アジア投資 Research Memo(5):18年3月期決算もメガソーラーの貢献により増収増益、3期連続の黒字達成
2018年3月期決算もメガソーラープロジェクトの収益貢献により大幅な増収増益、3期連続の最終黒字を達成
3. 2018年3月期決算の概要
2018年3月期の業績(ファンド連結基準)は、営業収益が前期比77.4%増の8,303百万円、営業利益が同67.5%増の1,237百万円、経常利益が同93.6%増の1,047百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同127.1%増の1,281百万円と大幅な増収増益となった。
また、従来連結基準でも、営業収益が前期比37.6%増の5,403百万円、営業利益が同21.5%増の1,017百万円、経常利益が同31.3%増の954百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同57.8%増の874百万円と期初見込値を大きく上回る増収増益となり、3期連続の最終黒字を達成した。
従来連結基準による業績の概要は以下のとおりである。
営業収益が大きく伸びたのは、大型メガソーラープロジェクトを含む再生可能エネルギープロジェクトの売却(9件)及び同社初となる高齢者施設プロジェクトの売却(1件)によるものである。一方、PE投資事業については、ファンド運用残高の縮小に伴い管理運営報酬等が減少したことに加え、IPO延期※や2017年3月期のような大型売却案件が減少したことから減収(下振れ)となった。
※投資先からの新規上場(IPO)は国内1件、海外1件の合計2件(前期は合計5件)にとどまった。
また、営業総利益が前期比7.0%増と増益となったのも、プロジェクトの売却益18.3億円(前期は7.7億円)及び売電収益等2.3億円(前期は2.1億円)※1が寄与した。一方、PE投資事業については、売却高の減少に伴うキャピタルゲインの減少や損失処理(営業投資有価証券評価損及び投資損失引当金繰入額)※2の計上などにより減益となっている。したがって、市場動向の影響等により業績変動の大きいPE投資の下振れを、安定収益源(含み益の活用を含む)となっているプロジェクト投資(再生可能エネルギー等)が下支えした格好と言える。
※1 補助金収益を含む。
※2 営業投資有価証券評価損及び投資損失引当金繰入額562百万円(前期は274百万円)を計上。一部の個別企業に対するものであり、一過性の増加と捉えることができる。
また、販管費は前期並みを維持したほか、借入金圧縮で支払利息負担が減少したこと、特別損失も減少したことから、各段階利益で増益(最終利益では大幅な増益)を実現した。
財務面(従来連結基準)では、総資産がプロジェクト投資資産の売却等により前期末比5.3%減の19,220百万円に減少した一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同15.1%増の6,545百万円に増加したことから、自己資本比率は34.1%(前期末は28.0%)に改善した。また、有利子負債(借入金・社債)残高も返済が進んだことから同15.4%減の11,954百万円と減少している。その一方で、資本効率を示すROEは14.3%(前期は10.4%)に上昇していることから、同社の財務内容はバランスよく改善が図られていると言える。
業務別の業績は以下のとおりである。
(1) 投資事業組合等管理業務
同社グループが管理運用等を行っているファンドの運用残高は前期末比33.4%減の19,150百万円に縮小した。事業承継型バイアウトファンド1件(1,000百万円)を新設したものの、減額や満期満了による減少分をカバーしきれなかった。ファンド数も新設1件に対して、満期満了等4件により前期末比3件減の12ファンドとなっている。
当該業務にかかる損益(運用報酬)については、前期比21.9%減の364百万円に減少した。そのうち、「管理運営報酬等」が運用残高の縮小に伴い同23.9%減の277百万円、「成功報酬」が同14.9%減の86百万円とそれぞれ減少している。
(2) 投資業務
同社グループの自己勘定及び同社グループが管理運営等を行っているファンドからの投資実行額は、メガソーラープロジェクトへの投資を含めて前期比9.9%減の3,887百万円(24件)と減少した。また、投資残高もメガソーラープロジェクトの売却等により前期末比15.6%減の13,981百万円(154件)に減少している。
投資業務にかかる損益については、前述したとおり、売却高(株式売却)の減少に伴うキャピタルゲインの縮小や損失処理(営業投資有価証券評価損及び投資損失引当金繰入額)の計上により「投資損益」が前期比67.6%減の187百万円に落ち込んだが、メガソーラープロジェクト等による収益貢献※1により、投資業務にかかる「営業総利益」は同8.1%増の1,827百万円に拡大した。なお、メガソーラーにおける売却プロジェクトは9件(最大出力合計81.8MW)。期初計画では通期で7件(合計22MW)の売却を予定していたことから、想定外の大型プロジェクトの売却※2が大幅な業績の伸びにつながったと考えられる。
※1 プロジェクトの売却益及び売電収益等は、原則として「投資損益」には含まれず、「組合持分利益等」として営業総利益に反映される。
※2 完成前の大型プロジェクトに対して、好条件によるオファーがあったことが売却に踏み切った背景とみられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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