
第二次世界大戦末期の沖縄戦に動員された「ひめゆり学徒隊」の学生や教員を慰霊する「ひめゆりの塔」(沖縄県糸満市)の展示について、自民党の西田昌司参院議員が3日に那覇市であった憲法記念日のシンポジウムで「歴史を書き換えている」という趣旨の発言をした。西田氏は7日に国会内で開いた記者会見で、一連の発言について「事実を言っている」と述べ、撤回しない考えを示したが、与野党からは批判の声が上がった。
シンポジウムは沖縄県神社庁や神道政治連盟県本部、日本会議県本部などでつくる実行委員会が主催し、自民党県連が共催した。
関係者によると、西田氏は記念講演で、2007年に参院議員になる前に訪れたというひめゆりの塔について「今はどうか知りませんが、ひどい。あの説明のしぶりを見ていると、要するに日本軍がどんどん入ってきてひめゆり隊が死ぬことになった。そしてアメリカが入ってきて沖縄は解放された。そういう文脈で書いている。歴史を書き換えられると、こういうことになっちゃうわけだ」と発言した。
その上で「沖縄の場合は地上戦の解釈を含めて、かなりむちゃくちゃな教育のされ方をしている。自分たちが納得できる歴史をつくらないと、日本は独立できない」として歴史観を見直すよう呼びかけた。
西田氏は会見で「今回の発言で県民を傷つけたとの報道になっているが、そういう意図はない。切り取られた記事が誤解を生んだ。そこは非常に遺憾に思う」と述べた。ひめゆりの塔の展示については、十数年前に視察したとして「(ひめゆり平和祈念資料館の)近所の洞窟のようなところに入って、その展示を見た記憶がある。一つ一つの言葉は覚えていないが、明確に違和感がある印象を受けた」などと説明した。
一方、ひめゆり平和祈念資料館の普天間朝佳(ちょうけい)館長は7日、報道陣に「(沖縄戦の)体験者の思いを否定するものだし、踏みにじるものだ」と憤りをあらわにした。展示内容はひめゆり学徒隊の生存者たちが互いに聞き取りした証言や沖縄戦の資料に基づいているとし、「一方的に(日米の)どちらが正しい、悪いという展示はない。ないことをあるように言っていることに疑問を持った」と語った。
沖縄県議会でも与野党から謝罪や発言の撤回を求める声が相次いだ。自民党県連の座波一(ざははじめ)幹事長は「県民の反発を招くような表現は避けるべきだったと抗議せざるを得ない」として発言の撤回を求める考えを示した。シンポジウムの出席者として、その場で抗議しなかったことについては「全体として国民全体と県の犠牲者に対する尊厳を求める発言だった。会場からクレームが出ることではなかった」と説明した。【比嘉洋、喜屋武真之介、畠山嵩】