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ファンペップ Research Memo(1):2022年4Qに皮膚潰瘍治療薬の臨床試験データを発表予定


■要約

ファンペップ<4881>は大阪大学大学院医学系研究科の機能性ペプチドの研究成果を実用化する目的で、2013年に設立されたバイオベンチャー。独自開発した機能性ペプチドをベースとした抗体誘導ペプチド技術により、高額な抗体医薬品の代替となる医薬品の開発に取り組んでいる。また、機能性ペプチドに関しては、化粧品向け等にも少量だが販売している。

1. 抗体誘導ペプチドの特徴と優位性
同社独自の技術である抗体誘導ペプチドは、キャリア※1となる機能性ペプチド「AJP001」に標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープ※2を組み合わせることで、標的タンパク質の働きを阻害する抗体を体内で産生できることが特徴となっている。生物由来のキャリアを用いる他の競合技術は、反復投与時に効果が減弱する可能性があることや製造上の品質管理が難しいことに加え、副作用を引き起こす懸念があったが、同社の抗体誘導ペプチドはこれらの課題を解消できる優位性を持つ。また、抗体医薬品と比較すると製造コストが1割程度の水準と大幅に低減できる可能性があるほか、体内で抗体が自己生成されるため、薬効の持続性といった面でも優位性があると見られ、抗体医薬品の代替薬になり得る新たなモダリティ(創薬技術)として国内外から注目されている。

※1 キャリアは自己タンパク質に対して抗体を産生させる役割を果たす。
※2 エピトープは抗原決定基とも呼ばれ、免疫系、特に抗体、B細胞、T細胞によって認識される抗原の一部。抗原の表面にある1~6個の単糖、または5~8個のアミノ酸残基で構成される。


2. 主要開発パイプラインの動向
機能性ペプチド「SR-0379」は、国内で皮膚潰瘍(褥瘡、糖尿病性潰瘍)を適応症とした第3相臨床試験の被験者登録が2022年7月に完了しており、2022年4Qにトップラインデータを開示できる見通しだ。結果が良好であれば導出先である塩野義製薬<4507>※と協議のうえ2023年内に販売承認申請を行い、2024年にも上市される可能性がある。また、オーストラリアで行われていた尋常性乾癬を適応症とした抗体誘導ペプチド「FPP003」の第1/2a相臨床試験も、2022年6月に被験者登録が完了し、2022年内から成績評価を行う予定となっている。安全性及び忍容性に関するデータに加え、抗体産生の有無など薬効に関わるデータが判明する見通しとなっている。こちらも結果が良好であれば、北米での独占的開発及び商業化権に関するオプション契約を締結している住友ファーマ(旧 大日本住友製薬)<4506>がオプション権を行使して開発を進めていくものと予想される。そのほか、「FPP005」についても乾癬を適応症候補として2023年の臨床試験開始に向けた準備を進めている状況にある。抗体誘導ペプチドについては国内外の大手製薬企業の関心も高く、「FPP003」の臨床試験結果において抗体産生量が治療薬として実用化できるレベルであることが確認されれば、「FPP005」については第1/2a相臨床試験中であってもライセンス契約を締結できる可能性がある。

※塩野義製薬と全世界を対象としたライセンス契約を2015年に締結(契約総額は100億円)している。


3. 業績動向
2022年12月期第2四半期累計の業績は、事業収益で0.6百万円(前年同期は126百万円)、営業損失で515百万円(同186百万円の損失)となった。事業収益は、前年同期に計上した「SR-0379」の第3相臨床試験入りに伴うマイルストーン収入125百万円がなくなったことが減収要因となった。減収に加えて研究開発費が「SR-0379」「FPP003」の臨床試験費用を中心に前年同期から191百万円増加したことにより、営業損失が拡大した。2022年12月期の業績見通しについては、研究開発プロジェクトの進捗状況やライセンス契約交渉の状況により変動することから、現段階では未定としている。なお、研究開発費については1,200~1,600百万円を見込んでおり、事業収益の計上がなければ営業損失は1,400~1,800百万円程度となる見通し。2022年12月期第2四半期末の現金及び預金の残高は2,694百万円と2年弱の事業活動資金を確保しているが、2021年12月に第三者割当による新株予約権を発行しており、資金調達も進めている。また、2022年10月に大阪大学発のベンチャーであるアンチエイジングペプタイド(株)(以下、AAP)を株式交換によって完全子会社化することを発表している。AAPは大阪大学が保有する「AJP001」の特許に関する独占使用権を有しており、AAPを取り込むことによって知財戦略が強化されることになる。

4. 今後の成長戦略
同社では、今後も独自技術である抗体誘導ペプチドの優位性を生かして、抗体医薬品が既に発売されている「炎症領域」を中心に、2年に1本のペースでパイプラインを拡充していく方針となっている。2022年4月には熊本大学と脂質異常症に対する抗体誘導ペプチドの創出に向けた共同研究も開始しており、今後パイプラインに加わってくるものと期待される。抗体誘導ペプチドの開発対象領域における抗体医薬品の市場規模は大きく、「FPP003」「FPP005」と同じ標的を持つ抗体医薬品だけでも2020年の167億米ドルから2025年には280億米ドルに成長するとの予測がある※。抗体誘導ペプチドでこれら抗体医薬品を代替できれば、医療費の大幅低減にも貢献することになるだけに注目度も高い。まずは「FPP003」の第1/2a相の臨床試験結果、とりわけ薬効に関わるデータに注目が集まるものと思われる。

※Inforama「Datamonitor Healthcare」(2021年11月)


■Key Points
・皮膚潰瘍向け治療薬の第3相臨床試験のトップラインデータは2022年4Q発表予定
・乾癬治療薬「FPP003」の臨床試験は、2022年内から成績評価の予定
・「FPP005」は2023年の臨床試験開始を見込み、ライセンス契約交渉も同時並行で進める
・抗体誘導ペプチドの開発対象領域における抗体医薬品の世界市場規模は500億米ドルを超えており、成長ポテンシャルは膨大

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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