クロスマーケ Research Memo(3):進化するリサーチ
1. 国内リサーチ事業
クロス・マーケティンググループ<3675>のネットリサーチは、企画に沿ったアンケートプログラムを開発してアンケートサーバー上に設置、抽出されたパネルからアンケートを取り、論理矛盾や不正回答などのデータクリーニングを行って調査結果を集計、多くの場合分析レポートを作成して顧客に納品する——という流れになっている。特徴は、パネルの量と質、付随する付加価値サービスにある。
ネットリサーチにとって最も重要なのがパネルの量と質である。量については、直近1年以内にアンケートに回答したアクティブパネル数が227万人、提携先も合わせたアクティブパネル数は473万人と日本最大規模のアンケートパネル数を誇る(2019年12月時点)。質については、性別・年代・居住地といった基本情報のほか、同居家族構成や居住形態などの基本的な属性を網羅しているほか、データの信頼性を確保するため、(株)リサーチパネルが毎年会員登録情報を更新し、パネルの基本属性を常に最新の状態に保っている。また、アンケートの調査回答内容をチェックし、悪質な不正回答者を登録抹消するなどパネルの品質管理も徹底している。また、スムーズな調査を実現するため、自動車保有や疾病などパネルをあらかじめ特定のテーマでセグメントした、20を超える専門的なパネルを用意している。以上から、同社のネットリサーチは、精度の高い効率的な調査が可能となっている。
さらに、実際に調査協力者を集めてインタビューなどを行うオフラインの定量調査・定性調査や、既存の調査方法にITなどを組み合わせるデジタルマーケティングも展開している。通常のアンケートに加えてSNSなどを利用した投稿データの収集・分析や、口コミシェア率やキャンペーン効果の測定、BI(Business Intelligence)ツール最大シェアと言われる「Tableau」を利用して、アンケートデータと既存データを統合したデータドリブンな意思決定体制を構築するサポートを行っている。新サービス「Cross Trace」では、属性データにアンケートやWebアクセスログにつなぎ込むことで、例えば購入に至らなかった人へのヒアリングも可能になるなど、調査対象の実態をより多面的に理解できるようになっている。
国内リサーチ事業の中でも、2015年に子会社化したメディリードが、医薬業界に特化したマーケティングソリューションが評価され業容が拡大している。グループの医師・医療従事者パネルや患者パネルに対してリサーチしており、健康管理プログラムから発症リスクモデル策定支援、創薬・治験などに関する論文・研究・医療技術評価支援までをサポートでき、こうした専門領域に特化した人材によるサービスは、非常に付加価値の高いサービスであると言える。
Kadenceグループの構造改革が一段落、再攻勢へ
2. 海外リサーチ事業
日本企業がアジアなど海外へ進出していることに対して、同社もアジア展開を進めている。しかし、2018年12月期−2019年12月期の海外事業は、Kadenceグループの構造改革を一段と強化するなど、体制構築のため踊り場となった。足元ではKadenceグループの構造改革が一段落したため、海外組織体制の強化を図った後に、米国(ニューヨーク)やアジア未進出エリアへの着実な拠点展開と、アジア英語圏でのBPO(Business Process Outsourcing)拠点やR&Dセンターを開設など、インフラ基盤強化による原価低減と能力増強を再始動する方針である。
モバイル向けマーケティングソリューションを一気通貫で提供
3. ITソリューション事業
ITソリューション事業では、マーケティングから企画、開発、運用、プロモーションまで、モバイルやスマートフォン向けサービスに必要なあらゆる機能をワンストップで提供している。具体的には、Webサイトの構築、スマートフォンアプリの開発、各種ツール・パッケージの提供、調査・分析、インフラ・サーバ構築、Webプロモーション、セキュリティ対策、運用アウトソーシングなどである。同社は、金融機関向けアプリや決済・ポイント管理といった堅牢性が求められるシステムや、会員数100万人規模の大規模なシステムなどの構築・運用に強みを持っている。また、日進月歩のモバイル機器に対して、常に最新の機能に対応したシステム開発を行っている。さらに、主力のリサーチ事業の持つ強みを生かすことで、顧客企業のマーケティング戦略のPDCAサイクルを円滑に回し、より大きな成果につなげている。
このため、上場ネット証券会社の保有する口座において同社開発のアプリが高いシェアを占めるなど、証券会社を中心に金融業界で多数の開発・運用実績を残している。こうした実績を背景に、カード会社やネット銀行などへと営業を拡大している。また、アプリの提供だけでなく、顧客企業にIT人材を提供し、継続性のある運用系の業務も取り込んでいる。このため、WebやECに特化した人材紹介・派遣を行っているサポタントと(株)クロス・ジェイ・テックが合併し、(株)Fittioに商号変更し、顧客向けに開発したWeb/ECサイトの運用や保守の人材を派遣している。また、グループ会社の(株)クロス・ベンチャーズは、ユーザーが店頭に近づくとプッシュ通知など効果的なアプローチをする、O2O(Online to Offline)サービス「AIBeacon(エーアイビーコン)」を開発する(株)アドインテに出資した。同社の既存顧客へのサービスとして、実店舗などに実装する計画である。このようにITソリューション事業では有力な案件が多く、今後も高い伸びを見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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