
15日発表の2025年4~6月期のGDP速報値は日本経済の底堅さを示した。だが、日本の基幹産業を支える自動車部品メーカーは、米国の関税措置に起因する「想定外」の支出に悩む。専門家らは7~9月期以降に関税の影響が本格化すると見ている。
米国の関税措置に関する7月の日米合意で、日本に対する「相互関税」や自動車関税が15%に決まった。企業は今後、関税分の価格転嫁を加速させるとみられるが、価格上昇で米国で自動車などの販売が低迷すれば、輸出が減少しかねない。企業の収益悪化や設備投資の縮小につながれば、経済減速を招く可能性がある。
「米国の通商政策による景気下振れリスクには留意が必要だ。我が国への影響を十分分析し、万全の経済財政運営をやっていく」。赤沢亮正経済再生担当相は15日の記者会見で先行きを注視する考えを示した。
7~9月期の実質GDPから関税影響が本格的に表れ、輸出がマイナスに転じると見るのは伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストだ。「価格転嫁で輸出量が下がる一方で、企業はある程度、輸出価格の値下げも続けるはずだ。業績の下押し圧力となり、設備投資や賃金・雇用に波及し、来年の春闘にも影響が出るかもしれない」と話す。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・経済調査部長も、関税の影響で2025年度春闘までの2年連続5%台の賃上げ率は維持できず、26年度は4・5%まで落ちると試算する。
一方で、歴史的な円安・ドル高傾向の一服感や原油価格の下落により、国内の物価上昇は鈍化が見込まれる。このため武田氏は「実質賃金がプラスに転じていけば、トランプ関税のマイナスを打ち消しプラスになる」とし、内需への影響は限定的との見方だ。【高田奈実】