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タナベ経営 Research Memo(8):2022年3月期以降は再び増収増益基調に転じると予想(1)


■今後の見通し

3. 中期経営計画
タナベ経営<9644>は、「変化から成長へ」をスローガンとした中期経営計画「Tanabe Vision 2020(2018〜2020)」を2018年5月に発表した。基本戦略として「C&C戦略」・「コンサルティングプラットフォーム戦略」を掲げ、コンサルティング領域を多角化してコンサルティングメニューを拡大し、それらをプラットフォーム化することで、持続的な成長を可能とする収益基盤の構築に取り組んできた。

最終年度となる2021年3月期の当初の業績目標値(売上高9,600百万円、営業利益1,040百万円)に関して、売上高はほぼ達成が射程圏内に入っていたものの、新型コロナウイルス感染症の影響により、売上高及び営業利益の目標を引き下げている。また、主要KPIであるチームコンサルティング契約社数及び売上高、コンサルタント人員についても当初計画から見直した。チームコンサルティング契約社数では目標の640社に対して、今回610社に、コンサルタント人員については目標の291名に対して260名とそれぞれ現実的な数字に修正している。特に、競争力の源泉となるコンサルタントについては、各業界に精通するプロフェッショナル人材を中心に積極的に採用を強化してきたが、業界全体で人材が不足していることもあり、増員ペースが緩やかとなっている。ただ、今後も新卒社員の採用やプロフェッショナル人材の中途採用、IターンやUターンを希望する人材の採用などを積極的に行い、コンサルタント人員の拡充を進めていく方針に変わりない。一方、後述する事業戦略そのものについてはおおむね順調に進捗していることから、新型コロナウイルス感染症の影響が一巡する2022年3月期以降は再び増収増益基調に転じるものと弊社では予想している。

(1) 地域倍増FCC(ファーストコールコンサルティングファーム)戦略
大阪本社・東京本社以外の全国の本部・支社といった事業所の体制(コンサルティングメニュー)を強化し、全国すべての顧客企業に同品質の高付加価値サービスを均質に提供できるようにする、という取り組みは順調に進捗している。高度な経営課題に対しては、当該分野のプロフェッショナルコンサルタントを全国レベルで選定・派遣する体制を構築してきた。また、子会社の(株)リーディング・ソリューションと共同開発中のDXコンサルティングサービスについても、上期リリースし、全国展開していく予定となっている。経営のDX化への取り組みはクラウドサービスの普及もあり、ここ数年で急速に浸透してきており、同社の顧客ターゲットとなる中堅企業や地方企業においても、DX化に対するコンサルティングニーズは強い。全国主要都市に事業所を持つ強みを生かして、リアルとオンラインを駆使しながらこうした需要を掘り起こし、顧客基盤の拡大につなげていく考えだ。

(2) ドメイン・ファンクションコンサルティング戦略
経営コンサルティング契約への導線となる「戦略ドメイン&ファンクション研究会」の研究テーマをスクラップ&ビルドを行いながら拡充を進め、2020年3月期には29テーマ(2018年3月期比4テーマ増加)となっている。また、各研究会の戦略リーダーも2018年3月期の16名から28名に増加し、各研究会における顧客との関係も強固なものになってきている。今後もポストコロナにおける社会環境の変化によって生まれる新たなコンサルティングニーズを先取りし、研究会の発足により顧客を囲い込み、経営コンサルティング契約の獲得につなげていく戦略を継続していく。

(3) HR(人的資源)コンサルティング戦略
HRコンサルティングでは、「ファーストコールカンパニー100年先も一番に選ばれる会社(FCC)」を志す企業向けの人材開発プラットフォームとして、「FCCアカデミー(企業内大学)」の普及拡大を推進していく。教育体系の構築や教育コンテンツの開発、社内講師プロデュース等を支援する「アカデミーコンサルティング」、各企業オリジナルのデジタル教育コンテンツを場所と時間を選ばずオンラインで学習できる「アカデミークラウド」、新入社員から社長までを育成できるFCCセミナーや個社別のオーダーメイド教育を組み合わせて提供する「リアル」の3つのサービスをワンストップソリューションとして提供することで、導入企業数を拡大していく。人材開発に関するサービスでは、様々な企業がeラーニングやタレントマネジメントシステムを提供しているが、いずれも一部のサービスのみであり、企業の人材開発にトータルで対応できる企業は少なく、同社の強みとなる。

累計導入社数は、2019年3月末の80社から2020年3月末は97社に拡大し、当初目標の100社を超える見込みとなっている。2020年3月期の売上規模は13億円程度とまだ小さいが、今後、導入企業数の拡大によりストック型のクラウドサービス利用料が積み上がっていくことになり、安定した収益貢献が見込まれる。特に、新型コロナウイルス感染症の影響で集合型の社員研修ができなくなるなかで、遠隔教育の強みが改めて見直されており、引き合いも活発化している状況にあり今後の成長が期待される。

なお、「クラウド」の新たな機能として、「多言語対応」や「VR」機能が追加となり、外国人労働者の研修ニーズに対応するほか、「VR」に関しては製造現場等での作業員の研修用としての活用も見込まれており、更なる導入社数の拡大が期待される。また、将来的な構想として、「FCCアカデミークラウド」の導入企業同士が業種別につながるオープンプラットフォームの構築も検討している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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