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介護保険制度施行20年における介護環境の変化


2000年4月、従来の老人福祉制度と老人医療制度を再編成する「介護保険制度」が開始された。当時の要介護・要支援認定者数はおおよそ218万人、介護従事者は約55万人、本制度関連総費用額は約3.6兆円、全国平均の保険料は2,911円である。本制度の基本的仕組みは大きく2つある。1つ目は「介護保険制度の総費用は、保険料50%、公費50%で運用される制度であり、40歳以上が被保険者となり、利用者は、費用の1割負担で介護サービスを受給できる」というもの。2つ目は「3年を1期として運営され、3年毎に保険料や制度内容の見直しが行われる」というものである。制度開始から20年が経過した本制度を取り巻く介護環境の変化を概観してみよう。

まず、財源不足についての問題である。制度開始当初の要介護・要支援数は、2017年に制度開始時から約3倍の633万人(介護保険事業報告)へ膨れ上がった。介護保険制度の総費用も2000年時点の約3倍、10.3兆円(内訳、公費5.1兆円、保険料5.2兆円)に増加している。この問題は、公費または、保険料を増額して解決しなければならない。保険料については2015年に本人負担の1割から2割負担への増額制度制定、2018年に本人負担の3割負担への増額という負担割合制度の変更を行っている。これは、年金収入とその他の合計所得額に応じ、年収340万円以上が3割負担、280万円以上が2割負担という変更であった。これらにより、2018年の全国平均保険料は介護保険制度制定当初の約2倍の5,869円となった。今後も介護財政のひっ迫が予測されるため、個人負担の増加や現行の40歳からの納付開始年齢の引き下げによる財源確保が必要になってくるであろう。例えば、5歳引き下げで約5,400億円、10歳引き下げで約1兆500億円の保険料増収という試算となる。

次に介護従事者の確保の問題である。総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は2017年で27.3%であり、2025年に約30%、2060年に約40%へ達すると見込まれている(高齢社会白書)。これに伴い、要介護・要支援認定者数も増加の一途を辿っている。制度開始当初の介護従事者数が約55万人であったのに対し、2025年には約245万人の所用が見積もられ、約40~50万人の労働力が不足すると予測されている(厚労省)。制度開始当初、介護分野の有効求人倍率は1.10倍であったが、2016年には3.02倍となっている。東京23区においては、10倍以上だと言われており、大幅な人材不足となっている。このため、介護人材確保のための処遇改善、人材育成、業務の効率化が求められており、特に、介護ロボットやICT化による省エネルギー・省人化の推進が急務である。

最後に制度の複雑化という問題がある。本制度は3年を1期として、社会保障制度審議会において保険料や制度が変更されている。介護保険制度改革のため、何度も改革が行われ国民にとって有益で、様々なニーズに対応できる制度に変革してきた。しかし、要介護認定制度の手続きが複雑かつ1~2ヵ月の長期間を要するという不具合は残っている。また、介護サービスの要望に応えるべく訪問系、通所系、短期滞在系、居住系、入所系と体系を区分しているが、その内容、適用、手続き等も煩雑化している。

高齢者が高齢者を介護する「老老介護」や認知症患者が認知症患者を介護する「認認介護」という状況もよく指摘される。国及び担当省庁においては、介護保険制度について、20年の介護環境の変化を克服し、これから迎える超高齢化社会における国民のセーフティネットとして機能するように、改善改革を推進してもらいたい。

(サンタフェ総合研究所)


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