1980年代の人気アイドルグループ「おニャン子クラブ」の元メンバーでタレントの新田恵利さん(56)が母を6年半、在宅介護した経験を語る講演会と対談が7日、福岡市であった。新田さんは介護の心構えや気晴らしの大切さを説いた。福岡市医師会の主催。
新田さんは17歳で父を亡くした。新田さんは父との急な別れを悔やみ「そこから親孝行しようと思った」。
母ひで子さんと仲が良く、死について「必ず来るもの」と葬儀や延命治療の話をしていた。だが、介護のことは話していなかった。
「本当にある日突然介護(する生活)になった。青天のへきれきだった」。骨折で入院したひで子さんが退院してタクシーに乗ろうとした際、立てないことに気づいた。2014年に在宅介護が始まった。ブログに自分の気持ちを吐き出し、気持ちを整理した。
その後、ひで子さんは認知症が進み、同じ事を聞かれた際はつい口調も強くなり、そのたびに悔やんだ。20年に入院したが病院でできることも少なくなり「家がいい」と話していたひで子さんの意見を尊重し家に迎えた。
ひで子さんは死に装束にウエディングドレスを着たいと言っていたため、新田さんが手作りしていたが「仕上げたら死んでしまう気がした」と完成間近で止めていた。だが21年3月にその時は来た。
朝から呼吸が荒かった。ひで子さんは「あっ」と3回繰り返しその後亡くなった。92歳だった。新田さんは「ありがとう」と言ってくれたと信じている。
新田さんは「100人いれば100通りの介護がある。親が一番に望むのは子どもの幸せ。体を壊して仕事を辞めてまでというのは親も望まないのではないか」と言う。家族に任せて海外旅行でリフレッシュしたこともあったといい、自身の時間を大切にすることも重要だと強調した。【山口響】