東京大などの研究チームは、インドネシアのフローレス島で、これまでに世界で見つかった中で最小の人類の化石を発見したと発表した。約70万年前の「フローレス原人」とみられる骨で、身長はその大人の上腕骨の一部から、約100センチと推定される。島に渡った原人が、何らかの原因で劇的に小さく進化したと考えられるという。
フローレス原人は2003年、同島にあるリャンブア洞窟の約6万年前の地層から、頭部や手足の骨が初めて発見された。この時の推定身長は106センチで、「ホビット」の愛称で知られるようになった。
今回の最小の化石は13年、洞窟から75キロほど東に離れたソア盆地の、約70万年前の地層から見つかった。少なくとも4人分の歯や下顎(したあご)など10点で、下半分が残っていた上腕骨は約10年かけて解析した。
骨の血管が通る穴の密度から成人の骨であることが確かめられ、分析の結果、上腕骨全体の長さは21~22センチと分かった。ヒトや類人猿の骨格と照らし合わせ、身長を約100センチと推定した。
今回の発見で、フローレス島における原人の極端な小型化の始まりは考えられていたよりも古く、70万年前までには起こっていたことが明らかになった。その祖先は約100万年前にフローレス島に渡ったとみられている。現代人と変わらないとされる体形のジャワ原人が海を渡ったとすると、約30万年以内に急激に島内で小型化したことになる。
海部陽介・東京大総合研究博物館教授は「小さな上腕骨を最初に見た時は子どもの骨かと思ったので、発育段階を調べて驚いた。大陸で(現代人と同じ)ホモ・サピエンスが登場している中で、かつての兄弟が全く違う進化を遂げていたということ。人類も場所によっては全く違う進化をしうることが分かる」と話す。
成果は6日付の英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」で発表された。今回見つかったフローレス原人の化石のレプリカは、東京駅前の博物館「インターメディアテク」で7日から10月6日まで展示される。【松本光樹】