1stコーポ Research Memo(4):2020年5月期は当初計画を達成できる見通し
2020年1月10日に発表したファーストコーポレーション<1430>の2020年5月期上半期の決算は、売上高が前年同期比24.3%減の6,774百万円、営業利益が同76.3%減の224百万円、経常利益は同76.3%減の222百万円、当期純利益は同77.5%減の145百万円と大幅な減収減益を余儀なくされた。
売上高は、当初の計画値でも減収を見込んでいたものの、完成工事高はほぼ計画とおりの着地となりながらも、見込んでいた不動産売上高の計上が下半期にずれこむ見通しとなったことで、想定以上のマイナスとなった。
期中に修正した計画との比較では、売上高が計画の7,591百万円に対して実績値は6,774百万円にとどまった。これを詳細に見ると、完成工事高については、計画値と同レベルとなったが、予定していた不動産売上高960百万円がゼロに。これが大きく響いた格好となっている。
ただし、ずれ込むことになった不動産売上高については、3月以降、期中に着実に計上できるとしている。このため、第4四半期(3月−5月)の不動産売上高の見通しは、これまでの2,190百万円から4,585百万円に上方修正した。
完成工事総利益は、進行工事の減少によって651百万円と前年同期実績の1,138百万円から落ち込むものの、当初計画の650百万円を確保。不動産の売上総利益は売上高に計上できなかったために、当然のことながらゼロになる。
一方、前期は好調だった共同事業も案件の減少から売上総利益33百万円と前年同期実績の243百万円から大幅に落ち込み、全体の大幅減収減益の理由の1つとなった。反対に、その他の収入はリノベーション案件の売却により、売上総利益39百万円と前年同期の23百万円から増加した。
事業を遂行するうえで肝となる用地の確保は、依然として厳しい環境が続いている状況だ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに伴う特需は一巡しながらも、利便性が高い好立地の案件に関しては取得競争が激しいことには変化が見られない。あくまで採算を無視して取得することはしないと言う。
これまではホテルとの用地確保における競争において、ホテル業界が提示する利回り等の条件で、どうしてもマンションは優位に立てず、良質な用地がホテル建設にさらわれる状況が続いていた。それがようやくピークを過ぎたが、売主は強気の姿勢を崩さない傾向があるため、今後も土地の取得が課題になりそうだ。
受注については、2020年5月期計画の8件のうち、2019年12月末までに4件を受注済み。このうち、造注案件は受注計画2件に対して、1件が受注済み。期末までに順次受注を予定している。
ちなみに、2020年5月期上期においては、2019年6月に神奈川県横浜市で775.55平方メートル、東京都八王子市で5,270.78平方メートル、埼玉県朝霞市で1,202.00平方メートル、東京都墨田区で408.92平方メートル、の用地を取得。横浜市の取得した土地は、再開発予定地だ。
収益をけん引する役割を果たす造注方式の割合は、25.0%と前年の27.0%に比べてわずかながら下回る見通し。今後は、かつてはピーク時で70%に達していた造注方式の比率の回復を目指していく方針だ。
利益面では、用地確保の苦戦がそのまま工事の受注編成に響いている。ただ、同社では事業収支が合わない案件は見送る姿勢を徹底しており、今後もこのスタンスを継続しながら、用地確保に全力を注ぐ。
一方で、財務面は順調だ。一般的に建設業、不動産業は借入金が多く、他の産業に比べて脆弱なイメージがあるが、同社は公募増資を実施した上に、安定した利益計上によって内部留保の蓄積も進み、自己資本比率は2020年5月期上半期実績で42.7%となっている。
2020年5月期の見通しについては、売上高こそ前期比5.2%増の20,005百万円と増収を確保するものの、営業利益は同31.7%減の1,282百万円、経常利益が同32.6%減の1,264百万円、当期純利益は同31.2%減の877百万円と連続減益となることを想定している。これは期初に見込んだ数値だが、上半期が計画に未達となりながらも、その大きな理由が不動産売上高の下半期へのずれ込みにあるために、見通しを修正することはしていない。
利益面では、造注方式の案件が減少することから、悪化が避けられない。完成工事高における売上総利益は1,362百万円(同37.8%減)と悪化する。一方、不動産売上高における売上総利益は555百万円(同362.7%増)と飛躍。売上総利益は、合計で2,366百万円(同17.8%減)となる。売上高総利益率は、完成工事が10.6%、不動産が12.1%となる見通しだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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