
1. 市場概況
2023年度の物流15業種総市場規模(15業種各市場の積み上げ、一部重複を含む、事業者売上高ベース)は、前年度比96.2%の23兆4,495億円と推計した。ひっ迫していた需給バランスが解消されたことで、海運、航空貨物輸送、フォワーディング等の業種で高騰していた運賃や料金など価格が下落したほか、国内外において貨物輸送量も伸び悩んだことから、市場規模は減少に転じた。
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2024年度の物流15業種総市場規模は、前年度比105.1%の24兆6,405億円を見込む。
国際物流については、海運や航空貨物輸送等の業種で前年度に比べて荷動きの回復が見込まれると同時に、中国発欧州・米国向け貨物輸送需要の増加に伴い、日本も含めたアジア発欧州・米国向けの運賃市況が再び上昇する見込みである。特に円安による為替の影響も相まって、運賃の上昇による海運市場規模拡大が続くものと考える。
国内物流では、2023年度に引き続きドライバー人材確保のために人件費の上昇が加速する見込みである。荷主企業の理解が進み、これまで以上に輸送運賃へ転嫁しやすい環境となっており、トラック運送事業等の陸運を中心に物流市場規模を押し上げる要因となる。ただし、食料品等の価格値上げに対し、消費活動は足踏み状態が続くほか、円安に伴う輸入貨物量の減少も続くことが想定される。
総じて、国際物流も国内物流も物量の増加要因は少なく、運賃や料金など価格上昇が主な要因となり、物流15業種総市場規模の拡大を見込む。
2.注目トピック~物流統括管理者(CLO)の選任について
物流の持続的な成長を図るため、2024年5月に「物資の流通の効率化に関する法律(物流効率化法)」が改正され、荷主企業および物流事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務が課せられることとなった。さらに、2026年度からは一定規模以上の特定事業者に対する措置が実施され、物流の改善に寄与することを目的に、中長期的な計画の策定や定期的な報告が義務付けられる。これらの義務の一環として、特定荷主および特定連鎖化事業者(フランチャイズチェーンの本部)には、物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の選任が定められている。
物流統括管理者(CLO)は、物流事業者のために設置するのではなく、荷主企業の自社戦略のために設置することが望ましい。つまり、物流事業者のための物流効率化ではなく、自社戦略のための効率化を進めていくことを目指すべきである。そして、物流の効率化やサプライチェーンの見直しを進めるにあたり、自社の事業戦略に合致させることが重要である。物流事業者に取組みを丸投げで任せてしまうと、自社の事業戦略にそぐわない結果となる可能性がある。
一方、自社都合のみを主張しても、物流事業者から“選ばれない”という危険性がある。物流統括管理者(CLO)は、自社の戦略と物流事業者の状況をうまく合致させて、物流効率化を進める必要がある。そのためには、パートナーとしての物流事業者との対話が必要不可欠になると考える。
3.将来展望
2025年度の物流15業種総市場規模は、前年度比100.5%の24兆7,650億円と予測する。
物流業種別にみると、海運や一般港湾運送、特別積合せ貨物運送、引越の4業種において前年度比マイナスになる見込みである。一方、前年度比でプラスとなる業種は、3PL、普通倉庫、冷蔵倉庫、航空貨物輸送、鉄道利用貨物運送、鉄道貨物輸送、軽貨物輸送の7業種である。
なお、海運と一般港湾運送については、米国関税の引き上げの影響による輸出貨物量の低迷を加味しており、3PLや普通倉庫等については、米国関税の引き上げの影響は不確定な要素が多く加味していない。3PLについては、国内外にわたって荷主企業のサプライチェーン全体を支える複合的な物流サービスを提供しており、着実に市場規模を拡大していく見通しである。
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調査要綱
1.調査期間:2025年4月~6月
2.調査対象:国内有力物流事業者等
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話アンケート調査、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2025年6月30日
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