
貯金300万円は50歳代の平均700万円を400万円下回る
まず、同年代がどのくらい金融資産を持っているのか確認してみましょう。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表している「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、二人以上世帯における50歳代の金融資産保有額は、金融資産を保有していない世帯を含めて平均700万円です。
貯金300万円と単純に比較すると、平均を400万円下回ります。ただし、「平均より400万円少ないから、定年までに400万円貯める必要がある」というわけではありません。
必要な老後資金は、受け取れる年金や住宅ローンの有無、持ち家か賃貸か、定年後も働くかなどによって変わります。また、調査上の金融資産と一般的な「貯金」は必ずしも同じものではありません。
平均700万円は、あくまで自分の資産状況を考えるための参考として捉えましょう。
貯金300万円と退職金1000万円があっても老後資金が十分とは限らない
今回のケースでは、貯金300万円に退職金1000万円を加えると1300万円になります。まとまった金額ですが、これだけで老後資金が十分とは判断できません。
総務省統計局が公表している「家計調査報告[家計収支編]2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、1ヶ月の実収入が25万4395円、税金や社会保険料などを差し引いた可処分所得が22万1544円でした。一方、消費支出は26万3979円です。
可処分所得から消費支出を引くと、1ヶ月当たり4万2434円の赤字です。年間では約51万円となり、同程度の赤字が20年間続くと単純計算で約1018万円になります。
1300万円あればこの赤字を計算上は補えますが、老後には毎月の生活費以外にも、自宅の修繕や家電の買い替え、医療・介護などでまとまったお金が必要になる可能性があります。
そのため、「1300万円あるから大丈夫」と考えるのではなく、自分の年金と生活費から必要額を計算することが重要です。
定年までの5年間は「いくら貯めるか」より老後の収支を確認しよう
定年まで5年だからといって、生活を極端に切り詰めて貯金する必要があるとは限りません。まず確認したいのが、老後に毎月いくら不足するかです。
例えば、夫婦の年金手取り額が月22万円、生活費が月25万円なら、毎月3万円不足します。年間では36万円、20年間なら単純計算で720万円です。
一方、年金が月18万円で生活費が月28万円なら、毎月10万円不足し、20年間では2400万円になります。同じ1300万円を持っていても、前者と後者では老後の安心度が大きく異なることが分かります。
まずは「ねんきんネット」などで将来受け取れる年金の見込額を確認しましょう。さらに、銀行口座やクレジットカードの明細などから現在の生活費を把握します。住宅ローンや家賃が老後も続く場合は、その支出も忘れてはいけません。
そのうえで1300万円では不足すると分かった場合は、残り5年間で無理のない範囲の貯蓄を続ける、定年後も働いて収入を得るなどの対策を検討しましょう。
まとめ:退職金1000万円だけをあてにせず無理のない範囲で貯蓄を続けよう
50歳代の二人以上世帯における金融資産保有額の中央値は700万円のため、貯金300万円は同世代より少ない水準といえます。しかし、この差だけを見て焦る必要はありません。
貯金300万円と退職金1000万円で十分かどうかは、受け取れる年金と老後の支出によって変わります。まずは年金見込額と生活費を確認し、毎月いくら不足するのかを計算してみましょう。
その結果、1300万円では足りない可能性があるなら、定年までの5年間も貯蓄を続ける意味があります。無理に大金を貯めようとするのではなく、家計を見直してできる範囲で貯蓄を増やしておけば、より安心して定年を迎えられるでしょう。
出典
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2025年(令和7年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2025年-(18ページ)
金融経済教育推進機構(J-FLEC) 家計の金融行動に関する世論調査 2025年 二人以上世帯 各種分類別データ(令和7年) 4 金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
