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ファンペップ Research Memo(6):「FPP005」は2023年の臨床試験入りを目指す


■主要開発パイプラインの動向

3. FPP005(乾癬)
「FPP005」は大阪大学大学院医学系研究科との共同研究のもとでファンペップ<4881>が創製した開発化合物で、IL-23を標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IL-23は自己免疫疾患において主要な役割を担うTh17細胞を分化・安定化するサイトカインで、乾癬においてもIL-23により活性化されたTh17細胞が、IL-17AやTNF-αを含む炎症性サイトカインを産生することにより慢性的な炎症を引き起こす。乾癬の治療では、既存治療が効かないまたは重症例の患者にTNF-α、IL-17及びIL-23を阻害する抗体医薬品が使用されているが、IL-23は炎症性サイトカインの産生過程において、IL-17A及びTNF-αの上流に位置するため、維持投与期に投与間隔を3ヶ月まで広げても有効性が持続することが特徴となっている。

「FPP005」はIL-23を標的タンパク質としており、感染症ワクチンと同じ作用機序で自己の体内で抗体を誘導できることから、少ない投与回数で高い持続性を有することが期待されている。開発状況については、2021年1月より前臨床試験を開始しており、2023年の臨床試験入りを目標としている。適応症としては乾癬またはクローン病※などが候補となっている。乾癬で開発を進める場合は「FPP003」と同様、オーストラリアで第1/2b相臨床試験を行う可能性が高い。ライセンス交渉についてはすでに国内の複数の製薬企業が関心を示しており協議を進めている。「FP003」の臨床試験の結果次第では、2023年にもライセンス契約が締結される可能性もあるが、同社では海外のメガファーマも含めて検討していきたいとしている。

※炎症性腸疾患の一つで、主に小腸や大腸などの消化管に炎症が起きることにより、びらんや潰瘍ができる原因不明の慢性疾患。主な症状としては腹痛、下痢、血便、発熱、肛門付近の痛みや腫れなどがあり、日本では難病指定されている。


抗IL-23抗体医薬品については、乾癬のほか乾癬性関節炎やクローン病、潰瘍性大腸炎なども適応疾患となっており、「ステラーラ®」「スキリージ®」「トレムフィア®」などが商品化されている。市場規模は3品目合計で2020年の10,986百万ドルから2025年には18,140百万米ドルに拡大するとの調査会社の予測※もある。潜在市場規模が大きいだけに、今後、開発が進展すれば大型パートナー契約につながる可能性もあり、その動向が注目される。

※Informa「Datamonitor Healthcare」(2021年11月)



花粉症を対象とした「FPP004」は開発の優先順位を引き下げ
4. FPP004(花粉症)
「FPP004」は大阪大学大学院医学系研究科との共同研究のもとで同社が創製した開発化合物で、IgEを標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドとなる。IgEはアレルギー性疾患の発症・進展に関与する重要因子で、花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)が代表的な疾患として知られており、そのほかにも喘息や慢性蕁麻疹などの疾患に関与している。

花粉症の患者数は国内で約4~5千万人と多い一方で、既に多くの抗ヒスタミン薬が開発、販売されている。効果が不十分な重症例では抗IgE抗体医薬品の「ゾレア®」※が処方されており、2週または4週間に1回の投与によって治療している。しかし、「FPP004」では抗体医薬品よりも投与間隔を長くすることが可能で、花粉シーズンの前に2回注射することで、シーズン中は投与しなくても効果が持続することが期待されている。価格面でも抗体医薬品より安価に提供できるため、開発に成功すれば抗体医薬品を代替できる可能性がある。

※2019年12月にノバルティス ファーマの抗IgE抗体「ゾレア®」が抗体医薬品として初めて花粉症への適応拡大の承認を取得した。


現在は前臨床試験段階にあるが、人的リソースを「FPP005」等に優先的に投下していくことから、「FPP004」については当面の間、バックアップ化合物の探索研究を進めていく方針に変更している。「FPP005」の臨床試験開始に目途が付いた段階で、本化合物の優位性を改めて確認したうえで、2023年12月期より前臨床試験を再開する計画となっている(開発化合物をバックアップ化合物に変更する可能性有り)。


マイクロニードル技術を用いた次世代製剤技術の開発に着手
5.次世代製剤技術の開発
同社は2021年8月にメドレックスと共同開発契約を締結し、マイクロニードル技術を用いた次世代製剤技術の開発に着手している。従来、抗体誘導ペプチドは注射しか投与手段がなかったが、マイクロニードル技術を用いることにより、無痛経皮投与を患者自身で行うことが可能になるほか、従来の注射剤と比較して少ない投与量で高い免疫効果が期待されている。注射剤だと血液中に薬剤が流入することでペプチドが早く分解してしまうが、経皮投与の場合は皮内にペプチドが長く留まるため分解も遅く、結果的に抗体産生力も注射剤と比較して高まると考えられるためだ。同社は開発中のパイプラインについて今後、動物試験を行いその効果を検証していく予定にしている。マイクロニードル技術も含めたトータルコストで見て注射剤よりも低く抑えられるようであれば、商業化に向けて開発を進めていくものと思われる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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