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虐待批判の「上げ馬神事」 大幅改善で無事に終わったものの…


 人馬が坂を駆け上がる多度大社(三重県桑名市)の上げ馬神事は今年、「動物虐待」との批判を受け、大幅に改善された。高さ約2メートルの土壁が撤去され、坂が緩やかになった。だが、神事が終わった今も、馬をたたくムチの使用禁止を求める声が上がるなど模索が続く。【渋谷雅也】

 上げ馬神事は5月4、5日に実施された。人馬ともにけがは無く、無事に終了した。

 「今年は昨年よりお客さんが少なかった。観光業としては厳しく、来年以降はどうなるだろうか」。多度大社の前で料理店を営む男性は、今年の客足を見て不安な思いを口にする。

 例年は2日間で約20万人が訪れ、周辺の飲食店や土産物店にとってもかき入れ時だった。だが、多度大社の発表によると、今年の見物客は2日間計14万人にとどまり、昨年と比べて約6万人減った。

 男性の店は例年、2階に50席余りある観覧席が満席になるが、今年は半分しか席が埋まらず、売り上げは3分の1に減った。常連客からは「上げ馬の迫力がなくなったね」「来年は席を予約しようか悩む」と厳しい声があったという。

ハイライトなく「迫力がない」

 2日間の神事では、地元の各地区から選ばれた若者が4日は陣笠(じんがさ)と裃(かみしも)姿で、5日は花笠(はながさ)をかぶった姿で騎乗し、9頭の馬が挑戦。約100メートルの助走から坂を駆け上がった。三重県四日市市の無職、松田弘司さん(89)は「従来とは違うけど、時代の流れを考えれば壁がなくていいと思う。動物と関係者が無事でいることが大事」と話した。

 一方、神事を長年、見守ってきた人たちからは戸惑いの声も上がった。壁を越えられるかどうかは、祭りの「ハイライト」だった。今年の神事を見た、桑名市出身で愛知県愛西市のパート職員、伊藤肇さん(76)は「小さいころから親しんできた祭り。楽しみにして来たけど、壁がないから簡単に坂を上がることができて迫力がない」と語った。

ムチ打ちが強すぎるケースも

 「このような感じで続けていけば、これからも続けることができる。もっとよくしていきたい」。神事が無事終了し、多度大社御厨(みくりや)総代会の伊藤善千代会長(75)はこう話した。

 一方で「ムチを持って走ることは許していたが、それでも強くたたく行為があった」と伊藤会長。伊藤会長によると、ムチは騎乗して走る合図の時だけ、馬の肩にムチを使用する決まりだった。だが、実際には騎手の気合が入り過ぎて力強くムチを打ったり、また、馬の尻をたたくなどの行為があり、スピードを出し過ぎていた馬がいたという。

 こうした状況に、騎手らを指導した北勢ライディングファームの中村勇代表(60)は「問題点はムチの使い方。騎手がわざと強くムチを入れているわけではないが、強く入れ過ぎていた。みんなに認められ、馬に寄り添った祭りにするため、ムチを持たないことも考えたほうがいいかもしれない」と提案する。

愛護団体は刑事告訴

 動物愛護団体はこれまで、神事の見直しを繰り返し求めてきた。昨年10月には動物愛護団体「PEACE」(東京都豊島区)など2団体が神事の主催者を動物愛護法違反容疑で刑事告訴。三重県警桑名署は「とても難しい問題」として慎重に捜査を進めている。同署は2011年に実施された神事を巡り、馬の尻や腹を棒でたたいたとして、同容疑で神事に参加した男性を書類送検しているが、この時は不起訴になっている。

 三重県は8月、文化財保護審議会を開き、今回の上げ馬神事の改善点について話し合う。今後の神事について、ムチの取り扱い方などが焦点となりそうだ。今後の神事について、福永和伸・県教育長は「文化財としての価値を維持しつつ、動物愛護の精神が守られ、安全にやっていただくことを期待している」と話す。

上げ馬神事

 南北朝時代から約700年続くとされ、三重県の無形民俗文化財に指定されている。馬が坂の頂上に築かれた高さ約2メートルの土壁を乗り越えた回数で、農作物の豊凶などを占うのが恒例だった。しかし昨年、馬が斜面で転倒して前脚を骨折し、殺処分されることになったことがSNS(ネット交流サービス)で拡散されると、「動物虐待ではないか」などといった批判が相次ぎ、多度大社側は今年から改善して実施することを決めた。

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