ティア Research Memo(6)中長期ビジョンとして会館数を現状の約2倍の260店舗に拡大することを目指す
1. 2022年9月期の業績見通し
ティア<2485>の2022年9月期の連結業績は売上高で前期比4.2%増の12,720百万円、営業利益で同17.8%減の730百万円、経常利益で同17.9%減の720百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同20.7%減の430百万円と増収減益を見込んでいる。当期より収益認識基準の適用等に対応することで売上高、営業利益、経常利益は132百万円の減額要因※を見込んでおり、前期と同じ会計基準で試算した場合には売上高で5.3%増、営業利益で2.8%減、経常利益で2.9%減となる。
※会費売上高の計上時期について、従前は「ティアの会」入会時点で計上していたが、2022年9月期より当該会員の葬儀発生時に計上することにした。また、FC加盟料売上高について、従前は契約時点に計上していたものを期間按分(30年)して計上することにした。葬祭事業において115百万円、FC事業において17百万円の売上減額要因となる。
業績予想の前提となる直営店舗数は前期末比6店舗増の83店舗、葬儀件数は同4.3%増の13,139件、葬儀単価は同0.7%増の842千円としている。新規出店は直営、FCで各7店舗、リロケーション・閉店で各1店舗を計画しており、期末の店舗数は前期末比12店舗増の144店舗を計画している。直営店舗数6店舗のうち、3店舗(名古屋市内1店舗、愛知県下1店舗、三重県下1店舗)は11月までに出店しており、残り1店舗についても物件候補地は確保済みとなっている。また、関東と関西に各1店舗の出店を計画しているが、こちらはまだ物件を探索している状況にある。葬儀件数の伸びが前期よりも鈍化するのは、プロモーション施策の効果が一巡することで既存店の伸びを0.3%減と保守的に見ていることが要因だ(既存店については実質横ばいで見ているが、1店舗閉店する影響で微減となる)。
また、葬儀単価についてはコロナ禍の状況が続くことを前提に横ばい水準が続くと見ている。ただ、ワクチン接種により今後も感染者数の抑制が続くようであれば、単価も徐々に回復に向かい、業績の上振れ要因となる可能性もある。
売上原価率は前期比0.8ポイント低下の60.3%を計画している。引き続き業務の内製化を推進していくことにより、商品原価率で同0.8ポイントの低下を見込んでいる。一方、新店稼働に伴う労務費や会館固定費の増加、並びに子会社の業容拡大に伴う固定費の増加が見込まれるが、労務費率や雑費率については前期並みの水準となる見込み。内製化の取り組みとしては、中部エリアにおける「接客人材・警備」や「生花事業」のさらなる内製化率向上に加えて、関西エリアにおいても「接客人材・警備」の内製化率向上と、子会社のティアサービスの体制強化による「湯灌・エンバーミング※」のカバー率拡大を推進していく。
※遺体を消毒や保存処理、また必要に応じて修復することで10日間から2週間程度、腐敗させることなく保存を可能にする技法のこと。遺体から感染症が蔓延することを防止する目的もある。エンバーマーと呼ばれる資格が必要で、専用施設にて処置を行う必要があるため、葬儀費用とは別に15~25万円の費用が掛かる。
一方、販管費率は前期比2.3ポイント上昇の34.0%を計画している。管理職や営業人員の増員並びに賃金改定、法定福利費の適用範囲拡大等によって、人件費率が同2.0ポイント上昇の17.6%となることが主因だ。広告宣伝費率は同0.1ポイント低下の7.8%、その他経費率については同0.4ポイント上昇の8.5%を計画している。
売上高の増減要因を見ると、既存店による増収で44百万円、新店による増収で558百万円、FCによる増収で44百万円を見込み、収益認識基準への対応により132百万円が減額要因となる。また、経常利益の増減要因については、増収効果により333百万円の増益、売上原価低減により98百万円の増益を見込む一方で、人件費増加で339百万円、広告宣伝費の増加で30百万円、その他経費の増加で86百万円、収益認識基準対応による影響で132百万円の減益要因を見込んでいる。このうち人件費については、積極的な人財確保及び賃金改定や賞与アップ等による増加となっている。期末人員数については、単独ベースで前期末比26名増の413名を見込んでいる。同社は、人件費も含めて経費について毎期、保守的に予算を組む傾向にあるため、2022年9月期においても当初計画を下回る可能性はある。
中長期ビジョンとして会館数を現状の約2倍の260店舗に拡大し、「日本で一番『ありがとう』と言われる葬儀社」を目指す
2. 業界環境の変化と中長期ビジョン
葬儀の潜在的な需要は高齢化社会の進展に伴い、2040年頃には現在の1.2倍の規模にまで拡大することが見込まれている。一方で、核家族化の進行や地域コミュニティとの関係希薄化など構造的な要因に加えて、2020年以降はコロナ禍による影響で、葬儀規模の縮小と葬儀単価の下落傾向が一段と進行し、葬儀件数の拡大が続く中でも市場規模は微増にとどまる状況が続いている。こうしたなか、同社は中期ビジョンの実現に向けた外部・内部環境における課題とその対応施策について以下の通りまとめている。
(1) 外部環境変化に伴う課題認識と対応施策
葬儀件数の拡大と葬儀単価の低下という市場環境が続くことを前提に、内製化による事業領域の拡大と主力エリアへの出店拡大により持続的な成長を目指していく。成長を支えていくための経営基盤の構築が今後の課題であると同社では認識している。また、リスク要因として仕入価格や経費、人件費等の上昇、既存会館の契約更新に伴うリスクの顕在化(賃料の値上げ等)、コロナ禍で見られたような想定外の事態が起こる可能性などが考えられ、こうしたリスクへの対応策も重要となってくる。
(2) 内部体制のさらなる強化と中長期を見据えた施策
コロナ禍を契機とした葬儀規模の縮小や家族葬のさらなる小規模化といった環境変化への対応施策として、家族葬ホールを中心とした店舗展開や、非中核エリアへの出店計画見直しなどを行っており、また、事前・事後のサービス拡大や商品調達機能の強化による収益力向上に取り組んでいく。
成長の源泉となる人財戦略については、計画的な人財確保と教育体制の充実により、強固な組織を構築していく。また、キャリアプランの形成や女性活躍の推進など働き方改革にも取り組むことで、従業員のエンゲージメントの向上を図っていく。
(3) 中長期ビジョンと成長戦略
中長期ビジョンとして同社は、「日本で一番『ありがとう』と言われる葬儀社」になることを掲げており、定量目標として会館数(FC含む)で現在の約2倍となる260店舗を掲げている。成長戦略は以下の通り。
a) 事業戦略(成長力)
ブランド戦略の強化とともに、中核エリアである中部地区でのさらなるシェアアップ、成長市場である関東・関西地区での新規出店の推進、新規市場(葬儀周辺事業)への参入などに取り組んでいく。
b) 事業戦略(稼ぐ力)
ドミナント戦略により効率的な店舗展開を進めるとともに、葬儀付帯業務の内製化推進、人財確保・育成体制強化による人財投資の効率化、出店フォーマットの多様化による資産効率の向上などにより収益力の強化を図っていく。
c) 機能戦略(経営基盤)
外部環境変化に伴う課題認識・対応の強化や内部体制・中長期を見据えた施策の強化に加えて、成長投資手法の多様化(M&Aの精度向上含む)や人財マネジメントの強化、倫理コンプライアンス体制の確立・強化等に取り組んでいく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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