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大幸薬品 Research Memo(3):医薬品事業で供給力増強の見通し


*14:13JST 大幸薬品 Research Memo(3):医薬品事業で供給力増強の見通し ■トピックス

1. 医薬品事業:供給力増強の見通し
医薬品事業の外部環境は良好である。足元では止瀉薬市場はコロナ禍前を上回ってきており、2023年後半はインバウンド需要が追加されることも想定できる。業界内では他社の販売停止・回収も発生し、店頭では品薄・欠品が見られる。大幸薬品<4574>が安定供給できれば、シェア拡大の好機である。同社では、シフト生産体制の強化や協力工場への委託、京都工場の医薬品ライン立ち上げ(2023年11月目途)などの準備を進めており、下期はこれらの成果が期待できる。多様な商品アイテムの供給にも力を入れる。インバウンド向けにも人気がある大容量の正露丸(200粒、400粒)やセイロガン糖衣A(84錠)などの供給も増やし、売上が伸びている正露丸クイックCは正露丸のデザインと統一感を持たせたパッケージにリニューアルした。海外向け医薬品に関しては、中国、香港、台湾の流通在庫は国内以上に枯渇しており、供給不足はさらに深刻である。同社では、海外医薬品売上の8割以上を占める中国・香港向けの出荷価格を見直したうえで、薬事対応と平行して引き続き供給力強化に取り組む方針である。

2. 感染管理事業:措置命令の反省を生かし社内体制を強化、エビデンス訴求で販促再開
昨年の消費者庁による景品表示法に基づく措置命令の発出は、クレベリンブランドの信頼を低下させ、同社の業績に多大な影響を与えた。一連の対応が終了し、反転攻勢をかける時期に差し掛かっており、その顛末と今後の取り組みを総括したい。

【経緯】
2022年1月にクレベリンのスティックタイプやスプレー、2022年4月にはクレベリン置き型を対象に、消費者庁から措置命令が発出された。措置命令の内容は、空間除菌表示に関するものであり、試験環境で確認したウイルス除去・除菌等の機能が、すべての実生活空間における機能表示としての合理的な根拠としては認められないというものだった(ちなみに、クレベリンの主成分である二酸化塩素自体のウイルスや菌の除去機能については、指摘を受けていない)。その後、2022年5月3日に社告掲載、同年7月14日にはクレベリンパッケージ改訂を実施した。2023年7月31日には、課徴金納付命令に従い、607百万円の納付を完了した。

【業績への影響】
感染管理事業の業績は、措置命令の発出以降に大幅に低下した。コロナ禍が長引くなかで消費者の感染対策意識が変化した時期にも重なるため、必ずしも措置命令だけの要因ではないが、2022年12月期の感染管理事業の売上高は前期比75.9%減の1,408百万円となった。消費者のブランドへの信頼が揺らいだことで、影響は長引くことも想定される。

【今後の取り組み】
同社では、措置命令の内容を真摯に受け止め、表示物に対する社内体制強化に着手した。広告審査方針として、試験結果と表示内容の照合プロセス強化を掲げた。また、カスタマーファースト目線でお客様相談係を広告審査体制に加えた。さらに、審査を監督・教育する組織として、社外弁護士などが参画する広告審査連絡会を新設し、社内を監督・教育する役割とした。これらの施策を通じて、除菌に対する社会通念の変化等、外部環境の変化に常に対応し、 「エビデンス」を「適切に表示」した広告表示を遵守する体制を強化した。体制が整ったことにより、2023年秋冬は本格的なプロモーション投資を実施する計画である。その基本となる考え方は「エビデンスベースドコミュニケーション」である。実生活空間での機能を打ち消し表示したうえで、エビデンス(ウイルス除去・ 除菌等の試験結果など)の表示・訴求はしっかり行うという考えである。同社では、機能試験(無人・実験空間でのウイルス除去・除菌試験等)、疫学試験(実空間疫学調査)、成分試験(有効性、安全性に関する試験等)を過去から積み上げており、それは保有特許34件、論文発表数47件(感染管理製品・成分関連、2011年~2023年取得分)からも推し量ることができる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

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