
欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は10日記者会見し、ウクライナへの全面侵攻を続けるロシアに対する追加制裁の一環として、カナダ・カナナスキスで15日から始まる主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、ロシア産原油に設定した価格上限を現行の1バレル=60ドルから45ドルに引き下げることを呼びかける考えを示した。米国を含むG7で実際に合意できるかが焦点となる。
原油取引価格の上限引き下げは制裁の強化となり、ロシアの国家収入に打撃を与える。フォンデアライエン氏は、効果を発揮するには「G7として(引き下げを)すべきだ」と語った。ただ、米国のトランプ大統領はロシアを刺激するとして追加制裁に消極的な姿勢を見せており、実際にG7とEUでそろって引き下げに踏み切れるかは見通せない。
価格に上限を設ける追加制裁は、G7とEUが2022年12月に導入した。上限価格を上回る取引には輸送に必要な海上保険などを認めないよう保険会社に義務付ける仕組み。主要な保険会社のほとんどがG7を拠点とすることから、ロシアが原油を輸出しづらくなる効果が期待された。
しかし、闇タンカー「影の船団」を使った制裁逃れが行われている上、足元は原油価格が下落傾向にあり、効果を疑問視する声も強まっている。
フォンデアライエン氏は、「ロシアへの圧力を強める必要がある」と強調。「影の船団」77隻を制裁対象に追加し、対象を計400隻超に拡大することや、ロシア産天然ガスを欧州に送る海底パイプライン「ノルド・ストリーム」に関する取引を禁じる考えも示した。
ただ、上限価格引き下げを含めた追加制裁をEUとして実施するには加盟27カ国すべての賛成が必要だ。G7サミットでの米国の動向は、トランプ政権に同調することが多いハンガリーやスロバキアの判断にも影響を与えそうだ。【ブリュッセル岡大介】