エルテス Research Memo(6):2019年2月期は増収増益を見込む新たな成長フェーズに向けた構造変化に注目
1. 2019年2月期の業績予想
2019年2月期の連結業績予想についてエルテス<3967>は、修正予想※を据え置き、売上高を前期比11.9%増の1,800百万円、営業利益を同39.5%増の100百万円、経常利益を同39.1%増の100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同25.4%増の40百万円と増収増益を見込んでいる。
※2018年7月12日付で親会社株主に帰属する当期純利益を期初予想の60百万円から40百万円に減額修正している。第1四半期決算において、投資有価証券評価損(約19百万円)を特別損失に計上したことが理由である。
売上高は、引き続き「ソーシャルリスク関連サービス」による顧客数の積み上げを目指すとともに、需要が拡大している「内部脅威検知サービス」の本格展開により、新規顧客の開拓や顧客単価の向上を図る方針である。一方、「イベント安全サービス」や「デジタル信用調査」、「本人認証技術の活用」など新規事業については、新サービスの提供開始や他社との提携などに取り組んでいるものの、業績予想の中には織り込んでいない。
また、損益面では、新規事業への先行費用が継続するものの、増収効果やリスクモニタリングのAI化による業務効率化を図ることで、増益を確保する想定となっている。
弊社では、第3四半期までの実績を鑑みれば、新規事業への積極投資を継続していることや、「ソーシャルリスク事業」の進捗に遅れがみられることから、業績予想の達成は簡単ではないとみている。もっとも、最大の注目点は、足元の業績よりも来期以降の成長加速に向けた活動の成果にある。すなわち、将来的な市場拡大を見据え、いかに他社に先駆けることができるか(更なる先行者利益の追求)が、今後の成長性を判断するうえで重要なポイントになると捉えている。特に、デジタルリスクへの関心が高まるなかで、潜在顧客の掘り起しをどのように効率的に行っていくのか、足元で大きく伸びてきた「内部脅威検知サービス」の成長ペースをどこまで維持・向上させていくことができるか、ポテンシャルの大きな新規事業をいかに立ち上げていくのか、などに注目したい。
2. 来期(2020年2月期)業績の考え方
同社は、来期以降の業績見通しを公表していない。弊社では、外部環境(デジタル化の進展とそれに伴うリスク対応ニーズの拡大)がますます追い風となるなかで、依然として伸びしろの大きい「ソーシャルリスク関連サービス」の拡大に加えて、本格的に立ち上がってきた「内部脅威検知サービス」や新サービスとの相乗効果(顧客基盤の拡大や顧客単価の向上等)により、新たな成長フェーズに入っていく可能性が高いと捉えている。すなわち、これまでネット上のオープンデータを対象とした「ソーシャルリスク関連サービス」により成長してきた同社であるが、今後は企業内のログデータを含め、あらゆるデジタルデータを対象とした統合的なリスクマネジメントサービスを提供する企業へと進化する過程にあり、それに伴って、対象先がBtoC中心からBtoBを含む多様な業種へ広がっているほか、契約単位もブランド単位から企業単位へ、窓口(予算)も広報部門から情報システム部門へと、構造的な変化が進んでいるところに注目している。また、「Web信用スコア」や「情報銀行向けソリューション」、「AIプラットフォームを用いた警備保障サービス」等の新サービスが立ち上がってくれば、更なる業績の上乗せも期待できるだろう。特に、「情報銀行」や「デジタルファースト法案」の動向は注意深く見守る必要がある。
一方、想定されるボトルネック(成長阻害要因)には人員面での制約が挙げられるが、サービス認知の向上や顧客獲得チャネルの強化など、潜在顧客の掘り起こしに向けた効率的な営業体制の確立や、AI化の推進による業務効率化をどこまで進められるかがカギを握るものと考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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