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大分妻子殺害の被告、身勝手な動機 遺族は傍聴席の柵越え憤慨


 大分市羽田の住宅で2023年8月、女性と男児が刺殺された事件で、大分地裁(辛島靖崇裁判長)は4月、女性の夫で無職の首藤伸哉被告(67)に無期懲役を言い渡し、判決は11日に確定した。公判では、被告の身勝手な動機や計画性などが次々と明らかとなり、興奮した遺族が傍聴席の柵を乗り越えるなどの騒ぎも起きた。判決内容などに納得のいかない遺族は公判後に記者会見を開き、不満をあらわにするなど後味の悪さが際立った。

 判決によると、首藤被告は同8月8~9日、大分市内の自宅で妻の李東娜(どんな)さん(当時38歳)と養子で小学4年、首藤佑馬さん(同9歳)を、殺害目的で事前に購入したナイフで刺し、失血死させた。

 初公判(4月19日)の検察側の冒頭陳述によると、首藤被告と李さんは21年8月に結婚。だが、当初から李さんの厳しい金銭管理などに不満があった首藤被告は、結婚約2カ月後には「妻を殺すときは息子も殺し、自分も死のう」と決意したという。同11月にはナイフを購入。自宅のガレージに隠し、刃がさびていないかを定期的に確認するほど用意は周到だった。

 李さんとは事件の直前にも口論になり、首藤被告は「これ以上気に入らないことがあれば2人とも殺す」と決めてナイフをポケットに隠し持った。

 当時李さんは妊娠7カ月だったが、口論の末「子供をおろす」などと発言。首藤被告は殺害を決意し、李さんの背中と胸を刺し、子供部屋にいた佑馬さんの胸も刺した。

 その後、李さんの遺体を子供部屋に移し、腐敗を遅らせるために冷房を効かせ、ドアに目張りをするなどした。一方、自殺は先延ばしにして好きなことをしていたという。

 2人の殺害から1週間以上たった8月17日夜、首藤被告が親族の男性に自殺をほのめかすメールを送ったことで事件は発覚。男性が110番通報して、警察官が駆けつけたところ、首藤被告は首などから血を流し、意識不明の状態で発見された。

 捜査の結果、県警は9月11日に2人の遺体を放置した死体遺棄容疑(10月13日付で不起訴処分)で、9月22日には殺人容疑で首藤被告を逮捕。認否などは明らかにされず、生活に困っていたなどの状況もうかがえなかったことから動機に注目が集まっていたが、裁判が始まると、想像を超えた身勝手さが明らかになった。

 このため、被害者参加制度を利用して中国から来日した李さんの両親、叔母は感情を抑えきれず、初公判の午前の審理を終えた直後、叔母と父親が次々に傍聴席の柵を乗り越え、中国語で叫びながら首藤被告に詰め寄ろうとした。刑務官らが力ずくで2人を制止したが、その間母親は傍聴席で泣き叫び、法廷内は騒然とした。

 辛島裁判長は一連の行動を「法廷の秩序を乱した」と判断。19日午後から遺族の傍聴を禁じ、「裁判を妨げる言動があれば退廷」との条件を付けることで22日午後から再び傍聴を許可した。

 判決後に記者会見した父親は、この行動について「娘と孫を殺した人が目の前にいて興奮せずにはいられない。憤慨の気持ちが高まってしまった」と説明。一方、母親は李さんが妊娠していたことを踏まえ「3人の命を奪った人が生きているのが許せない」と涙ながらに語った。

 また、父親は「殺害現場の写真や司法解剖の結果を希望しても見ることができなかった」と捜査情報の被害者側への開示についても不満を口にした。

 これについて、毎日新聞が大分地検に取材したところ、一般論と前置きした上で「首藤被告は罪が確定しておらず、遺体の細かい損傷などは公判で立証することにかかわる。どこかから被告側に漏れれば弁解を考えられてしまう可能性もあり、遺族には理解してもらうしかない」とやむを得ない対応だったことを強調した。

取材記者の視点

 2年間の裁判取材で遺族が騒動を起こすのを初めて見た。対照的に黒の上下を着て目をつぶり、背中を丸めて終始うつむいていた首藤被告の姿が印象に残っている。

 一方で自尊心の高さもうかがわせた。裁判では「110円のコーヒーを買っただけで(李さんに)言われる。会社役員として数億円を動かしていたのに、自分の立ち位置が分からなくなる」と発言。自尊心を踏みにじられた結果、犯行に及んだ側面もあるのではないか、と思った。

 最も強く感じたのは、巻き添えで殺された佑馬さんの無念さだ。遺族は記者会見で、佑馬さんが首藤家の墓参りをしているとみられる写真を見せた。血のつながりはなくとも、慕っていたであろう父から刃物を向けられた恐怖、身勝手な理由で命を奪われたことを思うと、やるせなさが尽きない。【神山恵】

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