インテリックス Research Memo(9):省エネリノベーション「ECOCUBE」を発売
3.重点施策
(1) 経営理念を策定
インテリックス<8940>は、今後のグループの目指す方向性について、これまでの「SLOGAN」に加えて「MISSION」「VISION」「SLOGAN」「VALUE」を新たに策定した。「MISSION」を「人と社会と新しい価値をつなぎ、幸せをつくる」、「VISION」を「すべての人にリノベーションで豊かな生活を」、「SLOGAN」を「つぎの価値を測る」とし、従業員の行動指針となる「VALUE」については顧客との共創やSDGsの推進など合わせて11の指針を策定した。
また、リノベーションの概念について、「マンションという空間だけに限らず、既存の枠組みの考えを超えて新しいものを生み出す」という意味に再定義し、コロナ禍で新たな生活様式が求められるなかで、社会にとって必要となる企業としてその役割を果たしていく考えだ。
(2) 事業方針
今後の事業方針として、リノベーション事業分野では、仕入体制の強化だけでなく、新商品として開発した省エネリノベーション「ECOCUBE」の拡販に取り組むことで差別化を図り、リノヴェックスマンションのシェア拡大を図っていく戦略だ。また、リノベーション市場活性化の土台となるリノベーション・プラットフォームの構築にも取り組んでいく。具体的には、リノベーションマンションの保証制度の充実(保証期間延長等)※や、他社連携による工事請負事業の拡大を図っていく。一方、ソリューション事業分野では、アセット事業、リースバック事業、アセットシェアリング事業を拡大し、ストック収益とフロー収益の安定化を図っていく方針だ。
※2021年6月より、アフターサービス保証期間を従来の10年間から最長20年間に延長したほか、入居後1年後の無料点検サービス(首都圏で開始し、順次エリアを拡大予定)を開始した。
また、両事業分野を支えるコーポレート部門では、ITの活用による営業支援を行うとともに、今後の商品開発やソリューション事業分野の拡大を支える財務戦略により、事業と資産のポートフォリオ最適化に取り組んでいく戦略となっている。IT活用では、月2千件以上の査定依頼を受けた物件の各種データを収集・分析することで、需要の高いエリアや最適な内装仕様などを可視化し、従来、属人的であった査定業務をシステム化することで効率化を図っていく。
(3) 省エネリノベーション「ECOCUBE」
SDGsへの取り組みが社会全体で進むなか、同社においても業界初となる省エネ型のリノベーション商品「ECOCUBE」を2021年7月に発表、販売を開始した。「ECOCUBE」は室内の温熱計算に基づいて断熱性・気密性を高め、高性能な換気フィルターを採用した空調システムを設置することで、住む人の健康や省エネルギー化による経済メリットを実現した商品となる。2011年から開発販売を行い、改良を重ねて再リリースした。「温熱計算+断熱材+高性能内窓+熱交換式第一種換気」を標準仕様とし、既存住宅のリノベーションに「省エネルギー」という付加価値を加えたものとなり、政府が目指す脱炭素社会の実現にも貢献する商品となる。
同社が販売するリノヴェックスマンションの平均面積70m2弱の場合、冷暖房機器の消費電力は従来比で1/4に大幅削減できることになる。電力料金で換算すると年間10万円の削減効果につながると同社では試算している。販売価格は通常のリノヴェックスマンションと比べて、200万円程度高くなるが、省エネ型のリノベーション住宅に関しては国の補助金制度※を活用できることや、電力料金の削減効果なども見込めることを考えれば、差別化商品として十分需要が見込めるものと弊社では考えている。
※経済産業省が推進する次世代省エネ建材の実証支援事業のなかで、「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」制度を設けている。高性能断熱材や二重窓など補助対象製品を用いたリノベーション費用については、その1/2以内、集合住宅の場合は上限125万円まで補助金で賄うことができる。環境省でも同様の補助金制度有り。
「ECOCUBE」の2022年5月期における販売目標は200件としているが、業績計画には織り込んでいない。また、同社では認知度向上に向けたブランディング戦略を今後進めていくほか、省エネ効果を可視化するめ、室温変化や消費電力などのデータ収集を行う温熱計算センターを札幌に設置する予定にしている。このため、「ECOCUBE」の販売開始に伴う短期的な利益面での影響は軽微と見られるが、中長期的にはブランド力向上に伴う販売シェア拡大に貢献するものと期待される。
(4) 中期ビジョン
同社はビジョンとして、「すべての人にリノベーションで豊かな生活を」を掲げ、従来の中古マンションのリノベーションだけにとどまらず、地域活性化につながる「京町家」の再生プロジェクトやホテル宿泊事業、低炭素化社会の実現に貢献する商品として「ECOCUBE」の拡販に取り組むなど、既存の枠組みや概念を越えて新しい創造性のあるものを生み出していくことで、事業成長を目指していく方針を打ち出した。
同社の業績推移を見ると、売上高は2008年5月期の47,448百万円、営業利益は2007年5月期の2,829百万円が過去最高水準となっており、その後は浮き沈みがあるものの、伸び悩む状況が続いてきた。主因は、リノベーションマンション市場の競争激化により、首都圏における販売件数の減少傾向が続いたことにある。2013年5月期以降、地方エリアへ展開していくことで首都圏での販売減少をカバーし、業績水準を維持してきたことが窺える。前述した通り、同社では首都圏でのシェア再拡大に向け、仕入体制の強化に取り組んでいるほか、差別化商品となる「ECOCUBE」の拡販を推進し、リノベーションマンション販売件数の一段の拡大を目指していく。また、ソリューション事業分野であるリースバック事業やアセットシェアリング事業を拡大していくことで収益基盤の拡充と安定性の向上を図っていく戦略だ。なお、コロナ禍で稼働率低迷が続いているホテル宿泊事業については、稼働率が一定水準まで回復した段階でアセットシェアリング商品として販売する予定にしている。以上から、2022年5月期は収益成長に向けた基盤構築の準備期間と位置付けられ、2023年5月期以降に再成長ステージに入るものと弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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