ステップ Research Memo(4):2021年9月期は生徒数が想定以上に伸長し、大幅増収増益を達成
1. 2021年9月期の業績動向
ステップ<9795>の2021年9月期の業績は売上高で前期比19.3%増の13,036百万円、営業利益で同81.9%増の3,509百万円、経常利益で同82.5%増の3,593百万円、当期純利益で同84.0%増の2,471百万円となり、2期ぶりに過去最高業績を更新した。また、期初会社計画に対しても売上高、各利益とも上回って着地した。生徒数が想定以上に伸長した一方で、費用面ではほぼ計画どおりに推移し、増収分が利益増につながった。
(1) 売上高の増加要因
売上高の内訳を見ると、小中学生部門が前期比18.6%増の10,430百万円、高校生部門が同22.2%増の2,605百万円といずれも好調に推移した。期中平均生徒数は全体で同6.6%増、小中学生部門で同6.8%増、高校生部門で同5.6%増となった。生徒数の増加率に対して増収率が大きくなっているのは、2020年9月期においてコロナ禍で2020年3月に一時的に休校を実施したことや、同年5月末までライブ授業を停止し特別料金(通常料金の60~80%の水準)によるオンライン授業を実施したことで11億円強の減収要因となったのに対し、2021年9月期は通常体制に戻った反動増によるものとなっている。この影響を除けば、実質8%台の増収だったと見られる。
生徒数の動向について見ると、2020年秋以降に徐々に回復し始め冬期講習前後から生徒増加の流れが鮮明となり、春の生徒募集シーズン以降も例年を上回るペースで生徒数の増加が続き、定員数に達したため募集を打ち切るスクールも相次いだ。2021年10月末の生徒数は前年同月比で10.0%増(学童含む)となっており、小中学部135スクールのうち定員に達したスクール数は中学1年生で42スクール、2年生で53スクール、3年生で23スクールとなっている。また、高校部でも1年生に関しては15校舎中、10校舎で定員に達し募集を打ち切る状況となっており、校舎と講師のキャパシティがあればさらに生徒数を伸ばせたものと考えられる。
生徒数が好調に推移した要因としては、コロナ禍で入塾を控えていた生徒が動き始めたこと、2021年の合格実績において高校受験は「翠嵐プロジェクト」「横浜プロジェクト」の目標を3年連続で達成し、横浜市内での進学塾としてのブランド力がさらに向上したこと、大学受験においても難関大学における合格実績が大幅に伸びたことなどが考えられる。また前期にコロナ禍で実施した授業料返還や、オンライン授業では4万本を超える動画の配信を行うなど、総力をあげて生徒の学力向上に取り組むと同時に、特別授業料の適用を行うなど生徒や保護者に寄り添った施策を取ったことが高い支持を受け、口コミなどで評判が広まったことも一因と考えられる。実際、年明け以降は横浜翠嵐高校を志望する生徒の入塾希望者が増えたほか、塾生の弟・妹が入塾を希望するケースが増えたことに加え、席を確保するために小学生や中学1~2年生で入塾を希望する生徒が増えたことも特徴となっている。
開校経過年数別の生徒数(小中学部)の動向について見ても、開校10年以上経過したスクールの生徒数が前年同月比で7.5%増と伸びている点は注目される。これらスクールはもともとの地盤である神奈川県南西部が中心で、「STEP」のシェアが高いエリアが多いが、こうしたエリアでも生徒数を着実に伸ばしており、シェア拡大が続いているものと考えられる。なお、2021年9月期の新規開設スクールは小中学生部門のSTEP元住吉スクール(川崎市中原区で初進出)、STEP上永谷スクール(横浜市港南区)と、Hi-STEP川崎スクール(川崎市幸区で初進出)の3スクールとなる。いずれのスクールも生徒獲得状況は順調に進んでいるもようだ。
(2) 費用の状況
売上原価は前期比6.3%増の8,771百万円、売上比率では同8.2ポイント低下の67.3%となった。原価率の改善は、増収効果による固定費率の低下が主因となっている。売上比率の改善を項目別で見ると、人件費が6.6ポイントと最も大きく低下しており、地代家賃で0.7ポイント、減価償却費で0.3ポイントそれぞれ低下した。コロナ禍の影響がなかった2019年9月期との比較においても、全体は3.1ポイント低下しており、このうち人件費で2.9ポイントの低下となっている。
固定費率の低下要因は、校舎当たり生徒数の増加が主因となっている。2016年以降の推移を見ると、高校生部門は右肩上がりに増加しており、特に、2021年10月末時点においては前年同期比7.3%増の368人と高い伸びを示した。また、小中学生部門については2016年以降180人前後と横ばい圏で推移していたが、2021年10月末時点では同8.4%増の193名と190名を超える水準となっている。高校生部門については2019年以降、校舎の新規開校がないことも要因だが、1年生については6割強の校舎が定員に達しており、2年生以上についても増加傾向が続いている。こうした状況から、同社では15校舎のうち3校を増床し、1校を移転リニューアルし、校舎規模を拡大した。今後も新規開設だけでなく、増床・移転リニューアルなども、適切な不動産物件が出れば積極的に進めていく方針となっている。
販管費は前期比0.8%増の755百万円と微増にとどまり、対売上比率では同1.1ポイント低下した。間接スタッフの増員を抑制したことで人件費率が0.3ポイント低下したほか、広告宣伝費率が0.4ポイント低下した。広告宣伝費については前期比でも11.2%減の142百万円と減少している。これは、生徒数が定員に達したため、募集を打ち切るスクールが増えたことで、折込みチラシを削減したことが要因となっている。広告宣伝費率については今後も継続的に低下していくものと同社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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