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イード Research Memo(4):MaaS、ブロックチェーン、音声コンテンツ等の高成長が見込める領域に積極的投資


■業績動向

3. 成長戦略
イード<6038>は今後も新規の事業開発や業務提携、M&Aを積極的に進めながら、「領域特化型メディアの拡大」×「多様なビジネスモデル」を掛け合わせた360度のビジネスモデルを構築して成長を目指す方針を打ち出している。現在は、ネット広告収入に依存するビジネスモデルとなっているが、今後はEC物販やユーザー課金等のコンシューマ(BtoC)領域やコンサルティグ、EC及びメディア運営支援サービス等も業務提携や出資等を通じて積極的に展開していく計画となっている。

領域としては、MaaSやブロックチェーン、音声コンテンツ等の高成長が見込める分野に積極的に投資を行っていく方針だ。

(1) MaaS
MaaSに関しては2017年に打ち出した「iid 5G Mobility」戦略(自動車業界における第5次モビリティ革命を支援する取り組み)により、関連するベンチャー企業との業務提携や出資案件が増えてきている。2018年7月からMaaS分野にフォーカスしたセミナーを毎月開催し、参加するベンチャー企業とのネットワークを広げてきた効果が出ている。2019年6月期の実績としては、スマートフォンで自動車の施錠・開錠を可能とするバーチャルキーの開発を行うジゴワッツと業務提携(2018年8月)したほか、日本最大級のキャンピングカーのレンタルサービス及び各種メディアサービスを運営するキャンピングカーと資本業務提携を締結した(2019年5月)。

ジゴワッツとの業務提携では、商品化開発と独占的な販売を行う提携内容となっている。既にスマートバリュー<9417>のモビリティ・プラットフォームサービス「Kuruma Base(クルマベース)」に採用が決まり、今後サービスが開始されることになる。顧客ターゲットは、カーシェアリングやカーリース企業のほか、営業車両を多く抱える大企業等となる。国内のカーシェアリングの車両台数は年々増加※しており、バーチャルキーの普及拡大が期待される。

※出所:公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団による2019年3月調査資料によると、2019年3月末時点の車両台数は前年同期比19.8%増の3.4万台、会員数は同23.2%増の162万人。


キャンピングカーとの資本業務提携では、同社が持つメディア運営技術やユーザーエクスペリエンスコンサルティング技術のほか、関連会社および協業先の地方創生(ネイティブ(株))、ドライブログ分析(レイ・フロンティア)、自動車用スマートロック(ジゴワッツ)等と組み合わせることで、キャンピングカー領域における新たなモビリティサービスの開発を進めていく予定になっている。

また、2019年8月には新たに「VANLIFE」※の情報発信や、車中泊・テント泊スポットとして駐車場や空き地を旅行者に貸し出すシェアリングサービスを展開するCarstay(株)と、「VANLIFE」に関連する新たなモビリティサービスの開発について業務提携したことを発表している。今後もMaaSに関する取り組みを進めるベンチャーへの出資や業務提携については積極的に進め、将来的にはMaaS事業として成長を目指して行く。

※「クルマを通じた旅や暮らしにより、人生を豊かにする」ことを目的として、箱型のクルマ「バン」を家のように作り変え、クルマを働く・遊ぶ・暮らしの拠点とする新たなライフスタイルのこと。


(2) ブロックチェーン
ブロックチェーン技術については、2018年10月から提供を開始したゲームアプリ「GameDays」において活用している。ゲーム情報の閲覧やプレイログの記録でトークンが獲得できる仕組みで、機能の拡充を順次行って収益モデルを構築した段階で本格的にプロモーションしていく予定となっている。同社にとっては、トークンを発行することでゲームアプリの活性化が進む効果が期待されるほか、利用ユーザーの属性分析が行えるため効果的な広告配信に生かせる可能性がある。

また、2019年7月からは新たに世界中のアニメファンがアニメ記事を翻訳するブロックチェーンプラットフォーム「Tokyo Honyaku Quest」の実証実験を、(株)bitFlyer Blockchain、Tokyo Otaku Mode Inc.、(一社)オタクコイン協会の3社と共同で開始している。同社が運営する「アニメ!アニメ!」の記事をファンに提供して翻訳し、新たに立ち上げたグローバル版サイト「アニメ!アニメ!」に翻訳記事が掲載される。翻訳の対価として独自トークン「HON」※を発行する。同社にとってはグローバル版サイトからの広告収入が得られることになる。

※オタクコイン協会が発行するコミュニティ通貨「オタクコイン」と交換でき、オタク系のグッズ等を購入できるようになる予定。


(3) 音声コンテンツ
音声コンテンツに関しては、AIスピーカの普及とともに米国で普及拡大しており、メディア業界にとって大きな成長市場となっている。日本においてはAIスピーカの普及率が5〜6%と低いものの、今後数年間で普及拡大していくことが見込まれている。このため、同社では運営メディアの音声化に取り組んでおり、現在の11メディアから3年後には50メディアまで音声化対応を進めていく計画となっている。こうした取り組みの第1弾として、メディアの音声化及び音声コンテンツにおける広告プラットフォームの開発を進めるロボットスタート(株)と業務提携を発表している(2019年7月)。同社とは2018年よりメディアの音声展開において協業関係にあり、音声広告配信の実証実験を行ってきた経緯がある。今回の業務提携では、ロボットスタートが展開するメディアの音声化ソリューション「Audiostart」の拡販、音声広告プラットフォームの支援、新たな音声メディアの共同立ち上げなどを推進していく予定となっている。

また、子会社の(株)絵本ナビでも、シマラヤジャパン(株)が運営する中国最大手の音声プラットフォーム「Himalaya」(ユーザー数は5億人超)に「絵本ナビチャンネル」を開設し、読み聞かせコンテンツの有料配信を2019年5月より開始したほか、日本最大級のオーディオブック配信サービス「audiobook.jp」にも同様に配信を開始しており、今後も配信コンテンツを拡充していく予定となっている。これらの取り組みによって、今後は音声コンテンツによる広告配信収入のほか、ユーザー課金収入の拡大が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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