水中覇権と安全−米原子力潜水艦の事故−【実業之日本フォーラム】
中国解放軍報は10月12日、事故の場所、核燃料漏洩の有無及び航行安全や漁業に与える影響について速やかに情報公開すべきであると論評している。
事故を起こした米海軍攻撃型原子力潜水艦コネチカットは、シーフルフ級2番艦である。
同級潜水艦は、冷戦時代の高性能ソ連潜水艦に対応するため、静粛性、潜航深度、高性能センサーの装備等極めて能力の高い原子力潜水艦として計画され、従来のロサンジェルス級の後継として20隻以上の建造が予定されていた。しかしながら、冷戦の終結と、高性能が故の建造費高騰も相まって、3隻で建造が打ち切られた。1番艦が就役してから20年が経過するが、依然として高性能潜水艦の地位を保っている。
USNI紙によれば、コネチカットは、5月に母港である米国西岸のワシントン州、ブレマートンを出港、西太平洋に展開中であり、少なくとも2回日本に入港したとしている。在日米海軍司令部は7月31日に横須賀の米軍基地に入港する同艦の写真を公開している。
水中排水量9,000トンを超える潜水艦で、11人が怪我をしたという事は、比較的大きな衝撃があったと推測される。従って、衝突した相手は、船舶等ではなく、海山又は海底に設置された人工物の可能性が有る。米原子力潜水艦が海山に接触した例は過去にもある。2005年1月、グアムを出港しオーストラリアに向かったロサンジェルス級攻撃型原子力潜水艦サンフランシスコは海山に正面衝突し、1名死亡、23名負傷、船首部が大きく破損するという事故を起こしている。当時の報道によれば、サンフランシスコは深度525フィート(約140m)を30ノット(時速約55Km)で航行していたとされている。海山への衝突原因は、米海軍が広大な太平洋の海底地形を十分に把握せず、サンフランシスコも不十分な情報しかないにも関わらず、高速航行したことがあげられている。潜水艦は通常航行時、パッシブ・ソーナーしか使用しないため、海山や海底構造物といった自ら音を出さない目標の存在を感知することはできない。従って、浅海域や複雑な海底地形の海域を航行する場合は、低速力で、水深を測定しながら航行する。サンフランシスコは、航行海域にそのような海山があるとは全く予想していなかったのであろう。
一方、今回コネチカットが損傷したのは南シナ海である。島嶼が点在し、海中の音響特性も複雑である。米軍は南シナ海の海洋調査を積極的に実施している。2009年3月及び5月には米海軍音響測定艦の行動を中国漁船が妨害しており、2016年12月には米海軍海洋観測艦の無人潜水機を中国海軍艦艇が捕獲する事件も生起している。米軍は太平洋に比較すると詳細な海底地図を保有していると見られるが、航行船舶も多く、漫然と航行できる海域ではない。被害状況や原因は今後明らかにされると思われるが、少なくとも潜水艦乗員の注意不足は否めない。コネチカットは南シナ海からグアムまで6日間水上航走していることから、潜没航行ができない何らかの原因、例えば船体に亀裂が入っている可能性もある。
今回の事故は、図らずも南シナ海において激しく水中覇権が争われていることを白日の下にさらしたと言えるであろう。攻撃型原子力潜水艦は、その能力から次のような任務が割り当てられる。
その一つは、情報収集である。長期間潜没航行が可能な原子力潜水艦は、隠密裏に相手国沿岸に接近し、各種情報を収集するのに最も適した兵力である。状況が悪化し、攻撃が命ぜられたならば、巡航ミサイル等による陸地攻撃や魚雷等により空母等の重要艦艇を沈めることも可能である。
次の任務は弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)の追尾又は護衛である。SSBNは核抑止戦略において、第二撃能力(相手の先制攻撃で地上核兵器が無力化された場合、反撃の核攻撃が可能な体制を構築することにより、相手の先制攻撃を抑止する考え方)の役割を果たす。これを無力化すること、あるいは相手の無力化の試みを阻止することは重要な任務である。冷戦時代、外洋展開中のソ連SSBNには常時米原子力潜水艦が張り付いていたと言われている。
最後に、空母等重要船舶の護衛である。強大な攻撃能力を持つ米海軍原子力空母であっても、潜水艦からの攻撃には脆弱である。対潜兵力として、対潜哨戒機、水上艦艇等が存在するが、海中という同じ環境で行動する潜水艦が相手を探知する能力が最も優れている。更に運動性能の優れた攻撃型原子力潜水艦は、空母等の周辺を自由に行動し、待ち伏せ攻撃が主流の通常型潜水艦を牽制できる。
防衛省の公表によれば、10月2日~3日に米空母「ロナルド・レーガン」及び「カール・ビンソン」は、日本の護衛艦「いせ」及び英空母「クイーン・エリザベス」とフィリピン海において訓練を実施している。コネチカットが事故を起こした10月2日には、南シナ海に米空母は存在しない。従って、コネチカットの任務は、南シナ海における情報収集又は中国が海南島に配備している「晋」級SSBNの追尾と推定できる。
南シナ海において潜水艦を運用する国は米中だけではない。シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナムが潜水艦を保有しており、タイも中国から潜水艦を購入すると伝えられている。2018年9月には、海上自衛隊の潜水艦「くろしお」がベトナムのカムラン湾を訪問しており、日本もこれに加わる。
正に南シナ海は、各国潜水艦が入り乱れる海域となっており、それに伴い、事故の危険性が高まる。幸いコネチカットは自力でグアムまで航行することが可能であったが、潜水艦事故は多数の死者を出す大事故につながる可能性が高い。今年4月には、インドネシア潜水艦がバリ島沖で沈没、53人の乗員総員の死亡が認定されている。沈没した潜水艦の救助は時間との勝負であるが、隠密性が命の潜水艦は、いつ、どこに沈没しているのかを特定することが難しい。インドネシア潜水艦の場合、沈没位置が判明したのは消息を絶ってから3日後であった。多くの国の権益の主張が重なり合う南シナ海では、潜水艦救難には、国際的な協力体制が必要である。秘匿性の高い潜水艦の行動に関し、各国が情報共有を図ることは困難と思われるが、少なくとも遭難したという情報を速やかに共有し、救難に関し協力するネットワークを作る必要がある。
1963年の米海軍原子力潜水艦スレッシャー、2000年のロシア原子力潜水艦クルスクは双方ともに乗員の全てが死亡認定されている。南シナ海において、今後とも激しい水中覇権争いが行われると推定される。潜水艦が事故で沈没した場合、多くの人命が失われることに思いをいたし、安全対策にも十分な配慮が望まれる。
サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。
写真:YONHAP NEWS/アフロ
■実業之日本フォーラムの3大特色
実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。
1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム
・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する
・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う
2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア
・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く
・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える
3)「ほめる」メディア
・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
<FA>
ヘンリー王子とメーガン妃、離婚の危機に「結婚生活はそれほど長く続かないだろう」王室専門家
エンゼルスが菊池雄星を電撃獲得「大きな補強、現時点でキクチは先発ローテのエース」と米解説者
亡き長女の絵本「6さいのおよめさん」重版 10年経て要望の声応え
ベルクチラシ(11/26-29)近くの店舗をチェック!!
ニコール・キッドマン、故郷オーストラリアへの帰国を検討 9月に実母を亡くしてから多忙な日々
【12月権利確定】株主優待が変更になった銘柄6選!カタログギフトに高級クオカなど
【27日のおむすび】落ち込む歩と聖人を見た愛子は気分転換にお好み焼きパーティーを始める
たこ焼き器なしでたこ焼きを作る!?オタフクソース公式紹介の「カクたこ」作ってみた
成田悠輔氏「人は音楽にお金を使わない…血の海が音楽という市場」と私見つづり反響
【ビアードパパ】生クリームが主役のシュークリームが今年も登場♡
前澤友作氏「全ての方向で法的措置を検討します」と警告
ガーシーが綾野剛のLINE公開でネット騒然「ショック」「すごいエンタメ」
二階堂ふみが結婚!?お相手が衝撃的過ぎてネット民「マジか・・・」
3刷目の重版決定!榎原依那のファースト写真集「Inaism」から、完全未公開カットをご紹介♡
クロちゃんを騙した「レイちゃま(小林レイミ)」の現在が別人すぎると話題に
ナイナイ岡村、鈴木紗理奈の不倫報道に複雑な思い「チクりがなければ…」
藤本美貴、「早く死ぬ確率が高く、不安定な」庄司智春と結婚した理由を聞かれ“一言”で回答
え!42歳?「我慢できなくなっちゃった」熊田曜子“透け透け入浴”超絶ボディーに悶絶の声
元鳥取知事の片山善博氏「かえってマイナスに作用したんじゃ」斎藤元彦氏兵庫県知事再選で分析
へずまりゅう、妻を襲撃した男の“素性”情報を報告「妻は精神をズタボロにされて」
クロちゃんを騙した「レイちゃま(小林レイミ)」の現在が別人すぎると話題に
ガーシーが綾野剛のLINE公開でネット騒然「ショック」「すごいエンタメ」
二階堂ふみが結婚!?お相手が衝撃的過ぎてネット民「マジか・・・」
四千頭身、テレビから消えた理由を明かすも批判殺到「人のせいにするな」
ユーチューバーもこう氏、元彼女・成海瑠奈について赤裸々告白
父が再婚の丸山隆平(36)現在の家族関係がとんでもないことになっていたと話題に
3時のヒロイン福田麻貴(32)は元アイドルだった!昔の姿がかわいいとヲタク歓喜
多部未華子(30)結婚の裏事情あまりにも恐ろしすぎると話題に!
たぬかな、「あのチビやろ?」迷惑系黒人YouTuberへの苦言が物議
「愛が生まれた日」藤谷美和子(56)の現在がヤバい!?徘徊生活を送っていた過去も明らかに。
ヘンリー王子とメーガン妃、離婚の危機に「結婚生活はそれほど長く続かないだろう」王室専門家
エンゼルスが菊池雄星を電撃獲得「大きな補強、現時点でキクチは先発ローテのエース」と米解説者
亡き長女の絵本「6さいのおよめさん」重版 10年経て要望の声応え
ベルクチラシ(11/26-29)近くの店舗をチェック!!
ニコール・キッドマン、故郷オーストラリアへの帰国を検討 9月に実母を亡くしてから多忙な日々
【27日のおむすび】落ち込む歩と聖人を見た愛子は気分転換にお好み焼きパーティーを始める
【12月権利確定】株主優待が変更になった銘柄6選!カタログギフトに高級クオカなど
たこ焼き器なしでたこ焼きを作る!?オタフクソース公式紹介の「カクたこ」作ってみた
成田悠輔氏「人は音楽にお金を使わない…血の海が音楽という市場」と私見つづり反響
【ビアードパパ】生クリームが主役のシュークリームが今年も登場♡