ベルシス24 Research Memo(8):在宅コンタクトセンター増設、戦略提携等で、新事業モデル推進を目指す(1)
2. 3つの重点施策と社会的課題への取り組み
ベルシステム24ホールディングス<6183>は中期経営計画における具体的戦略として、(1)社員3万人の戦力最大化、(2)音声データ活用によるDX推進、(3)信頼と共創のパートナー成長、の3つを計画達成の重点施策として推進している。同時に、SDGs(持続可能な開発目標)を踏まえ、社会課題解決にも前向きに取り組む姿勢である。
(1) 社員3万人の戦力最大化
第1の重点施策として、社員3万人の戦力最大化を図り、特に経験豊富な人材の活用として、在宅コンタクトセンターの増設を計画する。同社では、現在、社員3万人弱(契約社員を含む)を擁し、北は北海道から南は沖縄まで、全国でコールセンター業務を展開している。また、自社センター拠点数は37拠点、自社保有席数は約18,000席超で、さらにサテライト席数(顧客先のコールセンターで業務を行う)約15,000席を保有する。
中期経営計画では、この3万人の機動力や現場オペレーション力のさらなる強化、定着率向上による品質と対応スキルの高度化、働き方改革の推進(在宅コンタクトセンターの増強)、安心して働ける環境の提供(パンデミック対応)などを実施する。特に、社会を支え、品質を担保する人材を働きやすさで支えるために、在宅ワーク増強に注力し、在宅席数を計画開始時点の約1,000席から4,000席に大幅増設する計画だ。
社会からは、多様な人材の活躍や新たな雇用の創出が求められている。同社のクライアント企業からは、体制の柔軟化やBCP対応の必要性が高まっている。そして、同社の従業員からは、働き方を選べる環境や介護・育児との両立を求める声が大きい。そうした現状を踏まえれば、最新のテクノロジーを活用した在宅コンタクトセンターは、社会、クライアント、同社従業員の三者のニーズを満たし、Win-Winの関係を作り上げるものと言えるだろう。
今後も業容拡大を目指す同社にとっては、オペレーターの確保が重要課題の1つである。最近の技術進歩により、顧客へのサポート業務をコールセンター拠点以外の場所でも提供できるようになったことで、地方に住む人や育児・介護と仕事を両立したい人など、時間や場所の制約がある人も、コールセンター拠点に勤めるオペレーターと同レベルの業務を行うことを可能になっている。コロナ禍をきっかけに、在宅勤務を希望するオペレーターが増えている。在宅コンタクトセンターは、人材の確保と、どういう状況下でもセンターをクローズさせないというBCP対応を両立させるものだ。同社の計画は、どのような非常時においても、社会インフラとしての役割を果たしたいとの考えに基づくものと言えるだろう。
中期経営計画初年度の2021年2月期末には、在宅勤務は約8割の社員が活用し、在宅コンタクトセンターは約1,300席へ拡大したが、2021年8月末には約2,000席に増加している。2022年2月期末には2,500席超、2023年2月期末には4,000席超への増加を計画しており、在宅コンタクトセンターの増強は順調に進捗している。このように、社員3万人の戦力最大化に向けて、着々と「新しい働き方」を実現している。
同社では、これまでも退職抑止、採用力強化、現場人材管理の精微化を推進してきた。すなわち、継続雇用期間6ヶ月を経過したコールセンターの現場管理者やスタッフなどの有期雇用社員約22,000人に対して、2017年10月より順次正社員登用に加え、2018年12月には契約社員の待遇向上を実現する新人事制度を導入し、社員のライフスタイルに合わせた働きがいのある評価制度の運用を開始している。
また、2019年8月には、従来はスキル不足により採用を見送っていた人材を確保し、就業支援を行うことで即戦力化するための施設「SUDAchi(すだち)」を札幌に開設した。すなわち、コンタクトセンター業務に必要な、コミュニケーションやタイピングといったスキルなどを就労前に教育をすることで即戦力化を図るものである。SUDAchiは、現在では全国の各拠点での展開を開始している。こうした就労支援の結果、人材の定着率も高まっている。さらに、2019年7月には、沖縄、福岡に続き全国3ヶ所目の企業内保育園を札幌オフィス内に開設し、産休・育休明けの従業員の復職や育児と仕事の両立を支援している。このような数々の施策は、優秀な人材確保こそが同社成長の基盤であるとの考えに基づくものと言えるだろう。
(2) 音声データ活用によるDX推進
第2の重点施策として、音声データ活用によるDX推進を計画し、DX推進によって音声/CRMデータ基盤の強化を図る計画だ。具体的には、優良顧客との信頼関係をもとにDX推進、音声・CRM基盤の整備によるデータ資産化、データ分析による高付加価値の提供、コンサル機能強化により新たな領域での事業創出などを行う。すなわち、膨大な応対業務で得た音声活用ノウハウを活用して、音声データの基盤強化を図る考えだ。
同社は、消費者への対応、消費者との通信履歴など、膨大なユーザー対話から課題を解決したデータを保有している。こうしたデータを、自社分析チームにより、AI・シナリオチューニング、FAQ&スクリプト最適化など、現場に即したナレッジを蓄積することで、運用ノウハウの深化を図る。また、蓄積したデータに基づき店舗データ、消費傾向、Web行動などを分析することで、ユーザー接点の拡大や解決業務の多様化を図り、クライアントとの連携強化に役立てる。同社では、データを多面的に分析することで、クライアントが望む品質改良、自動化、解約防止、売上増大などについての施策を提案することが可能になる。このように最新テクノロジーを活用することで、同社のビジネスのさらなる発展を目指す計画である。特に、コロナ禍の完全収束が見通せない現在の環境下では、非対面化、効率化、省力化を検討するクライアント企業からの同社への依頼は増加傾向にあるようだ。
音声データ活用DXの実績としては、同社のクラウド音声基盤のBellCloud+と、(株)アドバンスト・メディアの音声認識ソリューション基盤のAmiVoiceの連携によって、全て音声をデータ化できるようになった。同社では、音声認識対応型の席数を、2021年8月末の1,100席から、2022年2月期末には3,000席超へ、2023年2月期末には7,000席にまでに拡大する計画だ。また、電話による問い合わせに自動応答するプロダクトのekubotを、現在までに38社に提供している。さらに、企業のコンタクトセンターDX支援の強化を目的に、自動応答ソリューションのサービスメニュー体系を刷新し、ekubotシリーズの新たなラインナップとして、約50席~数100席規模以上の中規模・大規模のコンタクトセンター業務を想定したサービスとしてボイスボット(人工知能搭載の音声認識が可能なソフトウェアを用いることで、利用者が音声により自動応答システムを操作できる仕組み)の提供を開始した。生命保険会社の導入事例では、自動受付が月間約9,000件に達している。また、2021年7月には、CTCと共同で、コンタクトセンターでのボイスボットの導入から運用までをワンストップで支援する「ekubot Voice Pro」の提供を開始した。このソリューションにより、例えば、幅広い層からの電話での問合せが主となる通信業界における本人確認・契約内容の照会や、メーカーにおける製品不具合箇所の状況確認といった業務において、音声による問合せ対応の自動化を実現できる。なお、ボイスボットで対応しきれない問い合わせについては、それまでのやり取りをテキストで保持した状態で、スムーズに有人対応に切り替えることが可能である。このように、ekubotは多くの会社で業務効率化に貢献している。音声データ活用によるDX推進戦略についても、着々と実績を積み上げていると評価できるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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