近物件に集中しており、債務保証を行っている賃貸住宅の入居率は95%以上を維持している。保証料が高いその他の保証(個人事業主への融資保証等)は近年競争が激化していることから取り扱いを抑え、保証料が低いものの貸倒リスクが小さいアパートローンへの有担保保証を増やし、ボリュームでカバーすることにより利益を確保してきた。
同社グループでは、保証残高の大幅な拡大を目指して、様々な取り組みに着手している。アパートローン保証だけでなく、中古アパートローン、不動産担保ローン、クラウドファンディング(融資型/不動産投資型)の保証、不動産買取保証など、保証商品の多角化を推進してきたが、徐々にその成果が現れていると言える。特に、Jグランド(株)(旧 日本ファンディング(株))が注力している富裕層向け投資用高級一棟マンションの販売事業は、保証残高の積み上げにつながると期待される。Jトラストグローバル証券、提携銀行、日本保証の協業による富裕層向けの有価証券担保ローンも好調で、Jトラストグローバル証券では新社長に続き新副社長を招聘するなど、ウェルスマネジメント業務拡大に向けて人材獲得を推進している。Nexus Cardでは男性脱毛業界最大手の「メンズクリア」((株)クリアが展開)をはじめとした提携先を通じた割賦取扱高が、2023年12月期には前期比4.1倍の107億円に急増し、年間100億円の計画を達成した。これによる割賦売掛金残高の増大も、日本保証の保証残高を押し上げている。
サービサー業務全体の請求債権残高は2023年12月末には9,266億円に増加し、高水準を維持している。回収が順調に推移した一方で、2023年12月期は291億円の債権を購入したことで残高は微増した。このうち、日本保証がTFK(株)(旧 (株)武富士)より継承した簿外債権(請求可能債権)に大きな動きはないが、パルティール債権回収(株)が取り扱う債権については、回収が好調でかつ買取も順調に進んだ。今後も順調な回収が見込めるほか、積極的に債権購入を行う方針である。
債権回収における同社グループの強みは、多様な債権回収事業会社出身者のノウハウを結集した国内トップクラスの回収力にある。金融機関やカード会社などから債権を買い取る際の入札競争においても優位となって事業拡大するという好循環につながるため、今後もこの強みを生かし事業拡大を進めていく。なお、国内事業での債権回収力の強さは、海外事業でも生かされている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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