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窪田製薬HD Research Memo(4):「クボタメガネ」は台湾での製造許可を取得、2021年内の販売開始を目指す


■主要開発パイプラインの概要と進捗状況

1. ウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」
窪田製薬ホールディングス<4596>は、近視の進行を抑制または改善する効果が期待されるウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」の開発に注力している。近視の種類は屈折性近視、軸性近視、偽近視、核性近視などに区分されるが、その多くは軸性近視と呼ばれるもので、眼軸が伸長することにより眼球のなかで焦点が網膜より手前に移動し、遠くが見えにくくなるメカニズムとなっている。このため、眼軸長を短縮させることができれば軸性近視は矯正できることになる。ただ、現在は治療法がなく屈折矯正(メガネ、コンタクトレンズ、屈折矯正手術)によって光の屈折を調整し、網膜に焦点を合わせることで矯正している。

近視人口は生活様式の変化もあって世界的に増加傾向が続いており、現在は約26億人と最も身近な疾患と言われている。また、世界人口に占める近視の比率は2010年で約28%の水準だったが、2050年には約50%(50億人弱)に上昇するとの予測もある。特に、日本や中国、韓国などの東アジアの国々では若年層の近視が急激に増え、社会問題化している。近視が進行すると、将来的に緑内障や白内障など失明につながる疾患になるリスクが正視に比べて2~5倍に上昇すると言われており、根治療法の開発が強く望まれている疾患でもある。同社では「クボタメガネ」の商業化に成功すれば、2030年までに最大1兆3千億円※の市場の可能性を有していると見ている。

※近視人口に同社が想定する普及率とデバイス価格を掛け合わせた数値。


「クボタメガネ」は、独自開発したクボタメガネテクノロジー(アクティブスティミュレーション技術)によって眼軸長の短縮を可能とするもので、既にヒトでの概念実証試験を行い、眼軸長の短縮が確認※されている。同技術では周辺網膜の手前に焦点が合うように能動的に人工的な光刺激を網膜に与え、網膜を内側に移動させる成長信号を生成させ、眼軸長を短縮するメカニズムとなる。網膜周辺部へ投影するため、同デバイスから投影される特殊な映像は次第に認識されにくくなり、無意識のうちに眼軸長が短縮されることになる。

※米国の眼科専門研究所にて、21~32歳の近視傾向のある被験者12名に対して、クボタメガネテクノロジーを用いた試作機である卓上デバイスにて眼軸に与える影響を検証した結果、対照眼と比較して眼軸長の短縮効果が確認されたことを2020年5月に発表、また、ウェアラブルデバイス型試作機でも同様の効果を確認したことを同年8月に発表した。


自然光を用いた刺激を網膜に与えることで眼軸長を短縮させるデバイスは、海外で数社が商品化または開発している。しかし、クボタメガネテクノロジーの特徴は、能動的に光の刺激を与えることで、眼軸長の短縮がより短時間で可能になるという効果が挙げられる。眼軸長は一時的に短縮しても、時間が経てば元の長さに戻るが、同社の技術によって短縮効果をさらに向上できる可能性もあり、どのように使うことが効果的かといった実用化のためのガイドラインを作成すべく、2020年7月にニューヨーク州立大学、同年11月にアイルランドのダブリン工科大学と共同研究契約を締結し、専門の研究者と共同で長時間使用における眼軸長への影響など研究データの集積に取り組んでいる。

2020年12月に初期型のプロトタイプを発表しており、多くのメディアに取り上げられたことで、国内外から注目度も高まっている。この製品は、メガネのフレーム部分に内蔵した光源から照射された光を、レンズに内蔵したミラーに反射させて網膜に刺激を与える構造となっており、最終的に商業化される製品デザインは、内蔵しているミラーを透明のプリズムレンズに変更し、実用性を向上させているようだ。

今後の商品化のスケジュールとしては、台湾で2021年内の販売開始を目指している。2021年5月にTFDA(Taiwan Food and Drug Administration:台湾衛生福利部)から、製造許可を取得したが、直近で製造販売に関する規則が変更※されたことで、現在、製造委託先の工場の品質管理体制等をチェックしている状況にある。品質管理基準等が新しい基準をクリアしていることが確認されれば、販売許可申請を改めて出さなくても販売が可能となるようだ。

※欧米の先進国の基準に沿った規則(より厳しい品質管理基準が求められる)に変更された。


販売価格としては数十万円を想定している。テストマーケティングの意味合いも含めた販売となるため、販売数量も限定的になるものと見られる。また、治験を実施していないため、商品説明で効能を明示することはできない。このため、同社は次のステップとして治験を実施し、規制当局から許認可を得たうえで効能を明示して販売していくことにしている。この手順は、パッシブタイプの近視抑制デバイス(価格は10万円弱)を発売している競合他社が踏んできた手順であり、それに倣った格好となる。また、2022年以降は販売承認が得られやすい東南アジア各国での販売の可能性も検討していく。

一方、今後の市場として魅力的なのは中国となる。近視人口だけで約7億人にのぼり潜在需要が世界最大規模となるためだ。中国では近視の撲滅が国家戦略の1つとなっていることもあり、既に自然光を利用して眼軸長の短縮を図るメガネやコンタクトレンズが、眼科医やメガネ店を通じて販売されている。「クボタメガネ」は能動的に光を与えることでこれら先行品よりも効果的に眼軸長を短縮できる可能性があり、性能面の優位性からシェアを獲得できるチャンスは大きいと弊社では見ている。同様に、日本においても子どもの近視が社会問題化しており、潜在需要は大きい。

現在、共同研究を進めている欧米の大学において、「クボタメガネ」の長時間使用における眼軸長への影響について、良好な結果が得られるようであれば、業界での注目度も一気に上昇し、製薬・医療デバイスメーカーとの販売パートナー契約につながる可能性も出てくる。

現在、近視の進行を抑制する治療法としては、複数の近視抑制デバイス(メガネ、コンタクトレンズタイプ)が発売されているほか、治療薬としてアトロピンがシンガポールで販売承認されている。ただ、パッシブタイプのデバイスについては前述したように、効果という点において「クボタメガネ」が優位にあると見られ、コンタクトレンズ(オルソケラトロジー)については安全性に関するリスクが指摘されている。同様に、アトロピンに関しても副作用リスクがあり、近視の進行抑制・改善に対する治療法としてのスタンダードになり得ていないのが現状だ。「クボタメガネ」は価格面で割高ではあるものの、量産効果によって引き下げることは十分可能であり、今後の成長期待は大きい。

なお、同社ではコンタクトレンズタイプのウェアラブル近視デバイスについても開発を進めている。将来的にAR(拡張現実)/VR(仮想現実)機器への応用も考えられ、眼科領域におけるウェアラブルデバイスとして大きく飛躍する可能性がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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