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三井松島HD Research Memo(1):新規M&A投資を着実に実行し、石炭生産事業に依存しない利益成長を実現


■要約

三井松島ホールディングス<1518>は、2023年に創業110年を迎える歴史ある企業である。創業以来、100年以上にわたり祖業である石炭関連事業を継続しているが、世界規模での環境保全意識の高まりを背景に、脱炭素社会到来への備えとし、事業ポートフォリオの組替えや石炭生産事業に依存しない収益基盤の確立を推進している。2013年に現 代表取締役社長である吉岡泰士(よしおかたいし)氏が入社したことを機に、内部にFA(ファイナンシャル・アドバイザー)チームを構築し、「安定収益・ニッチ市場・わかりやすい」といった方針に基づき、着実にM&Aを実行している。2014年2月の日本ストロー(株)子会社化を皮切りに計8社(2022年5月時点)を子会社化した。また、2018年に純粋持株会社体制に移行するとともに、社名を現在の三井松島ホールディングス(株)に変更した。

1. 2022年3月期の業績概要
2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比18.8%減の46,592百万円、営業利益で同332.3%増の8,417百万円、経常利益で同184.6%増の8,595百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で5,396百万円(前期は3,035百万円の損失)となった。電子部品分野の受注増加や(株)システックキョーワの子会社化などが寄与し、生活関連事業が増収となったものの、2022年3月期から適用している「収益認識に関する会計基準」等の影響により、減収となった。利益面では、生活関連事業の増収に加え、石炭生産分野における石炭価格の上昇や決算為替レート(A$/円)の円安などにより大幅な増益となり、過去最高を更新した。

2. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の連結業績予想について同社は、売上高が前期比22.3%増の57,000百万円、営業利益が同69.9%増の14,300百万円、経常利益が同72.2%増の14,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同76.0%増の9,500百万円とし、各利益はいずれも創業来最高益を大きく更新する見込みとしている。また、生活関連事業及びエネルギー事業ともに増収増益を見込んでいる。日本カタン(株)の子会社化が寄与すること、三生電子(株)が引き続き好調に推移する見込みであること、一般炭の1~12月の平均価格を保守的に想定していることなどを考慮すると、業績予想を達成する可能性は高いと弊社では見ている。

3. 中長期の成長戦略
1991年にジョイント・ベンチャーとして参入し、32.5%の権益を保有している豪州NSW州リデル炭鉱については、州政府から許認可を得ている採掘エリアが2024年3月期中に終掘予定となっている。その後、隣接地域への鉱区延長を行うかどうかは経済合理性等から判断し、既に保有している32.5%の権益維持、権益の部分売却、全権益の売却などの選択肢から最適な意思決定を行うとしている。一方で、脱炭素社会到来への備えとして、事業ポートフォリオの組替えや石炭生産事業に依存しない収益基盤の確立が必要と考え、そのためのロードマップや具体的対策をまとめた中期経営計画を2018年11月に策定した。数値目標としては、最終年度の2024年3月期に営業利益55億円、ROE8%以上、配当性向30%以上を掲げている。2020年3月期から2024年3月期までの5年間に300億円のM&A投資を実行することで、石炭関連以外の新規事業(以下、非石炭生産事業)で47億円の営業利益達成を目指している。

2022年5月時点の累計投資額が147億円(中期経営計画目標300億円のうち49%)となるなか、2023年3月期の非石炭生産事業の営業利益は35億円と計画の75%を達成する見込みである。総じて順調に利益を積み重ねていること、効率的に投資を行っていることから、最終年度である2024年3月期に目標を達成する可能性は高いと弊社では見ている。

4. 株主還元策
同社は普通配当ベースで過去16年間減配なく配当を実施しており、2022年3月期は前期比30.0円増配の1株当たり80.0円(配当性向19.3%)となった。創業110周年を迎える2023年3月期については、各利益がいずれも創業来最高益を大きく更新する見込みであることから、1株当たり80.0円の創業110周年・最高益記念配当を予定している。さらに、株主への利益還元の機会充実を目的に、中間配当を実施する方針であることも併せて発表した。これらの結果、2023年3月期の年間配当は、普通配当80.0円に記念配当80.0円を加えた160.0円を予定している。なお同社では、今後も普通配当は80円(年額)を下回らないことを目指すとしている。また、株主優待制度も実施している。

■Key Points
・祖業の石炭関連事業を100年以上継続しながらも、脱炭素社会到来への備えとし、独自のM&A戦略に基づき新規M&A投資を着実に実行
・2022年3月期の各利益は過去最高を更新。生活関連事業の増益や石炭価格の上昇が寄与
・2023年3月期の各利益はいずれも創業来最高益を大きく更新する見通し
・2023年3月期は創業110周年・最高益記念配当を実施するほか、中間配当も開始
・2024年3月期中に終掘予定のリデル炭鉱については隣接鉱区の延長を検討中、経済合理性等から判断し最適な意思決定を行う方針

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)


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