テクマト Research Memo(8):情報基盤事業は新規セキュリティ対策製品や新サービスの拡販に注力
2. 事業セグメント別見通し
(1) 情報基盤事業
情報基盤事業の売上高は前期比6.1%増の18,000百万円、営業利益は同1.2%増の1,800百万円を見込む。第2四半期までの進捗率は売上高で51.7%、営業利益で53.1%と順調に推移しており、下期についても最先端のネットワーク・セキュリティ関連製品と、自社の高品質な監視サービス等を組み合わせることで競合との差別化を図り、売上高は計画を上回るものと予想される。また、期初段階では、高度な監視サービスを実現するための積極的な人材投資により利益率の低下を見込んでいたが、増収効果で吸収し利益率も前期並みの水準を維持できる見通しだ。
注目される新規製品の1つとして、米Cyxtera Technologies Inc.(以下、Cyxtera)の次世代セキュアアクセスソリューション製品「AppGate SDP※1」が挙げられる(2019年1月販売開始)。同製品はゼロトラストモデル※2により開発された製品で、CyxteraはSDP製品の代表的ベンダーの1社であり、国内初進出となる。
※1 SDP(Software-Defined Perimeter):情報資産に安全にアクセス可能なフレームワーク。
※2 「利用者や利用者のデバイス、ネットワーク全てを信頼しない」という性悪説のアプローチ。
クラウド環境の普及により、企業内ネットワークはオンプレミスとクラウドを利用するハイブリッド環境となっているほか、モバイルデバイスの普及で社外からも社内ネットワークにアクセスすることが常態化するなかで、企業のネットワークにおける社内と社外の境界線が曖昧となってきており、従来のセキュリティ製品やリモートアクセス通信方式のSSL-VPN(Virtual Private Network)で防御することが困難になりつつある。こうした課題を解決する製品が「AppGate SDP」となる。具体的には、モバイルデバイスで社外から社内ネットワークにアクセスする場合に、デバイス及びユーザーの認証を同製品で実施し、認証後にユーザーに対して最小限のアクセス権を付与して暗号化通信を許可、接続許可後も継続して状況監視と制御を実施することで、不正侵入を防御する仕組みとなる。従来も、複数のセキュリティ製品を組み合わせることで対策を講じることは可能であったが、運用・管理が煩雑であり、統合的に運用・管理できる製品が望まれていた。現在、全国規模で展開している企業等で試験導入が行われており、今後の受注増が期待される。
また、ストレージ製品では2019年7月にCohesity Japanと販売代理店契約を締結し、販売を開始したエンタープライズ向けのセカンダリストレージ用データ管理ソフトウェア「Cohesity(コヒシティ)」が注目される。企業はプライマリストレージに保存しているデータをオンプレミスやパブリッククラウドなど様々な環境でセカンダリストレージにバックアップしているが、これらの環境に依存せず一元的に管理することが可能(コスト低減に寄与)となるほか、日々蓄積されるビッグデータを集約かつ最適配置することでデータの利活用を行うことも可能なソフトウェア製品となる。欧米のグローバル企業や公的機関を中心に受注が拡大しており、国内でもAIやIoTの普及とともに需要拡大が期待される。
(2) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業の売上高は前期比4.0%増の8,800百万円、営業利益は同3.0%増の660百万円を見込む。第2四半期までの進捗率は売上高で51.0%、営業利益で58.7%となっており、利益面では高い進捗となっている。前述したようにCRM分野での大型案件を受注したことが要因だが、下期以降も豊富な受注残を背景に好調を持続する見通しで、業績は計画を上回る可能性は高い。
a) 医療分野
医療分野については「NOBORI」が導入施設数の増加を背景に2ケタ成長が続く見通し。特に、2020年4月の法改正により、医療施設で患者の被ばく線量に関する記録及び管理が義務化されることになったため、「NOBORI PAL」のサービスの1つとして追加した「MINCADI」の需要拡大が見込まれる。
「NOBORI」ユーザーのメリットとしては、新たなサーバの設置や初期費用が不要で、月額利用料のみで簡単に線量管理サービを利用可能な点が挙げられる。また、他の医療施設の検査データと比較することで、自施設の検査条件(照射線量の増減)の最適化が可能になるといったメリットもある※。2019年10月に厚生労働省から法改正に伴うガイドラインが示されたことで引き合いも活発化しており、2020年3月期末に向けて受注が積みあがってきそうだ。被ばく線量の管理システムは競合大手もオンプレミス型で提供しているが、クラウドサービスでは「MINCADI」が先行しており、「NOBORI」の導入施設数拡大及び顧客当たり平均売上単価の上昇に寄与するものと予想される。
※従来は、医師の独自判断により検査条件(線量)が決められており、同じ目的の検査でも被ばく線量に数倍の開きが出るケースもあった。特に日本は海外と比べても被ばく線量が相対的に高いという課題が指摘されており、今回の法改正では、被ばく線量の最適化を進めることが目的の1つとなっている。
新規事業として実証試験に取り組んでいる個人向けPHRサービスについては、さらに導入施設数と利用者数を増やしていく方針となっている。現在、提供しているスマートフォンアプリの機能としては、受診・検査予約のほか、カルテ情報やX線検査等の画像情報、投薬履歴などを閲覧することが可能となっているが、閲覧情報の範囲については各医療施設が決めている。実証試験での評価はおおむね良好のようで、セカンドオピニオンを他の医療施設に求める際に情報を簡便に共有できること、高齢者の場合には家族がアプリを通じて医療情報を共有できる点が高く評価されている。有料化の時期や方法については、導入医療施設数や利用者数が一定規模まで拡大した段階で検討していく方針となっている。
一方、AIを活用した医療画像診断支援サービスについても、複数のAIベンチャーと協業しながら進めている。なかでも、2018年10月に出資したエルピクセル(株)では、2019年1月に国内で初めて医用画像解析ソフトウェアの医療機器製造販売認証(頭部MRI画像が対象)を取得し、同年10月より販売を開始している。医療データを2次利用するためのデータ匿名加工を行う認定事業者についても2019年度内に決定する見通しで、2020年度以降にAIによる画像診断サービスが本格的に始まるものと予想される。「NOBORI」には1.6億件を超える画像情報が蓄積されており、AI画像診断サービスの開始によるビジネスチャンスは大きいと言える。
b) CRM分野
CRM分野では引き続き「FastHelp5」「FastAnswer2」の新バージョンに対する引き合いが活発で、下期も好調推移が見込まれる。また、自治体の広聴業務に対応した「FastHelp Ce」の導入にも注力していく方針となっている。また、海外ではASEAN地域において顧客の開拓を進め、売上規模を拡大しながら今後の黒字化を目指していく。
c) ソフトウェア品質保証分野
ソフトウェア品質保証分野では一部の顧客で予算を絞り込む動きが見られるものの、期初段階で既に保守的な売上計画を立てており、想定内の動きとなっている。主力の自動車業界向けはCASE関連の投資増を受け引き続き好調なことから、下期も増収基調が続くものと予想される。
d) ビジネスソリューション
ビジネスソリューションでは従来の特定顧客向け受託開発ビジネスで積み上げた技術力を生かして、新しい分野でのクラウドサービス創出に取り組んでいくほか、金融分野にも注力していく方針となっている。2019年11月にM&Aで山崎情報設計を子会社化したのもその一環となる。従来から代理店として市場系業務管理システム「Apreccia」シリーズを販売してきたため、短期的な業績への影響は軽微だが、グループ化して営業と開発を一体化することで、大型案件の受注獲得を目指していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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