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シンワアート Research Memo(7):新規事業の育成やアジア戦略に大きな成果


■成長戦略とその進捗

1. 中期経営計画の進捗
シンワアートオークション<2437>は、2018年5月期を最終年度とする中期経営計画(5ヶ年計画)を推進してきた。成長戦略の柱は、「オークション事業の拡大」と「新規事業の育成による安定収益源の確保」、「アジア戦略」の3つである。日本の美術品オークション市場の再生に貢献するとともに、「アートから始まる富裕層向けセレクトサービスカンパニー」へと事業ドメインを拡充することにより、安定収益源の確保と財務基盤の強化に取り組んでいる。デフレ脱却の流れに乗ることで、大幅な拡大を見込んでいたオークション事業に本格的な回復の兆しが見えないなかで、最終年度の目標値(売上高14,500百万円)を大きく下回る見通しとなったものの、新規事業においては、太陽光発電施設の販売が、2015年5月期以降、64基→101基→193基と3年間(累計358基)で大きく拡大し、新たな収益源として業績の伸びをけん引してきた。また、独自の「医療ツーリズム」や「アンチエイジング」のほか、足元で立ち上がってきた「海外不動産紹介」、「PKS」、「FinTech」など、今後の収益ドライバーと成り得る新しい事業にも取り組み、持続的な成長に向けた体制が整ってきたと言える。さらには、中国の海航資本集団との連携やミャンマーとの文化交流など、将来を見据えたアジア戦略でも一定の成果を残すことができた。

2. ホールディングス化によるグループ再編に向けた準備
同社は、これまでの活動の集大成として、グループとして今後更なる成長と企業価値の最大化を実現するため、ホールディングスカンパニー体制への移行によるグループ再編に向けた準備を開始した。グループの成長戦略の立案機能と実現機能を分化し、グループ経営の意思決定の迅速化を図るとともに、グループ各社が事業環境の変化に柔軟に対応できる体制を構築するところに狙いがある。純粋持株会社「Shinwa Wise Holdings(SWH)」のもと、中核のオークション事業を担う「Shinwa Auction」、様々な新規事業を束ね、富裕層ビジネスのプラットフォームを運営する「エーペック」のほか、美術品の相対取引(プライベートセール)の強化を目的として新たに設立した「Shinwa Prive」などが柱となる構想である。

ただし、今後の方向性に大きな変更はない。「アートから始まる富裕層向けセレクトサービスカンパニー」として、これまで以上に厳選されたプラットフォームの構築を目指す。また、グループ事業戦略の根幹として、引き続き「日本近代美術再生プロジェクト」と「富裕層ネットワークの活用」に取り組む。

(1) 日本近代美術再生プロジェクト
同社は、長期間にわたるデフレ経済の下で停滞してきたオークション市場の回復、ひいては本来あるべき市場規模に再評価されることを目標に、「日本近代美術再生プロジェクト」と銘打ち、資本力を駆使した大きなプラットフォームを構築することでオークション事業の拡大に取り組む方針である。具体的には、同社がマーケットメイク機能※を果たすことで市場に厚みを持たせ、取引の活性化と市場の拡大に結び付ける戦略である。加えて、自ら取引の当事者となることは、富裕層とのネットワークを構築する上でもプラスの効果が働くと考えている。同社は、日本の美術品オークション市場は最低でも1,500億円(現在の約10倍)の規模が適正な水準と考えており、その市場規模を支えるためには、最低150億円の純資産を確保し、安心できるプラットフォームの運用を実現しなければならないとしている。そして、時間的な目安として、2023年には経常利益50億円、純資産150億円の実現をイメージしている。

※同社が当事者として取引に参加することで市場の流動性や効率性を高める手法のこと。


足元では、回復に向けた道筋が見えてこない状況にあるが、同社としては、外部環境の好転を待ちながら、財務基盤の強化や富裕層ネットワークの拡大、人材面の強化など、プラットフォーム構想の実現に向けて「日本近代美術再生プロジェクト」を着実に進めていく構えだ。

(2) 富裕層ネットワークの活用
同社は、これまでオークションから派生する富裕層ビジネスとして、太陽光発電施設の販売をはじめ、独自の「医療ツーリズム」及び「アンチエイジング(サプリメント販売など)」など、富裕層マーケティングが生かせる分野へと事業領域を拡大することで安定収益源の確保と財務基盤の強化に取り組んできた。今後も、これまで培ってきた富裕層ネットワークと戦略子会社エーペックを中心とした営業力をさらに強化し、富裕層ニーズを的確に捉えた同社ならではの新事業を展開していく構想を描いている。その中には、Webによる富裕層向け情報配信プラットフォームの構築なども含まれており、いよいよ本格的な富裕層ビジネスに向けて新たなフェーズへと入ってきた。

弊社でも、富裕層ビジネスの展開により財務基盤の強化と富裕層ネットワークの拡大を図りながら、「日本近代美術再生プロジェクト」を成功に導く戦略シナリオは理にかなっていると評価している。また、これまでの活動を振り返ると、グループとしての事業構造に加えて、戦略子会社を中心として企業カルチャー(営業マインドや機動性)においても大きな変化が生まれてきたことはプラスに評価して良いだろう。ホールディングス化(グループ再編)による効果を含め、富裕層ビジネスの拡大に向けた展開スピードやグループシナジーの発現、新たな収益ドライバーの育成のほか、美術品市場の活性化に向けたプライベート取引(アートディーリング)の進展やアジア戦略についても、中長期的な目線から今後の動向に注目していきたい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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