
カザフスタン西部で昨年12月に38人が死亡したアゼルバイジャン航空の旅客機墜落で、カザフ運輸省は4日、カザフの事故調査委員会がまとめた暫定調査結果の報告書を公表した。機体が「外部からの物体」によって損傷したことなどを指摘したが、ロシア軍の防空システムによる誤射の可能性には踏み込まず、責任の所在を棚上げする内容となった。
旅客機はアゼルの首都バクーを出発し、目的地の露南部グロズヌイ上空で制御不能となり、カザフ西部アクタウ付近で墜落した。露側は、グロズヌイ周辺が当時、ウクライナによる無人機攻撃を受け、露軍の防空システムが地上から迎撃していたと説明。当初から防空システムによる誤射の可能性が指摘されていた。
ただ、報告書はこの点にはほとんど触れず、「調査は誰かの過失や責任を立証することを意図しない。刑事上の側面は別の枠組みで扱われる」と説明。「事故防止が唯一の目的」とした。
プーチン露大統領は昨年12月、「ロシア上空で悲劇的な事故が発生した」と謝罪したが、誤射の可能性については明言しなかった。一方、アゼルのアリエフ大統領は、無人機攻撃を妨害するための露軍の電子戦システムの影響で旅客機が制御不能になり、防空システムの誤射で損傷したと主張。露側に責任者の処罰や賠償金の支払いなどを要求している。
また、当初の各種報道では、露当局が機長の緊急着陸要請を拒否し、アクタウへ向かうよう指示したと報じられたが、報告書はこれを否定。機長は露当局とのやりとりで、ロシアの他の空港への着陸やバクーに引き返すことを検討したが、天候などを勘案し、自らアクタウへ向かう決断をしたとの交信内容が示された。
報告書によると、機体にはエンジンや左翼などさまざまな箇所に大きさや特徴の異なる貫通した複数の損傷が見つかり、いくつかの損傷は「規則正しい長方形」をしていた。外部からの物体が機体を貫通したとみられ、油圧システムも破損し、圧力が失われたとしている。
フライトレコーダーの解析では、機長が露航空管制当局とのやりとりで「鳥が衝突し、二つの座席が爆発した」「飛行機が制御不能になった」などと報告していたことも明らかになった。
全地球測位システム(GPS)の機能が失われたことや、客室の酸素が不足していることを説明し、「酸素タンクが爆発したようだ」とも話していた。
報告書は53ページ。主にロシア語で記載された。調査委は、記載された情報は暫定的なものであり、全ての調査作業が終了後に改めて最終報告書を作成するとしている。【モスクワ山衛守剛】