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いちご Research Memo(1):心築(しんちく)技術を軸に3つの投資法人と連携する事業モデルが完成


■要約

いちご<2337>は、不動産ファンド運営会社および資産流動化などを行う会社を前身とし、2000年に事業をスタートした。2002年には大証ナスダック・ジャパン市場(現東証JASDAQ市場)に上場し、事業拡大を加速させた。リーマンショックを契機に、いちごトラストが大株主となり、資産運用ビジネスをコアとした事業の選択と集中を行った。その後、2008年に持株会社制に移行し、2011年にJ-REITの2社を子会社化。2015年11月にはホテルリート、2016年12月にはインフラ投資法人を上場させ、既存不動産に新しい価値を創造する心築(しんちく)事業を発展させている。2015年11月に東証1部に昇格、2016年8月にはJPX日経インデックス400の構成銘柄に選定された。

1. 事業の特徴とトピック
主な事業セグメントはアセットマネジメント事業、心築事業、クリーンエネルギー事業の3つである。アセットマネジメント事業は、3つの投資法人に対して、投資対象資産の発掘および供給、運営・マネジメントなどを行う。いちごオフィスリート投資法人<8975>、いちごホテルリート投資法人<3463>ともに運用資産残高を増やしており、好調な業績を続けている。2016年12月にいちごグリーンインフラ投資法人<9282>が新規上場し、上場投資商品のラインナップが拡充した。心築事業(旧:不動産再生事業)は同社事業の柱であり、不動産価値向上ノウハウは同社のコアコンピタンスである。保有不動産の賃貸収益(ストック)と譲渡収益(フロー)がバランスよく成長しているのが同社の特徴である。2016年10月に取得した「トレードピアお台場(東京都港区)」は取得金額が約300億円の大型のオフィスであり、中規模を得意としてきた同社にとって新たな展開となる。

2. 業績動向
2017年2月期通期は、売上高が前期比119.8%増の109,253百万円、営業利益が同41.3%増の21,781百万円、経常利益が同42.2%増の19,755百万円、当期純利益が同15.2%増の14,894百万円と過去最高益とともに4年連続の増収増益を達成した。

業績好調の要因としては、主力の心築事業において、取得した物件からの賃貸収入の増加や運用するリートへの物件供給、クリーンエネルギー事業において、第4四半期に太陽光発電所13件をいちごグリーンインフラ投資法人(東証インフラ市場に上場)へ譲渡したことにより、大きな売上・利益が計上された。2018年2月期通期の業績予想は、営業利益で前期比5.4%減の20,600百万円、経常利益で同7.4%減の18,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同9.4%減の13,500百万円と減益だが、中期経営計画達成に向け依然好業績は継続する見通しだ。前期業績はいちごグリーンの新規上場による発電所の売却や海外大型株式の売却など特殊事情が大きかったため、巡航速度に戻ったと捉えるのが妥当だろう。

3. 成長戦略
同社は、2017年3月に新たに「不動産オーナーサービス事業」を開始し、子会社「いちごオーナーズ(株)」を設立した。この新会社では、現不動産オーナーやこれから不動産オーナーを目指す個人や法人を対象とし、10億円以下のレジデンスやオフィス物件を中心に扱う予定だ。対象顧客の不動産投資ニーズは多様なため、ニーズに応じた物件取得から始め、同社の強みである心築技術(不動産価値向上技術)を活用してバリューアップを行う。リート以外の出口を広げることで、事業領域が拡大をするとともに、リート市場に影響を受けない事業を持つ意味が大きい。

4. 株主還元策
同社は「累進的配当政策」を導入しており、「原則として減配なし、配当維持もしくは増配のみ」を明確な方針としている。2017年2月期の1株当たり配当金は年間5円、配当性向は16.9%だった。2018年2月期は年間6円、配当性向22.2%と増配を予想する。2017年の4月24日から4月28日の期間に4,627,400株の自社株式を取得した。株主への利益還元策としても注目したい。

■Key Points
・いちごグリーンインフラ投資法人が東証インフラ市場に新規上場
・2018年2月期は減収減益も好業績維持予想、ストック事業比率を高める見込み
・子会社を新設し、不動産オーナーサービス事業を開始

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)



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