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自閉スペクトラム症特性のある学生におけるオンラインコミュニケーションの困難さの実態が明らかに



図1. 本研究結果の概念図


図2. 調査2の結果

四天王寺大学(大阪府羽曳野市、学長:岩尾 洋)、教育学部に所属する鈴木 浩太講師らの研究グループは、大学生における自閉スペクトラム症(ASD)特性とオンラインコミュニケーションの関連を検証しました。その結果、ASD特性が高いほど、LINEの友だちの数が少なく、Instagramを利用する時間が短い関係性があることが明らかになりました。また、ASD特性が高いほど、LINEのコミュニケーションが苦手であるという関連があり、さらに、LINEのコミュニケーションは、大学生における孤独感に関連していることが明らかになりました。

ASD特性の高い学生は、大学において、孤独を感じることが少なくありません。本研究の成果は、ASD特性の高い学生の孤独感の背景に、オンラインコミュニケーションの困難さがある可能性を示しました。本研究成果は、科学誌「Journal of Autism and Developmental Disorders」オンライン版(2020年9月10日)に掲載されました。



画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/226199/LL_img_226199_1.png

図1. 本研究結果の概念図



■研究の背景

自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)について

ASDは、社会的コミュニケーションの困難さやこだわり・興味の限局を主症状とする神経発達症の一つです。ASD特性は、ASD者だけでなく、一般の集団においても連続的に分布していること(ASDではない者もASD特性をもつこと)が知られています。先行研究で、ASD者は、大学において孤独を感じる傾向があり、その孤独感は精神的健康度の低下につながると報告されています(Hedley, Uljarevic, Wilmot, Richdale, & Dissanayake, 2018)。大学におけるASD者の支援のために、ASD者の孤独感のメカニズムを理解することが期待されています。





■オンラインコミュニケーションについて

SNSの普及に伴い、対面コミュニケーションだけでなく、オンラインコミュニケーションが行われるようになりました。オンラインコミュニケーションのRich-get-Richer(豊かな人がより豊かになる)仮説が提唱されています(Valkenburg & Peter, 2007)。この仮説では、実際の友人関係が豊かな人は、オンラインコミュニケーションを上手に利用し、実際の友人関係をより豊かにしていくと仮定しています。そのため、オンラインコミュニケーションが、ASD特性と孤独感の関連性の背景にあるメカニズムを説明する要因になるかもしれません。しかし、これまで、大学生において、ASD特性、オンラインコミュニケーション、孤独感の関係性について検討されていませんでした。





■調査1

大学生355名を対象として、SNSプラットフォーム(LINE、Instagram、Twitter、Facebook)とASD特性、孤独感の関係性について調査しました。その結果、ASD特性が高いほど、LINEの友だちの数が少なく、Instagramの利用時間が短いという有意な相関関係が示されました。また、孤独感もLINEの友だちの数とInstagramの利用時間などと有意な相関関係がありました。したがって、LINEやInstagramの利用は、大学における友人関係の構築に有用であり、ASD特性の高い者は、LINEやInstagramをあまり利用していないことが考えられました。





■調査2

大学生358名を対象にして、ASD特性、LINEの利用、孤独感の関連を調査しました。LINE利用の不適切さを計測するために、質問票を作成しました。LINE利用の不適切さには、「低いリテラシー」、「消極的な利用」、「低い応答性」、「配慮のなさ」、「グループの活動への消極性」の要素があることが示されました。また、「切り替えの難しさ」、「コミュニケーションの難しさ」、「低い社会スキル」、「細部へのこだわり」、「想像力の欠如」にASD特性を分けることができると知られています。それぞれの関係性を検討したところ(図2)、切り替えの難しさとコミュニケーションの難しさは、低いリテラシーと関連し、さらに、低いリテラシーは、孤独感と関連していました。

低い社会スキルは、消極的な利用と関連し、さらに消極的な利用は、孤独感と関連していました。つまり、ASD特性の高さは、LINEの利用の不適切さに関連しており、さらにLINEの利用の不適切さは孤独感と関連していました。

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/226199/LL_img_226199_2.png

図2. 調査2の結果



■まとめ

本研究では、オンラインコミュニケーションは、孤独感の低下に関連し、ASD特性と孤独感の関連性の背景にオンラインコミュニケーションがある可能性が示唆されました。また、ASD特性の高い者は、SNSの利用が少なく、利用することが苦手であると示されました。したがって、ASD特性が高い者に対して、対面コミュニケーションだけでなく、オンラインコミュニケーションも考慮して、支援を行っていく必要があると考えられました。また、私たちは、オンラインコミュニケーションが苦手な人を理解し、そのような人に対しても温かく接し、オンライン・対面コミュニケーションへの参加を促していくことが重要です。



~引用文献~

Hedley, D., Uljarevic, M., Wilmot, M., Richdale, A., & Dissanayake, C. (2018). Understanding depression and thoughts of self-harm in autism: a potential mechanism involving loneliness. Research in Autism Spectrum Disorders, 46, 1-7.

Valkenburg, P.M., & Peter, J. (2007). Preadolescents'and adolescents'online communication and their closeness to friends. Developmental Psychology 43, 267-277.



※Uljarevicの「c」はアクソン記号を記載したものが正式表記となります





■発表雑誌

雑誌名:Journal of Autism and Developmental Disorders

論文タイトル:The relationships among autism spectrum disorder traits, loneliness, and social networking service use in college students

著者:Kota Suzuki, Yuhei Oi, Masumi Inagaki

DOI: https://doi.org/10.1007/s10803-020-04701-2





■研究助成金

本研究の一部は、公益財団法人電気通信普及財団 研究調査助成「大学における自閉症スペクトラム障害者のSNS利用と仲間関係に関する調査(研究代表者:鈴木 浩太)」の援助を受けました。

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