サンワテクノス Research Memo(7):2025年3月期に営業利益70億円を目指す。順調な滑り出し(2)
b) より高付加価値な製品と新たなソリューションの提供
より高付加価値な製品と新たなソリューションを提供していくため、顧客セグメントごとに特化した営業サービスを展開する。このほか、DXによる業務効率化と提供価値の向上、地域密着とグローバルネットワークの拡充による海外シェアの拡大に取り組む戦略だ。
顧客セグメントごとに特化した営業サービスについては、半導体製造装置、ロボット・マウンター、工作機械、FA機器、設備の5つの顧客セグメントで専門知識を持った営業チームを組織化し、地域の垣根を取り払った営業活動を行うことで、新規顧客の開拓や既存顧客との取引深耕を目指す。従来は、支店ごとに営業担当が決まっていたため専門知識が必要とされる分野において、新規顧客の開拓や既存顧客との取引深耕が進まないという課題があった。専門の営業チームを組織化することでこうした課題を解消していく。既述のとおり、大手顧客の開拓に成功するなど早速その効果も出始めているようで、今回の中期経営計画のなかでも肝となる戦略だ。新組織は全国から選抜された31数名(執行役員4人含む)で構成され、今後の動向が注目される。
DXによる業務効率化の取り組みとしては、各種戦略の実効性を担保するため社内組織を横断化したKGIの可視化を進めるほか、重点戦略に集中するためのオペレーションの効率化、顧客バリュー向上のためのデータ活用の高度化などを推進し、また、これらDX戦略を推進するために必要となる人材の採用・育成も進めながら、企業価値の向上を図る方針だ。
地域密着営業についても、スマート営業所の開設を国内外で相次いで進めている。同社のようにBtoBの商社は顧客企業が抱える課題に対して、迅速かつ的確な提案を行うことが重要であり、そのためには緊密なコミュニケーションが取れる地域密着型の営業が最適と同社は考えている。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)でオンライン営業が普及してはいるが、産業機器分野では顧客ごとに要求事項が異なるため、対面による詳細な打合せが重要となる。スマート営業所開設の効果を定量的に計測することは困難だが、担当する顧客企業からの評判は良く、販売アイテム数が従来から増加した顧客企業も出てきている。このため、同社では有望顧客があるにもかかわらず、地方で訪問活動が十分に実施できていないエリアについては今後もスマート営業所を開設する予定である。
海外シェアの拡大については、2025年3月期までに海外売上比率を2022年3月期実績の38%から40%に引き上げる計画となっている。主力の中国市場においては、拠点を現在の14拠点から20拠点まで拡充する。最新技術と高品質なサービスを提供し、現地社員にマッチした人事制度などを導入することで、売上高510億円、営業利益18.5億円(2022年3月期売上高414億円、営業利益15.2億円)を目指す。そのほかアジア地域では安定した経営基盤の構築と代理店としての販売力強化、総合的に販売する組織作りやインドへの進出を進めながら、売上高194億円、営業利益7.8億円(同売上高113億円、営業利益3.9億円)を目指す。コロナ禍を契機に中国の製造拠点を他国に一部移管する動きも出始めており、こうした需要を取り込むことで売上規模の拡大は可能と見られる。欧米地域については現地での新規商材の発掘及びグローバル輸出販売に加えて、同社の認知度を向上することで売上高81億円、営業利益1.0億円(同売上高62億円、営業損失0.5億円)を目指す。新規商材としては、欧州メーカーの匂いセンサーを国内の化粧品メーカー等に販売すべく提案活動を実施している。なお、中期経営計画における為替想定レートは115円/ドルとなっているため、現状の為替水準が続けば海外子会社の売上規模が計画を上回る可能性も十分考えられる。
なお、海外製造拠点の移転活発化やサプライチェーンリスクの高まりによって、グローバルSCMソリューション事業の売上成長が見込める状況となっている。同事業は顧客企業が独自で各サプライヤーから電子部品や設備機器等を調達してきた機能を同社で一括して引き受けるアウトソーシングサービスとなる。顧客企業は同社に調達機能を集約することで、調達コストの低減やリードタイムの短縮、担当部署のコスト削減といったメリットを享受できるほか、サプライチェーンリスクを軽減することが可能となる。売上高は2020年3月期で86億円の規模であったが、コロナ禍以降のサプライチェーンリスクの高まりもあって需要が拡大し、2023年3月期は160億円規模まで拡大する見込みとなっている。利益率は全社平均よりも若干低くなるものの、売上規模の拡大につながることになる。
海外には現在13ヶ国31拠点で展開しているが、海外現地法人の顧客の多くは日系企業で占められているのが現状だ。今後さらなる事業規模拡大のためには外資系企業の顧客を開拓していくことも重要と考えており、その布石として外国人のマネジメント人材の育成に取り組んできた。具体的には、2020年に「グローバルネクストリーダー研修制度」を開始し、幹部候補生約10名の研修を定期的に実施してきた(オンライン研修含む)。2022年3月に第1期生の研修を終えたが、参加者からの満足度も高く、海外拠点長から次回の開催を望む声も多かったようで、今後はマネジメント人材のグローバル化が進むものと期待される。現時点では売上構成比の10%程度(中国市場では約35%)にとどまっている外資系企業の顧客開拓が進めば、海外売上高も一段と拡大するものと予想される。
c) サステナビリティ経営による持続可能な社会の実現に貢献
持続可能な社会の実現に向けた取り組みについては、引き続き経営の最重要課題の1つとしてとらえており、社業を通じて社員の教育・育成も図りながら推進する。特に地球温暖化対策として省エネ化や省力化を実現するための電機品や電子部品、設備機械を同社は多く取り扱っており、事業活動を通じて脱炭素化社会に貢献する企業としての成長機会は大きいと弊社では見ている。
SDGsに関連した最近の取り組みとしては、2022年9月29日より本社オフィスが入居しているビルにて、再生可能エネルギー由来となる電力の導入が開始されたことを受け、本社オフィス専用部にて使用する電力について100%再生エネルギー電力に切り替えた。同社は、環境負荷低減に向けた取り組みによって自社の温室効果ガス排出量を2030年度までに20%削減(2020年度比)することを目標にしているほか、省エネ化につながる環境にやさしい製品(インバータ等)の販売を通じて、2050年度に温室効果ガス排出量の100倍以上(2020年度比)の排出削減効果を目指す。そのほか、多様な人材の育成と活躍推進をテーマとした取り組みでは、女性管理職の比率を2030年度までに10%以上にすることを目標にしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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