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日経平均は5日ぶり小反落、雇用削減の波は半導体企業までに広がる


 日経平均は5日ぶり小反落。33.91円安の27361.10円(出来高概算5億715万株)で前場の取引を終えている。

 25日の米株式市場でダウ平均は9.88ドル高(+0.02%)と小幅に4日続伸。ボーイングやマイクロソフトの冴えない決算を失望した売りが先行し、大幅下落で始まった。
ただ、カナダ中銀が予想通り利上げを決定後、次回会合で金利を据え置く可能性を示唆すると、米国内の金利ピークアウト期待も強まり、売りが後退。また、今週発表が予定されている重要経済指標や今月末に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした買い戻しが強まり、終盤にダウ平均はプラス圏に浮上。ナスダック総合指数も下げをほぼ帳消しにし、−0.18%と小幅続落にとどまった。引け味のよかった米株市場を引き継いで、日経平均は49.63円高からスタート。しかし、寄り付き直後から失速すると、半導体などハイテクを中心とした売りが重しとなり、早々にマイナスに転じると、その後も軟調な推移が続いた。

 個別では、米半導体企業ラム・リサーチの低調な決算を受け、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>が大きく下落。ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、ダイキン<6367>、村田製<6981>、イビデン<4062>などハイテク株も総じて軟調。前日に大幅反発した海運が再び大きく売られており、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>が揃って大幅安。富士通ゼネラル<6755>は決算が市場予想に未達で売り優勢。インソース<6200>は堅調な決算ながらも四半期ベースでの増益率鈍化などにより、短期的な出尽くし感が先行して下落。東証スタンダード市場では業績予想を下方修正したテクノホライゾン<6629>が急落している。

 一方、ソフトバンクG<9984>、OLC<4661>、HOYA<7741>、ファナック<6954>、ファーストリテ<9983>など値がさ株の一角が堅調。メルカリ<4385>、ベイカレント<6532>のグロース株の一部も買われている。ほか、三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の原発・防衛関連、JAL<9201>、資生堂<4911>、コーセー<4922>、パンパシHD<7532>、高島屋<8233>などのリオープン関連が堅調。日置電機<6866>、信越ポリマー<7970>はそれぞれ決算が好感されて大幅に上昇。関西ペイント<4613>と住友大阪セメント<5232>
は証券会社のレーティング格上げを材料に買われた。サイバー<4751>は、決算は冴えなかった一方、株主優待の拡充が下支え要因となり、上昇に転じた。東証スタンダード市場では業績予想を上方修正した日パレット<4690>、日ギア<6356>がそれぞれ急伸している。

 セクターでは海運、銀行、電気機器が下落率上位となった一方、精密機器、不動産、その他製品が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の53%、対して値上がり銘柄は41%となっている。

 前日の米株式市場はまちまちだったとはいえ、寄り付き直後の大幅安をほぼ帳消しにするなど、引け味は悪くなかった。米マイクロソフトの決算はクラウド事業の成長鈍化に加えて今後の慎重な見通しが示されるなど、内容は総じて良くなかっただけに、こうした動きには意外感もあり、地合い自体は悪くないように見受けられる。

 しかし、前日の当欄で紹介した半導体企業のテキサス・インスツルメンツや化学・素材メーカーのスリーエムの決算も含め、これまでの米主要企業の決算は低調なものが目立つ。前日発表された半導体企業ラム・リサーチの決算も良くなかった。10−12月期の売上高と一株当たり利益(EPS)は予想を上回ったものの、1−3月期見通しは売上高及びEPSともに予想を大幅に下回った。

 同社は全てのセグメントにおける顧客が警鐘を鳴らしているとし、特にメモリー市場が厳しいとの見解を示した。NANDとDRAMの顧客先は設備投資を減らしている最中であり、過剰な在庫をバランスさせるために設備稼働率も落としているという。さらに、中国への半導体輸出規制が更なる向かい風になっていると注意を促した。

 一方、同じく前日に決算を発表した極端紫外線(EUV)露光装置で世界シェアを独占する蘭ASMLホールディングは、先端半導体製造装置への強い需要を背景に、市場予想を上回る1−3月期見通しを示した。ただ、同社も中国に対する半導体規制が業界のコスト上昇につながる恐れがあると警告している。

 他方、米電気自動車テスラの10−12月期売上高とEPSは揃って市場予想を上回った。
競争環境の激化を背景に相次ぐ値引きを強いられており、利益率は大きく低下しているが、マスク最高経営責任者(CEO)は「価格改定により、1月の需要は生産台数の約2倍に及ぶ」と言及、総合的にはある程度の安心感を誘う内容と捉えられているようだ。

 しかし、先行き警戒感が依然として拭えない状況は続く。マイクロソフトやアルファベットといった大型IT企業から、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの大手金融まで、多くの米企業が大規模な雇用削減を行っている。それだけ、先行きの景気が危ういと見ている証拠であり、こうした動向を今の株式市場が正確に反映できているとは考えにくい。

 前日はIBM も全体の1.5%にあたる約3900人の従業員を削減する方針を示したほか、ラム・リサーチも1−3月期の間に1300人の人員削減を行うと発表した。半導体企業は今年後半からの市況回復を期待する声があり、最近の株価上昇も拠り所にすでに底入れしたと捉える向きもいるようだ。しかし、年後半からの市況回復の確度が高いのだとすれば、1−3月期のタイミングで人員削減を行うラム・リサーチの今回の決定はやや不可解な印象を受ける。半導体市況は市場関係者が抱くほど楽観的な状況でなく、想定以上にさらに深刻なものなのかもしれない。

 業界代表の東エレク<8035>の株価チャートをみると、24日の上ヒゲを伴った陰線安値引けを直近ピークに再び下落しており、200日線と52週線に見事なまでに上値を抑えられている。今年の相場テーマは「景気後退」に尽きると思うが、景気後退の度合いが見えてくるまでは、当面、強気派と弱気派の拮抗が続くだろう。相場はレンジ推移が続くと思われ、下手な深追いはせず、下がったところを買い、上がったところを売る、こまめな逆張り戦略に徹することをお薦めしたい。
(仲村幸浩)

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