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トランプ氏が「げす野郎」と呼ぶ元腹心 不倫口止め裁判で証言へ


 トランプ前米大統領(77)が不倫の口止め料を不正に処理したとされる事件の公判で、当時の顧問弁護士だったマイケル・コーエン氏(57)が13日、東部ニューヨーク州の裁判所に検察側の証人として出廷する見通しだ。2016年の大統領選でトランプ氏に関する醜聞をもみ消すため、不倫相手とされる元ポルノ女優に口止め料を支払ったコーエン氏は、トランプ氏のかつての「腹心」だった。今や「敵」となった男は法廷で何を語るのか。

「働かないか」とトランプ氏が口説く

 「あなたが(トランプ氏にとって)都合の悪いことをすれば、私は襲いかかり首根っこをつかんで離さないだろう」

 11年4月、コーエン氏は米ABCニュースのインタビューで、トランプ氏への忠誠心をこう表現した。当時、トランプ氏は12年大統領選への立候補を検討していた。映画「ゴッドファーザー」に登場するマフィアのボスの相談役にちなんで「トム」と呼ばれていたコーエン氏は「誰かがトランプ氏の好まないことをすれば、私はトランプ氏の利益になるよう全力を注ぐ」とも述べた。

 コーエン氏は元々、企業などへの損害賠償請求を専門とする弁護士だった。転機が訪れたのは、ニューヨークの法律事務所に勤務していた06年。トランプ氏の長男ジュニア氏からトランプ氏を紹介された。

 「古くさい事務所は辞めて(トランプ氏の親族企業)『トランプ・オーガニゼーション』で働かないか」。米メディアよると、トランプ氏はこう口説いたという。コーエン氏は大学時代からトランプ氏の自伝を熟読し、トランプ氏にほれ込んでいた。コーエン氏はすぐにトランプ氏の下で働き始め、その主従関係は10年以上にわたり続いた。

トランプ氏に失望、たもと分かつ

 今回の事件は、トランプ氏が初当選した16年大統領選を翌月に控えた10月、元ポルノ女優のストーミー・ダニエルズ氏(45)がトランプ氏との関係を公表しようとしたことを、トランプ氏の周辺が知ったことが始まりだ。

 起訴状などによると、トランプ氏は選挙前に不利な情報が出るのを隠すため、コーエン氏を通じて13万ドル(約2025万円)をダニエルズ氏に支払った。その後、親族企業を通じてコーエン氏に弁済した際、口止め料支払いの発覚を恐れ、「弁護士費用」と偽って会計処理した罪に問われている。

 コーエン氏はこの事件などに絡んで起訴されたが、司法取引に応じ、トランプ氏とたもとを分かった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、トランプ氏側が弁護士費用の負担をやめたことに失望していたという。コーエン氏は法廷で、ダニエルズ氏を含む女性2人にトランプ氏の「指示」で口止め料を支払ったと証言。18年に禁錮3年の実刑判決を受けた。

 判決後のABCニュースのインタビューで、コーエン氏はトランプ氏への「無条件の忠誠心」から一連の行為に及んだと告白し、「私は忠誠に値しない人に忠誠を尽くした」と述懐した。以降、コーエン氏はトランプ氏から「げす野郎」などと批判されている。

「絶対的権力は腐敗する」

 コーエン氏はトランプ氏の初公判直前の今年4月中旬、米ニュースサイト「ポリティコ」のインタビューで、トランプ氏は「最悪だ」と改めて批判した。大統領として握った「権力」がトランプ氏を変えたと主張し、英国の歴史家アクトンの「絶対的な権力は絶対に腐敗する」との格言を引用して「彼の墓石にもそう書かれるべきだ」と述べた。

 米メディアによると、コーエン氏の証言は数日続く見通しだ。

 コーエン氏は8日、収監されたトランプ氏が描かれたTシャツを着た動画を中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」に投稿した。トランプ氏側は10日、コーエン氏が事件に言及するのを禁止する措置を出すよう、マーチャン判事に要請した。マーチャン氏はトランプ氏へと同様の「かん口令」は出さなかったが、コーエン氏に対して事件について法廷外で話すのをやめるよう警告した。【ニューヨーク中村聡也】

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