韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は今月で任期5年の折り返しとなるのに合わせて7日、記者会見した。妻の金建希(キムゴンヒ)氏を巡る数々の問題が噴出し、尹氏の支持率は10月下旬、初めて20%を割り込んだ。尹氏はこうした傾向を反転させようと謝罪の言葉を述べ、質疑応答を含め約140分の会見に臨んだ。
しかし、野党は一段と反発を強めており、2016年に保守系の朴槿恵(パククネ)大統領(当時)を弾劾・罷免に追い込んだシナリオも念頭に、攻勢を強めている。
「私の周囲のことで国民に心配をおかけしました。おわびします」。尹氏は7日に開いた会見の冒頭、国民に謝罪した。「私の周囲」とは、金氏を指している。
金氏を巡っては22年6月の国会議員補選で、世論調査などを手がける知人のミョン・テギュン氏と共に与党候補の公認決定に介入したとの疑惑が浮上。また自動車会社の株価操作に関与した疑惑や、知人から高額なブランドバッグを受け取ったとの問題もある。
尹政権では金氏が最大の「リスク要因」の一つだ。世論調査会社「韓国ギャラップ」が10月下旬に実施した世論調査で支持率は19%に落ち込んだが、不支持(72%)の理由で最多が「金建希氏の問題」だった。尹氏は日米との連携強化など外交政策については一定の評価を得ているものの、金氏の問題がこれらを打ち消している形だ。
韓国の世論が金氏の問題にこれほど敏感に反応するのは、朴元大統領が罷免された理由の一つが「国政運営に友人を介入させ、友人の利権追求を許した」というものだったためだ。野党や一部の市民団体は、朴元大統領時の「成功体験」を念頭に、金氏の行為も「国政介入」の可能性があるとして攻勢を強めている。
尹氏は会見で妻による選挙への介入の有無については具体的に言及せず、「夫人が大統領の円滑な職務遂行を望むことを『国政介入』と言うのであれば、国語辞典の定義を変える必要がある」と反論した。ただ、夫人の活動については「国民が良いと思うことはして、嫌がることはすべきではない」と述べ、夫人同伴の外国訪問など外交慣例上必要なこと以外は、今後も控えていくと強調した。
金氏を巡る問題については与党「国民の力」も不満を募らせており、韓東勲(ハンドンフン)代表は4日、尹氏に対し、一連の問題で謝罪するよう要求。また金氏が対外活動を停止するよう求めていた。
野党は弾劾シナリオ念頭、攻勢強める
一方、尹氏の会見での発言について進歩系の最大野党「共に民主党」は「大統領はついに国民に背を向け、金氏を選んだ。中身のない謝罪と、だらしない言い訳であふれた」と、尹氏の会見での発言を痛烈に批判した。
野党は金氏の問題について、国会が任命する特別検察官による捜査を繰り返し要求。今月2日にはソウル市内で大規模集会を開き、朴氏を罷免に追い込んだ16年の「ろうそく集会」に言及しながら尹氏の退陣を求めるなどしている。ただ、こうした野党の運動の熱量は、現状では16年ほどには盛り上がっていない。【ソウル福岡静哉】