早稲アカ Research Memo(2):首都圏で小中高校生を対象にした進学塾「早稲田アカデミー」を展開
1. 会社沿革
早稲田アカデミー<4718>は1975年に創業者の須野田誠(すのだまこと)氏が早稲田大学在学中に、東京都杉並区にて小中学生対象の学習指導サークルを開始したところからスタートする。当初は都立の進学高校であった「西高の合格者数No.1」を目標に進学塾を運営。数年後に目標を達成したが、その後、受験生の人気が公立高校から私立高校へシフトしていくなかで、同社も新たな目標として「早慶付属高校の合格者数No.1」を目指すことを1990年に打ち出した。カリキュラム、教材の拡充を進めると同時に、教務指導力の強化に取り組みながら、合格実績を年々積み上げていき、2001年に合格者数No.1を達成し、その後はこのブランド力を持って校舎数の拡大を進め、業績も本格的な成長期に入っていく。
早慶の付属高校は首都圏で7校あり、年間の受験者数は約1万人。潜在的な志望生徒数は数万人となり、高校受験の進学塾として成長を図るうえでは、同分野で合格者数No.1を獲得することは最大の宣伝効果になったと言える。その後も17年連続でトップを走っており、今では2位以下を大きく引き離す圧倒的なNo.1となっている。また、次の目標として設定した難関私立高の「開成高でのNo.1」も10年連続で達成しており、首都圏における高校受験ではブランド力、合格実績ともにNo.1の進学塾と不動の地位を確立している。現在は次の目標である首都圏の難関中学である「御三家中学の合格実績No.1」達成に向けた取り組みを進めている。
また、2007年には医歯薬系大学受験専門予備校「野田クルゼ」を運営する野田学園の株式を取得し、完全子会社化したほか、2015年には茨城県内で小中学生を対象とした進学塾「水戸アカデミー」を運営する(株)アカデミー(現、水戸アカデミー)の株式を取得し完全子会社化している。なお、同社の株式上場は1999年で、現在のJASDAQ市場に上場し、2007年に東証第2部、2012年に東証第1部に上場を果たしている。
2. 事業内容
同社の事業セグメントは教育関連事業と不動産賃貸事業とに分かれているが、売上高の99%超は教育関連事業で占められており、不動産賃貸事業の売上高は100百万円前後と業績に与える影響は極めて軽微となっている。
教育関連事業では小学生から高校生までを対象とした進学塾「早稲田アカデミー」を首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城)で展開している。ブランド名としては「早稲田アカデミー」(2017年3月末112校)のほか、難関中学高校受験専門塾「ExiV(エクシブ)」(同5校)、個別指導塾の「MYSTA(マイスタ)」(同12校)、現役生向け難関大学受験塾(同11校)、最難関中学受験専門塾の「SPICA(スピカ)」(同1校)、明光ネットワークジャパン<4668>との提携によって2011年より開始した「早稲田アカデミー個別進学館」(同11校)、そして2017年1月より小中学生向けの英語塾として開校した「多読英語教室 English ENGINE」(同1校)の合計153校をすべて直営で運営している。
また、2007年に子会社化した野田学園では医歯薬系専門の大学受験予備校「野田クルゼ」を2校、都内で展開している。野田学園を子会社化した背景としては、大学受験において理系で高いレベルの指導ノウハウを持つ講師をそろえており、文系主体であった同社の「大学受験部」とのシナジーが得られやすかったことが挙げられる。2015年に子会社化した水戸アカデミーでは、茨城県内で小中学生を対象とした進学塾「水戸アカデミー」を2校運営しており、県内の難関公立高校である水戸第一高校の合格者数で高い実績を有している。水戸アカデミーを子会社化した背景としては、公立難関進学校の受験を目指す塾生の獲得強化を進めており、その一環として茨城県内においても水戸アカデミーの強いブランド力を生かせることや、今後の大学受験部門の校舎展開の面でもプラスになると判断したことが挙げられる。
校舎数に関してはここ数年、年間4~6校のペースで拡大している。通塾エリア内で人口減少が進み採算が取れなくなった場合などは、同社が近隣で展開する校舎との統廃合も適時行っている。また、塾生数は小学部と中学部でそれぞれ全体の4割強を占めており、高校部は全体の1割程度の水準となっており、構成比はここ数年変わっていない。全体の塾生数(期中平均)は2015年3月期に初めて3万人を超え、校舎数の拡大とともに生徒数も順調に増加を続けている。教師に関しては、正社員教師のほか同社の教務研修によって育成された非常勤講師も多数の授業を担当している。
教育関連事業では英語教育に対する取り組みも注力している。2012年に「東大・医学部・バーバードに一番近い小学生たちの英語塾」をコンセプトに、年長から小4生(現在は小6生)を対象とした英語英才講座「早稲田アカデミーIBS(Integrated Bilingual School)」を開講し、世界に通用するグローバル人材を育成するプログラムとして注目度が高まっている。現在は中学生まで対象としたカリキュラム(国立ラボDual Express ENGLISH)や、小中学生を対象とした「多読英語教室English ENGINE」を開校している。
そのほかにも現役教師の研修用教材となるeラーニング「教師力養成塾e-講座」を提供しているほか、インスクール・ビジネスとして学校や教育委員会から依頼を受け、受託授業なども手掛けている。これらは、進学塾で培った指導ノウハウと社内社外の研修・講演等で培った研修ノウハウを組み合わせたものとなっており、今後も幅広く公教育支援への取り組みを推進していく方針となっている。
3. 同社の強み
同社の最大の強みは、首都圏において私立最難関高校と言われる開成高校や早慶付属高校に毎年、業界トップの合格者数を輩出できるシステムを確立している点にある。具体的には、これら志望校へ合格させるためのカリキュラム・教材が完成しており、合格に直結する指導法を教師に習得させるための教育研修システムが整備されている。また、塾生たちのやる気を引き出し学習意欲を高めるための「学習する空間づくり」や、互いに競い合い切磋琢磨する学習環境を提供していること、さらには「志望校への合格」という共通目標を全社一丸となって達成していくため、教師だけでなく事務職も含めたインセンティブの設定、人事評価制度を導入していることも高い合格実績を維持し続けている要因になっている。
同社の基本戦略である「合格実績戦略」という、顧客にとっては明確でわかりやすい差別化を推進することでブランド力を向上させ、その結果として「難関校に行くなら早稲田アカデミー」という流れを高校受験では確立している。今後は中学受験や大学受験においても同様の戦略によって塾生数を伸ばしながら、収益を拡大していく方針となっている。
4. 主要株主と提携状況
同社の主要株主を見ると、現在の筆頭株主はナガセ<9733>で出資比率は18.1%、第2位に英進館(株)10.2%、第5位に明光ネットワークジャパン4.9%と同業他社が入っている。また、2017年3月には進学会<9760>とその筆頭株主である(有)平井興産が合わせて5.0%の同社株式を取得したことを発表している。
このうち、ナガセとは社会人研修事業の委託等の取引があるほか、ナガセの子会社で中学受験指導の草分け的存在である(株)四谷大塚とは1997年に提携塾契約を締結している。提携内容は、小学部で使用する教材類を四谷大塚から購入し、カリキュラムも準拠して指導すること、並びに四谷大塚の実施する公認テスト会場として同社が代行的な業務を行うことができることなどが定められている。
第2位株主の英進館は、九州を地盤とする進学学習塾で、慶応義塾女子高やラ・サール高の入試対策特別講座や夏期合宿などの共同開催を行うなど事業面で友好関係にある。また、第5位株主の明光ネットワークとは、個別指導塾である「早稲田アカデミー個別指導館」を共同展開している。進学会に関しては事業上の取引関係はないが、長期保有を目的とした投資と見られる。
ここ数年、学習塾業界の再編統合の動きが活発化しているが、同社においてはシナジーが見込まれるM&A案件であれば検討していくが、中期的には現状の経営体制の中での成長を目指していく方針となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<TN>
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