ミロク情報 Research Memo(8):中期計画の単体業績進捗は当初計画を上回る(1)
2. 「中期経営計画Vision2025」の進捗状況
ミロク情報サービス<9928>は2021年5月に2026年3月期を最終年度とする5ヶ年の「中期経営計画Vision2025」を発表した。コロナ禍を契機に社会全体でDXが一気に進行するなど同社を取り巻く市場環境が大きく変容するなかで、継続的な企業価値向上に向けた戦略として、「既存ERP事業の進化・ビジネスモデルの変革」「新規事業によるイノベーション創出」の2点を大きな基本方針として打ち出した。
業績数値目標は、2026年3月期に連結売上高550億円、経常利益125億円を掲げている。2024年3月期以降3年間の年平均成長率は売上高で9.9%、経常利益で28.9%となる。達成のカギを握るのは新規事業(「Hirameki 7」等の統合型DXプラットフォーム事業)とグループ会社の業績である。2026年3月期に新規事業で売上高50億円、経常利益25億円、グループ会社の業績で売上高150億円、経常利益25億円(2023年3月期実績:売上高72億円、経常利益0億円)を目標としているが、現在までの進捗状況は遅れ気味となっており、今後それぞれで巻き返しを図ることが必要となる。
実際、2023年3月期まで連結業績は期初計画を上回るなど順調に進捗しているが、内訳を見ると単体業績が上方修正となる一方で、グループ会社の業績は2期連続で期初計画を下回り、2024年3月期第2四半期累計においても同様の傾向が続いている。コロナ禍の影響が長引き受託開発3社の収益が伸び悩んでいるほか、トランストラクチャやMJS M&Aパートナーズの業績も人的リソースの不足により、当初想定通りに伸びていないことが要因だ。前述したように、ガバナンス体制を一段と強化していくことで成長軌道に乗せていく考えだが、状況によってはグループ再編なども選択肢の1つとして検討していく可能性がある。
また、新規事業の売上高50億円の前提としては、ユーザー数3.5万社、ARPU(1ユーザー当たり平均売上)1.2万円/月を想定している。現状、「Hirameki 7」の導入社数は1.9万社を超えており、更なる導入社数の拡大と有料化への移行が課題となる。あと2年で目標を達成するにはハードルが高くなっているが、中小企業・小規模事業者向けSaaS・ソフトウェア市場のポテンシャルは1.4兆円程度あると同社グループでは見ており、中長期的な成長ドライバーとして育成していく方針であることに変わりなく、機能強化のためのM&Aやアライアンスなども検討していく方針だ。利益率を50%と高く設定しているのは、主な見込み顧客として会計事務所やその顧問先企業(約50万社)を想定しているため、広告宣伝費等の顧客獲得コストを低く抑えることが可能と見ているためだ。
中期経営計画の達成を実現するため、同社は以下の6つの基本戦略に取り組んでいる。
(1) 「会計事務所ネットワークNo.1戦略」
「会計事務所ネットワークNo.1戦略」として、ERPシステム「ACELINK NX-Pro」の機能強化を図るとともに、新たな業務効率化ソリューションを提供すること、また会計事務所の付加価値向上や新たなビジネス創出に貢献する取り組みを推進していくことで、現在約25%の市場シェアを引き上げていく。
2021年4月以降の取り組みとして、「ACELINK NX-Pro」の機能強化については仕訳業務をAI活用で効率化する「AI仕訳」や「AI-OCR」の提供を2021年12月より開始し好評を得ているほか、インボイス制度や電帳法改正への対応、他社6サービスとの連携を図るなどして利便性向上に取り組み、既存顧客のアップセルや新規顧客の獲得につなげている。
また、会計事務所の付加価値向上、新たなビジネス創出に貢献するソリューションとして「ACELINK NX-Pro」と「Hirameki 7」を連携することで、会計事務所から顧問先への経営分析、資金繰りAI予測、資金調達などの経営支援サービスを提供できるようにし、会計事務所のビジネス拡大を支援していく。新たに独立開業する会計事務所にとっては、顧問先企業との関係構築を強化するとともに早期収益化を実現するためのツールとなる可能性があり、今後の展開に期待したい。
(2) 「中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略」
中堅・中小企業のDXに向けた経営課題に応えるサービス領域の拡大と、コンサルティングによる価値創造の最大化に取り組むことで、総合的なソリューション・ビジネスの展開を推進している。
企業が抱える経営課題は事業の成長段階や環境変化に応じて多種多様にあり、これらの課題に最適なソリューションをグループ会社のリソースも含めて選択・提案することで、顧客ニーズを取り込んでいく。たとえば、会計・税務分野であれば同社の専門領域であり、デジタルマーケティング分野であればトライベック、人事分野であればトランストラクチャ、CRM・SFA分野であればBizMagicがコンサルティングサービスを提供することが可能だ。また、他社サービスとの連携基盤も強化しており、現在人事や労務、勤怠管理など11件の他社クラウドサービスともERPとの連携が可能となっている。このように経営に関する多様なコンサルティングニーズに対して、ワンストップでソリューションを提供できる会社は少なく、同社の強みであり今後のポテンシャルであると弊社では考えている。
また、企業がERP製品に求めるニーズが年々、高度化・多様化するなかでコンサルティング能力の重要性が今まで以上に高まっており、こうした市場トレンドに対応すべく同社ではソリューション支社を全国の主要拠点に段階的に開設し、コンサルタントの育成・増員を進めてきた。ソリューション支社としては2021年3月末時点の8支社から現在は17支社に拡大しており、各地域においてソリューション営業を展開することで、新規顧客の開拓につなげている。支社の開設についてはほぼ一巡したが、今後もコンサルタントを増員していくことで売上拡大を図っていく。また、同社は電子決済事業者として全国の金融機関の約9割とシステム連携している強み(経理事務の生産性向上に寄与)を生かして、金融機関や会計事務所のネットワークを通じて地域の中小企業に対するIT化・DX支援、事業承継支援等のサービス提供を推進していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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