
かつては「新入社員の仕事」とされがちだった花見の場所取り。最近は代行業者が活躍している。花見シーズン本番の東京・上野公園にも、その姿があった。【隈元悠太】
土曜日の29日午前5時、上野公園はあいにくの空模様だった。開門と同時にサクラの木の下に向かったのは「ワンストップ代行センター」(東京都港区)のスタッフ、バンサン・マルク・ベルレモンさん(40)だ。
7メートル四方のシートを素早く敷いた。「雨ですいていた分、ご希望通りの場所を取れました。明日も依頼があります」
この日の依頼は、同じ大学の卒業生たちで構成されるグループから。関東各地から参加者が集まるが、一番近くに住む千葉県船橋市の男性会社員(30)が「始発で出ても開門に間に合わない」と依頼したという。
料金は会場や人数などによって変動し、今回は約1万6000円。
午前7時半過ぎに到着した依頼主は「参加者で割れば1人当たり1000円前後。昼から雨はやむと聞いているし、依頼して正解でした」と語った。
ワンストップ代行センターの戸村徹平社長は「コロナ前の2019年ごろから花見の場所取り代行を始めました。今年は30~40件の依頼を見込んでいます」という。
10年前にフランスから来日し、花見文化を初めて知ったというベルレモンさんは「最近は新入社員からの依頼もあります」と明かす。以前は若手社員の役割という印象が強かった花見の場所取りだが、近年はハラスメントと受け止められることを避けようと、企業などからの注文が増えているという。
戸村社長は「花見は冠婚葬祭に似ていて、失敗が許されないイベント。価値観の変化とともに代行の役割も広がっていくのかもしれません」と話した。